知伊田 月夫

ちいだ つきお です。 エッセイや詩や、たまに小説を書いています。 高村光太郎の「猛獣…

知伊田 月夫

ちいだ つきお です。 エッセイや詩や、たまに小説を書いています。 高村光太郎の「猛獣編」みたいな詩が好きです。 他には将棋、料理、投資が趣味です。仲良くしてください。

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【映画エッセイ】「マッドマックス 怒りのデスロード」と「となりのトトロ」は同じジャンルか?

最初にみなさんに気楽な問題を出したいと思う。次の4つの映画のうち、仲間外れはどれでしょう?理由とともに答えてください。観てない人は勘でいいです。 ・マッドマックス 怒りのデスロード ・劇場版クレヨンしんちゃん(どのタイトルでも可) ・劇場版ドラえもん(どのタイトルでも可) ・となりのトトロ 普通の人は、マッドマックスと答える。理由は、子ども向けではないから、である。(ちなみにマッドマックスは日本ではR15)これ以外の理由としても、マッドマックス以外の答えを選んだ人は、きっ

    • 【エッセイ】頭の良い人は、みんなハイボールがお好き

      千葉雅也の「現代思想入門」という本を読んでいて、僕は分かってしまった。世の中、結局、ハイボールが求められている、ということだ。 もうこれで言いたいことをすべて言ってしまったので終わってもいいのだが、一応、以下だらだらと解説する。 脱構築論なる論法がある。(ダツコウチクロン、なんかの呪文か?) 近代から現代への思想の変遷をたどる際にキーとなる考え方のようである。もう少し具体化すると、脱構築とは、二項対立からの脱却である。デリダというものすごく頭の良い人が提唱したらしい。 善

      • 【詩】ロックンロールくん

        深夜、俺はロックンロールくんに話しかけてみた。 なんで、君はそんなに堂々としていられるんだ、ってな。 そしたら彼は、俺はロックンロールを済ませたからだ、と言う。 そんなところへ閉じ込められて、死ぬのが怖くないのか、と問うと、 俺はこれからもう一度ロックンロールしにいくから、 そんなくだらんことは考えないよ、と言って、ガサゴソと土へ潜った。 さすが王者だなと妙に感心して、俺は眠りについた。 翌朝目を覚ますと、息子が、カブトムシが死んでいると泣いていた。 飼育カゴを

        • 【詩】朝のキャンバス

          朝露の墨を筆先に湿らせて 幼い稲穂は 空に文字やら絵やら書いている 見渡す限り青の自由帳には 元気で透明な作品が一杯 あちらから飛行機が飛んでくる 白い雲を吐きながら 今日も真っ直ぐ飛んでいる 「こっから向こうは、落書き禁止だぁ」 と線を引かれても、 幼な子たちは笑って気にしない あたりに爽やかな風が吹いている。

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        【映画エッセイ】「マッドマックス 怒りのデスロード」と「となりのトトロ」は同じジャンルか?

          【詩】ナイトメア

          醒めた脳みそと眠たそうな面をして男は時計の中を歩く。 毎日歩く。 とぼとぼとぼとぼ、嫌そうに歩く。 彼の頭は、あまりよくない想像であふれている。 宇宙空間で発作的にメットを外し、キスをしながら窒息していくカップル 刑務所のなかで、なお電卓を叩きニヤニヤ笑う囚人 満員電車でこの国の豊かさを延々と語る宗教家 それらのイメージがスーパーボオルのように頭の中でバウンバウンと跳ねまわっている。 そろそろ休もうか。 そう思っても 秒針がくる、 長針がくる、 短針がくる、 そうして

          【詩】ナイトメア

          【詩】トマト

          私の目の前にある一つのトマト 無論、一つの果実であるが 同時に、一つの出来事、 不可逆性に支配された悲しき一つの出来事である かくいう私も一つの出来事、 緩やかに終わりゆく全く寂しき一つの出来事である 個の出来事はあくまで孤独な時計を持つ その両者、優劣もなく、無心に見つめ合っている 今、私はトマトを口にする 甘酸っぱさが弾け、芯から潤う 二つの出来事は交差して 新たな一つの出来事が生まれる それは死に抗う性質を付与された場合、 時に物語と呼ばれる

          【詩】トマト

          【エッセイ】僕の生ゴミ、ベニーの生首

           外にあるプラスチック製のごみ箱を開けると、黄色いゴミ袋にパンパンの生ゴミから、コバエが数匹出てきて、僕の目先で鬱陶しく舞った。怖いものみたさ、ならぬ、嗅ぎたさで、鼻から少し息を吸ってみると、形容しがたい悪臭が鼻を突いた。生モノの総合的な腐敗臭なのだが、ガスっぽくもある。流れの死んだドブ川から土の臭いを消して、かわりに魚の生臭さと野菜の青臭さを足したような、おぞましい臭気である。  たった2分弱のこととはいえ、これを車の助手席に載せるのか、と考えると頭がくらくらした。一瞬、

