風の結(フーテンのゆい)/手相・タロット占い師  小説『月の交差点』

愛月日奈子先生からタロットの世界を味わうことを教わりました。人生は未知未知ている! *…

風の結(フーテンのゆい)/手相・タロット占い師  小説『月の交差点』

愛月日奈子先生からタロットの世界を味わうことを教わりました。人生は未知未知ている! * タロットカードの世界をもとに短編小説執筆中。 * instagram には sun&moon TAROT ストーリー占いを展開中。

最近の記事

タロット小説【塔と節制】

「…彼、ずるいのわかってるんですけどわたし…あきらめたくなくて… でも…友達に話すときっと…不倫はやめとけっていうに決まってるから…」 女性は困った顔つきでうつむき加減にぽつぽつと話しはじめた だが言葉は途切れることなく水があふれ出すように 出会いから今までの経緯の話が続く わたしは口を挟まず静かに相槌をうちながら話を聞いていたのだが… 彼女はどこか…嬉しそうなのだ ****** 街角で鑑定し始めて一番多く相談に来られる内容が不倫だ 不倫というのは潔癖症の世間では<悪>

    • 【タロット小説】 塔⇒皇帝へ 近くにのんきな女帝

        やめた! いきなり、 ...いや、ようやく自分のなかでそう言えた とんとんと階段を降りる 台所では母が朝食の支度をしている最中だった 日の当たる明るい台所にはいつもの母の姿 リズミカルなまな板の音 毎日のルーティーンを淡々と行う背中 みそ汁のいい香り 「かあさん」 「ん? ちょっとまってね。もうすぐだから。」 まな板のリズミカルな音は続く 「俺やめるわ」 「え? なにを」 「試験」  リズムが止まる 振り向く母 「は?...はあ~...

      • それぞれの大地と風と

        春 日頃お世話になっている舞踏家さんのスタッフを頼まれたので 観光地のど真ん中に建つある劇場へと向かった その方はお顔が広く いろんな方面からもちろん海外からもたくさんのスタッフが集まってきた 和やかに そして粛々と行われる準備 わたしにとってこういう場は心地よくワクワクする場所だ 一緒にスタッフのお仕事をすることになった今回出会った女の子は 地球の裏側からやってきたという 薄い茶色の瞳がコロコロ動いて その笑顔は可愛らしくて たった今 春風がふく草原からやってきま

        • 【タロット小説】 ⅩⅣ節制

          ふと思い出した昔の話(昭和の頃の実話です) 芝居本番が真近にせまるある日のこと その公演場所についてのお問い合わせの電話がかかってきた 詳しく場所の行き方を聞きたいと お手元には公演のチラシもあるという (チラシに地図と交通機関がくわしく載っているはずだけど...?) 変だな?と思いながらも口頭で丁寧に行き方を説明させていただいた *** 当日、一番前の席にご夫婦が座られた ふとみるとお二人とも白い杖 *** 開演 じっと集中してわたしたちの芝居を聞いておられる

          あの日 ゆれた

          (8年前?に書いた原稿です) 1月17日 早朝 目が覚めた 強い揺れに起こされたのだ (地震か...) 床から伝わるなんとも気味の悪いその揺れに起こされて わたしはテレビをつけた (かなり大きいんだ...) 大阪もかなり大きい数値がでている ふと大阪の友達のことが心配になって 電話をかけてみた けれど (あ、まだ早朝だ。大したことなかったら迷惑かも。) と思いすぐに切ってしまった そのあと テレビでは広範囲の各地の震度が表示され 信じがたい街の様子が映し出さ

          道路標識

          今の若い年代に送り出される漫画は 色合いがかなり変わっている 時代が変わっているのだから あたりまえだが 感覚的にわかることも多いが でも だからこそ わたしは道路標識でいるべきで 一緒になって道案内はしちゃあいけないんだ って改めて思った 本当にいろんな色が混ざり合う時代 新しい色が生まれている時代 それをひとりの感覚で きめちゃいけない ところで ふいに扉があいた よかった また入れる

          散る

          指の長い上品な手 羨ましいな …小指の先が曲がってる あ わたしと同じだ 大きい手 そうだった いつもそばにこの大きな手があった 懐かしい足の指 そうだった 膝に座って見下ろしていた指 こんな指だった 覚えてる 幼いわたしと別れた後の話をたくさん聞いた ずっと思い続けてくれていた事実をたくさん知った 大人の事情に巻き込まれて 大人の都合で思い込まされて すれ違った時間はあまりにも長すぎた ただただ優しい人でしたよ 再婚相手の奥さんはいった いつも周りの人を助けて

