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1000日チャレンジを1800日続けたら、マツコの隣に座っていた話


「石の上にも三年」
ということわざがある。
冷たい石の上でも3年間座っていれば、
物事が好転していくという意味らしい。

では、3年間ではなく5年間座ったら…

とっても素敵なことが起こったので
noteに書いてみました。


noteの中でチャレンジをしている
クリエイターのみなさんへ
この記事を贈ります。




「あなた、まったく同じ色のジャケットを持っているじゃないの」
鏡の前でジャケットやTシャツを並べ、ポーズをしている自分に、妻が呆れたように声をかけた。

ふっふっふ。妻よ、違うのだよ。
普段、自分が着ているのは、5年くらい前に紳士服量販店で買った12800円のジャケット。

そして、今袖を通しているのは、衣装レンタルをしたブランドもののジャケット。値段が10倍くらい違うのだよ。

テレビに映るんだから、それなりの準備をしていかないとね。



収録の日は、とても風の強い日だった。

満員の地下鉄を降りて、収録が行われるテレビ局へ向かう。

バタバタッバタ。
テレビ局の一押しドラマのポスターなのだろうか。吹き抜けの通路に連なるように貼られていて、風が吹くたびに大きな音を立てて揺れていた。

その音に合わせるように、自分の心臓もバクバクッバクと高鳴っていく。


本当に自分なんかが、テレビに映ってもいいものなのだろうか。
テレビって、もっとキラキラしている人が集まる場所ではなかろうか。


ピッ!
前に通った人の手慣れた仕草を真似して、入館証をゲートにかざす。

ほっ。
うまく通れたようだ
テレビの関係者が多く通る場所。こういうところで引っかかるわけにはいかない。

気負っていないように、あくまでも自然体のふりをしていくのだ。



控室として個室が用意されていた。

部屋は畳敷きで真ん中には小さなテーブルがひとつ置いてあった。

壁際は一面鏡貼りになっていて、その前には低めの長机が備え付けられていた。

テレビに出ているタレントさんたちが、ここでメイクをしたりするのだろう。
長机の端っこには、ペットボトルのお茶やミネラルウォーター、それにお菓子が置いてあった。


喉が砂漠のようにカラカラだった。
こぼしてしまってもレンタルのジャケットやTシャツを汚さないようにと、お茶ではなくミネラルウォーターの方を1本いただくことにした。


収録の時間までは少し時間があった。
しかし、ゆっくり休憩するような時間はほとんどなく、それなりに忙しかった。

番組のディレクターさんと流れの打ち合わせをしたり、スタジオの中を見せてもらったりもした。
収録では話始めが肝心みたいだ。そこがうまく嚙みあえば、会話の流れに自然と乗っていけるとのこと。

顔合わせのシーンを自分の中で何度もシミュレーションしてみる。

うーん。
何度イメージしてもうまくいかない。


収録の時間が近づくにつれて、だんだん焦りのようなものが出てきた。


控室で、少し遅めの昼食をいただくことになった。
それは、白い容器に入ったカレー弁当だった。

うまそう!
さっそく、いっただきまーす!

ちょっと待った。
危ない。危ない。
着ているジャケットやTシャツを汚さないようにしないと。

それらを脱いでから、スプーンを手に取った。

んっ。

びっくりしたのは、カレールーの横のスペースに皮付きジャガイモが丸ごと1個入ってたこと。
どうやら、ごはんとジャガイモの両方でカレーを味わえちゃう弁当らしい。

これがかなり美味しくて、一気にかきこんでしまった。


ふぅ。

いったん落ち着こう。



そもそも。

なんで、自分はここにいるのだろう。



番組に出るきっかけとなったのは、自分がおにぎりのことを毎日のようにnoteに書いて発信してきたからだ。

期間で言うともうすぐ5年。
日数にすると1800日を超えている。

「石の上にも3年座る」という言葉はあるけれど、5年座っているのは、なかなかのもの。


そもそも。
どうして自分は、そんなことを始めたのだろうか。

実は、1800日前。
自分にとって転機となる、ある出来事があったからなのだ。




自分がこれからの時代に絶対に必要になると思い、その考え方を広げていくことをライフワークにしているものがある。


それが、ファンの存在の素晴らしさや、スキという気持ちを大切にしていこうとする「ファンベース」という考え方だ。

そのファンベースの考え方を教えてくれたのが、コミュニケーション・ディレクターのさとなお(佐藤尚之)さんという方だ。
さとなおさんは著書に「明日の広告」や「ファンベース」などがあり、マーケティングや広告の業界に「気づき」を与え続けている存在。

自分は、そのさとなおさんのコミュニティ(4th)に入っていて、その考え方を実践し、自分の生き方に活かそうとしていた。


そのコミュニケーション・ディレクターのさとなおさんが、2018年に、突然アニサキス・アレルギーというアレルギー症にかかってしまった。

アニサキス・アレルギーは、日常生活の中でほぼすべての魚介類を避けなくてはいけないという大変なアレルギー。

しかも治療法がいまだ確立されていないらしく、さとなおさんの場合は3年間 魚介類を完全除去して、そのアレルギーの数値によって食事治療に進んでいくかを決めるとのことだった。


