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【詩】鮫

僕たちはどうせ鮫なので
誰かを傷つけずにはいられぬのです
生まれたての赤子の弱さを嗅ぎつけて
群れからはぐれた小魚を追いまわして
この鋭い歯牙で貫かざるを得ないのです
そこに滴る黒い血を
悪だ、悪だ、と責めたててはいけません
それでは何も食えぬのです
口に広がる雑魚の意地を
ただ忘れなければ良いのです
次から次へと生まれくるその歯牙を
受け入れるしかないのです

僕たちは所詮鮫なので
ここに留まるわけにはいかぬのです
「今日」を横目に流して
背中にコケが蔓延るのを怖れて
鼻の一番切っ先で、大海を切るように進むしかないのです
たとえ、どこで独りになろうと
それに気付いてはいけません
それでは、ちゃんと死ねぬのです
自然という大きな大きないのちの走馬灯を
いつでもその目に湛えれば良いのです
喘ぎ、吸い込む新鮮な明日で
また次の夕陽まで泳ぐしかないのです

強いわけではないのです
自由なわけでもないのです
僕たちは、ただ、鮫なのです

愛を守り抜き
悠然とたゆたい
静寂とともに眠る
そんな母クジラに
僕らが畏怖を感ずるのは必然なのです

遠くで血の匂いがします
いかねばならぬのです
生きるとはそういうことなのです
誰にもまかせられぬのです
鮫が鮫であるということと同じくらいに
生きるとは決まり切った主張なのです
あなたは、僕らに生きることをやめなさいとは言えぬのです
だって、僕らは鮫なのだし、僕は生きたいのだから

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