          タロット小説  月

          迷ったか 四辻に立ってみる こんな夜更けに誰も通らず あたりまえか 答えは出ず いつものバーでひとり カウンターの片隅で カララ と グラスの氷をかき混ぜてみたり 考えはただぐるぐる回るだけ 暗い夜道は動けない そんななかでうろうろしてみろ すぐに獣に食われちまうぞ 森で迷ったか なら しばし木の上にのぼり夜をやり過ごせ 街で迷ったか なら ビルの屋上で星を数えながら太陽を待て

          【タロット小説】~IX隠者~

          気を付けてな この灯りは小さいから 本当の手元しかみえんのじゃ だがな そうやって胸元に掲げ 時に腹に抱き ゆっくり ゆっくりと 進めばいいんじゃ 怖がらんでもええ 急がんでもええ この洞窟には敵はおらん 安心せぃ 気のすむまで この洞窟探察をやったらええ 何を見つけるかはあんた次第じゃ さあ わしの案内はここまで この先は一人じゃぞ 時が来れば必ず 出口は見つかる あんた自身の出口が ああ 足元気を付けなされ 岩がごろごろしておるでのぉ (本当は宝石

          【タロット小説】~xv悪魔~(改訂)

            フーテン? ああ 来よるぞ ときどき まあ奴も人間やからな ずっと囚われないままっつーのは無理ってもんよ 大抵の人間は無意識のうちにつながれに来よる フーテンもな いつのまにか来とる時があるなあ 一人でひとしきりぎゃーぎゃー言うて 一人で納得してまた出ていきよるわ まあ 見てたら面白いぞ 落ち着いたら 周りの人間眺めてたりの おとなしく本を読んどる時もあるかな ときおり地面いっぱいに図面書いてみたり (ガリレオの鼻歌交じりの時もあるが 奴の

          日記 ~なんにもおこらない日~

          気持ちのよい秋晴れの午後 午前中に掃除や洗濯を終えて 少しゲームをしながら頭の整理をする ゲームといっても簡単なやつだ あまり手の込んだのに手を付けると 一日がつぶれてしまうから すぐにやめられる程度のほんとうに簡単なもの 窓を開けたままなので ベランダからは気持ちの良い空気が流れてくる 遠くの公園からは 学校帰りの子供たちが楽しそうに遊ぶ声が届く 心地よいリズムを刻む電車の音 のんびり走るバイクの音も聞こえる 今の季節はきもちいいだろうなあ わたしのバイクは廃

          【タロット小説】〜ⅩⅤ 悪魔 〜

          よお~ よう来たなあ~ 長い道のりご苦労さん なんだよ 苦労してここまできたのに デビルかよって? まあまあそう言わずに… ちょっと寄ってく? ここは地獄の三丁目 なんつって😁 え? こいつら? 見ての通りじゃん 繋がれてんの もしくは好きで自分を繋いでやんの わし? わしはなんもしとらんよ 人間がさ 好きでやってんじゃね? まあ わしはここで人間どもの愚痴を聞いてやってるわけよ おお 好きなだけいていいよ あんたも 愚痴ってく? それとも繋がれてく?

          【タロット小説】 〜Ⅱ 女教皇 女司祭 〜

          どこかから響いてくる ひとつの声 遠く... はるか遠くから... その落ち着いた声のトーンは空間に 穏やかに 風に乗り広がっていく 「......&#@%*  よ  」 でも 何を言っているのか 遠すぎてまだ聞き取れない 「・・・ここは...どこだ...?」 目がかすんでいるのか 周りの景色はぼんやりとしか見えてこない 自分の動きも緩やかだ 機敏に動けない ・・・ああ 夢の中か・・・ 浅い夢を見ている? 半分頭が起きているのだろうが 全く体が動かない

          【タロット小説】 〜 I 魔術師 〜

          「どうすればいいですか?」 向かい側に座った彼女は食い入るような眼差しで 占い師であるわたしの顔を覗き込んでいた。 「ではカードに聞いてみましょう。」 緊張を隠してカードを手に取る。 いつのまにか日は沈みはじめ 空にはうっすらと紅色が広がっている。 これからゆっくりと綺麗な濃い火の色に変わって行く時間だ。 イベント広場の一角に小さなスペースを陣取り 新米占い師はカードを繰る。 ただただ無心にカードを繰る。 彼女は、これで運命を決めるんだ、とでも言わんば

          【タロット小説】〜 Ⅲ 女帝 〜

          「楽しければいいじゃない!」   はあ…まただ 彼女はいつもこうだ(苦笑) 大学の学食で遅い昼食をとりながら 講座の単位の話やおしゃなカフェが近々オープンする話 (注 : このお話はコロナ前に書いたものです) そしていつの間にか恋愛の話になった 彼氏がいるにもかかわらず わたしは最近ちょっと気になっている子がいる 細身で柔らかい雰囲気 友達も多くて… 今日も気軽に話しかけてきた 「おう」 相変わらずの人懐っこさで相手を安心させるあの笑顔はちょっとずるい (笑)