          【エッセイ】僕の生ゴミ、ベニーの生首

          盆踊り

          最も夏を感じる瞬間は、夏の終わりが始まった瞬間でもある。 #夏の1コマ

          【詩】夜のタマネギ

          みんなが寝静まったので 何もかも忘れてしまった僕は いつものように、夜のタマネギを剥き始めた。 一枚剥くと、 最後まで剥き終われば何かを思い出すはずだ、ということを思い出した。 もう一枚剥くと、 寂しさと苦しみを迎えに行こうとしているのだ、ということを思い出した。 でも、まだまだわからない。 何があるのか思い出せない。 ベッドの背にもたれて 僕はひたすら夜の皮を剥いだ。 あと一枚、というところで タマネギの芯には『これから』があることを思い出した。 はっとして、元に

          【詩】夜のタマネギ

          「虚無への供物」を読んで ~落差抜群のジェットコースターへのお誘い~

          「ドグラ・マグラ」「黒死館殺人事件 」と並んで日本三大奇書といわれる「虚無への供物」 を読了した。 気にはなっているが、まだ読んでないんだよなー、という人が多い印象の本なので、(私もかれこれ5年ほど積読状態だった)そんな人に向けて率直な感想を書く。結論から言うと、この本はもっと多くの人(特にミステリファン)に親しまれるべきものだと思っているので、少しでも興味を持ってもらえたら嬉しい。 まず、そもそもなぜこの本が”奇書”といわれるか、というと、端的に、アンチ・ミステリ小説だ

          「虚無への供物」を読んで ~落差抜群のジェットコースターへのお誘い~

          【詩】儀式

          儀にはまず火だ。 何があっても絶やしてはならん。 中心に設え。 皆で囲め。 次に、愛する者たちだ。 これはお前のための儀式であるが、 同時に、お前の愛する者たちの儀式でもある。 その次は贄だ。 血の滴る新鮮な肉とせよ。 多様な家畜をそろえよ。 臓物も忘れてはならん。 賢者は重要だ。 賢者とは小さな主語を用いて導く者だ。 「私は」「我々は」「明日は」 こう語る者を賢者という。 必ず呼びつけよ。 酒も有用だ。 常識をめくり、この世を正しく疑う道。 結合と孤独の媒介者。 そ

          夕立

          ぐわんぐわん、とねじれたような七月の蒼天 日輪から放たれる矢じりは拡散 優しさにはほど遠い烈しい光よ カエルの死骸はただちに乾き 遠景は目眩、蜃気楼に淀む 湿った足音は霞む峰の奥深く ひたすら質量をこらえ 鬱鬱と一閃の時を待つ 田の緑は健気さの色 吹く風は鋭さのかわりに柔軟さを運び 揺れる葉脈は眩しく香る  営みのにおい 地球の始まりのにおい 少年は畦道で、う~ん、と退屈そうに伸びをした。 いまだ畏怖の調は聞こえず 幼い稲は眠ったように空を飲み込み 切切と奔流への一滴を待

          【詩】鮫

          僕たちはどうせ鮫なので 誰かを傷つけずにはいられぬのです 生まれたての赤子の弱さを嗅ぎつけて 群れからはぐれた小魚を追いまわして この鋭い歯牙で貫かざるを得ないのです そこに滴る黒い血を 悪だ、悪だ、と責めたててはいけません それでは何も食えぬのです 口に広がる雑魚の意地を ただ忘れなければ良いのです 次から次へと生まれくるその歯牙を 受け入れるしかないのです 僕たちは所詮鮫なので ここに留まるわけにはいかぬのです 「今日」を横目に流して 背中にコケが蔓延るのを怖れて 鼻の

          【詩】Something Wild

          困ったことを言うねェ 勘弁しろよ だいたいこいつはかなりグロテスクな代物なんだ 見せるようなモンじゃねェよ ・・・ エ?それでも?見たいって? 弱ったナァ… よそ様に見られると暴れるかもしれねェからよ 悪いこタァ言わねぇ。 な、やめときなって ・・・ オイオイオイオイ、だからそんなに頭を下げられたって… ダメなモンはダメだよ、サァ頭をお上げなさって どうせ悪態を吐かれるのがオチでさぁ ・・・ あんたもしつこいね 参ったよ、まったく もし噛まれたとしても責任はとれね

          【詩】Something Wild

          【詩】Raise your flag!!

          映画だったか、小説だったか、近所の小さな美術館の絵だったか、骨とう品だったか、あいつの成功だったか、失敗だったか、あの娘の笑顔だったか、ともかく、そんな日常的な形をした探査機が俺の胸の奥深くまで沈んで行った。 馬鹿な話だが、その探査機が、まっくらで何も見えない水底で、昔俺が捨てた「旗」を拾ってきたんだ。 もうさ、塗装もはげ落ちて色なんてないんだよ。 傷だらけのボロボロで、ちょうど手に持つところあたりで折れかけてやがる。 最初は「何でこんなゴミみたいなものを」と思ったんだ

          【詩】Raise your flag!!

          【読書レビュー】自分なりの「センスの哲学」

           最近、「センスの哲学」(千葉雅也著)という本を読んだ。ざっくりと、センスとは何か、センスとはどういう具合に芽生えるのか、センスの良さとはなにか、といった内容で、本当に興味深かった。ものすごく頭の良い人が、難しい話とか入り組んだ話を、わかりやすく筋道立てて語ってくれる本は大好物だが、そういう意味でこれは本当に”アタリ”だった。読みっぱなしで終わりにするのがもったいないので、ここで自分なりの形に落とし込んで、鮮度のよい今のうちにパッキングしておきたい。 まずは、本の趣旨を僕な

          【読書レビュー】自分なりの「センスの哲学」