2019年7月。
さとなおさんは魚介類を完全除去する生活を宣言をした。
3年間、もしかしたらその後の治療を含めると10年以上になるかもしれない大変な治療である。

そんな苦しい治療を前にして、さとなおさんは少しでもポジティブに取り組むためには、どうしたらよいかを考えていた。

そこで出てきたのが、

最初の苦しい3年間を「1000日チャレンジ 」と名付け、前向きにチャレンジする期間として逆に楽しんじゃおうということだった。



「どうせやるなら、楽しい目標を持ってやろうぜ!」
「みんなも一緒にやらないか!」


そんなメッセージが、コミュニティ(4th)の仲間達に投げかけられた。

それに呼応したのは、なんと100人以上。


それぞれが目標を作り、2019年の7月から一斉に1000日チャレンジを始めたのだった。



自分もなにか一緒にやりたかった。

でも、自分は、それまで日記を3日以上続けたことがない飽き性なタイプ。

無理、無理。続けられるはずがない。

でも、もしかしたら続けられることがあるかもしれない。
続けたら、なにかが変わるかもしれない。

どうせやるなら、楽しいことだ。
どうせやるなら、自分の好きなことだ。


そこで自分の好きなものを、仕事で使っていた手帳の余白にどんどん書き出していった。

その中にひとつ。
これは、面白そうだなって輝いて見えたものがあった。


それが「おにぎりの食リポ」だった。



おにぎり。
それは「THIS IS 和食」といえるような、日本の食の中心にあるもの。

お米は、日本や地域の歴史や産業、文化と密接に結びついている。
このおにぎりという食べものを深堀りし、未来に伝えることで日本の食文化に貢献することもできそうだ。

うん。
どうせやるなら、自分の中で完結させず少しでも世の中に役立てるものが絶対にいい。大義があれば、飽き性な自分でも続けられるような気がした。



そもそも、自分にとっておにぎりとは何だろう。
自分の記憶を遡ってみる。

小さい頃は、両親が離婚したこともあって、父と一緒に暮らしていた。
父は仕事で長期間家を空けることが多く、その時は田舎から祖母が自分の面倒を見にきてくれた。


普段は学校から帰っても誰もいなく寂しい思いをしていた。
でも、その時だけは祖母が待っていてくれた。

祖母は、いつも、おやつにおにぎりを握ってくれた。


かつお節に醤油を混ぜただけの、おばあちゃんのおにぎり。

それが、本当に温かくて。おいしくて。


おにぎりって、豪華ではないし、キラキラもしていない。どちらかというと地味な食べもの。

だからこそ、うわべだけではなく感情のこもったレポートができるかもしれない。自分という人間の体温が伝わるような文章をかけるのではと思った。



おにぎりの食リポをしようと決心したけれど、仕事が忙しくて、時間も余裕もなかった。


ランチは毎日カップ麺とコンビニおにぎりという状態だった。

食べたコンビニおにぎりを日記みたいに綴っていくことも考えてみた。
でも、それを読みたいと思う人はいるのだろうか。果たして、自分はワクワクできるのだろうか。


さとなおさんが呼びかけた「1000日チャレンジ 」

それは、前向きにチャレンジする過程を楽しみ、目標を達成をする喜びを味わうものであるはず。

思い切って、コンビニおにぎりをこのチャレンジから外すことにした。
自分の手作りおにぎりも入れないことにした。


自ら、逃げ道を塞いだのだ。


結果として、それが良かったのかもしれない。

コンビニおにぎりの評論家は、世の中にたくさんいた。
毎日自分で作ったおむすびをSNSなどにアップしている人もたくさんいた。

しかし、お店のおにぎりの味を追い求めている人はまったく見当たらなかった。
それを毎日レポートしている人は世界中探しても、自分しかいなかった。
1000日チャレンジのテーマに、オリジナリティがグイグイついてきた。



インターネット上には、なんでも情報が転がっている。
AIに頼めば、大体のことがあっという間に記事になってしまう。
実際に経験したり考えたりしなくても、パソコン1台、スマホ1台あれば、すべてが完結してしまう時代だ。

そんな便利な時代なのに、わざわざ自分の足でお店を探し、わざわざ自分の舌で味わって、わざわざ自分の言葉で書き残す。

めちゃくちゃ効率が悪いことに違いない。

おにぎり屋さんに出会えなかったり、おにぎりが売っていなかったり。こんなことだらけだった。

それでも、続けることにした。


だからこそ、
読んだ方からスキをもらえると本当に嬉しかった。
コメントをいただくと本当に嬉しかった。

下手くそな文章であっても、その情熱を届けられることがわかった。



このまま1000日まで続けていければ、「おにぎりを語る」という分野において、唯一の存在になれるかもしれない。

こんなやりがいのあるチャレンジは、なかなかないだろう。




「ハスつかさん、まもなく本番です」

ドアの向こうに、インカムをつけた番組スタッフの方が立っている。

いよいよ収録の時間が来たみたいだ。
控室の鏡を見ると、人生で初めてメイクをしてもらった自分の姿が映っていた。

パチーン!

両手で自分の頬をたたいて気合を入れる。

「NO ONIGIRI NO LIFE」と書かれたTシャツの上に、衣装レンタルしたジャケットを羽織った。

うん。悪くない。

荷物を端っこに寄せて、控室のドアから外へ出た。

テレビ局の長い長い廊下。
それは自分の進んできた道であり、これから進むべき道を指し示しているようでもあった。



さあ、いこう。
1000日チャレンジを1800日続けた成果を、
世の中に伝えよう。



noteの世界には
前に進もうと、道を開こうと、
努力をしている人がたくさんいる。

自分もその中のひとりだ。

この記事がそんな仲間たちの
チャレンジし続けていく勇気に
少しでもなれたなら

嬉しく思う。







ファンベースデザイナー、地域創生プロデューサーなどしてます。 おむすびnoteを毎日書いてたり、浦和レッズを応援したり… みんなが、好きなこと、応援したいことを素直に言える世の中にしたいなあ。 皆さんと、いろいろなコラボをしたいです! ぜひぜひご連絡ください!