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広がるCVCの輪。国内最大CVCコミュニティ運営者に聞く、最近の変化とは

近年、新規事業の創出や既存事業とのシナジーを目指してスタートアップへの投資を行なうCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)が様々な企業で立ち上がっています。さらに、企業や業種の枠組みを超えてCVC同士が情報交換や交流する機会も生まれ、私たちも各社CVCの熱量の高まりやコミュニティの輪が広がりつつあることを実感しています。

そこで今回は、国内最大のCVCコミュニティ運営やCVCとスタートアップに向けたコンサルティング、人材支援などを行なっているFIRST CVC株式会社 代表取締役の山田一慶さんと、東芝テックCVC投資メンバーの石井に、昨今の国内CVCの状況や最近感じる変化について聞いてみました。

スタートアップが検討する第一歩を“CVC”という選択に

ーーはじめに、FIRST CVCを立ち上げた経緯を教えてください。

山田氏:もともと私はスタートアップでCFOをやっていたのですが、資金調達はもちろん事業開発においても事業会社と接点を持つのがなかなか難しいと感じていました。他のスタートアップの方々と話していても、同じような課題感を抱えていたり相談を受けたりすることが多かったので、「誰もやらないなら、まずは自分がやってみよう」と思って事業会社とスタートアップをつなぐコミュニティを始めたのが最初のきっかけです。

はじめは有志で集まるところから始まったので名前もスポンサーももちろんなかったんですけど、昨年(2023年)1月に正式リリースして1年半くらいで約400社のCVC・事業会社の方に参加いただけるようになってきました。

ーー活動を広げていくのはとても大変だと思いますが、FIRST CVC運営に対する想い(理念)のようなものは何かありますか?

山田氏:私自身、スタートアップにいた頃から、事業を伸ばしていくという意味ではVCとの連携だけではなく、事業会社と連携することで大きく成長できるのではないかと思っていました。例えば、スタートアップのリソースやキャパシティだけではできないことを事業会社と一緒に取り組むことでイノベーションが起きるかもしれないし、実際にそれを実現している事例が増えてきていますよね。
なので、スタートアップの方が資金調達や事業開発、経営などの相談を一番はじめに想起するのが事業会社になったらいいなと。その “ファーストコールがCVCになってほしい” 、FIRST CVCの「FIRST」にはそのような想い(理念)が込められています。

ーーそうだったのですね、そんな想いが成長につながり、多くのCVCの方に広がっているように思います。現在どのくらいの企業が参加しているのでしょうか?業種の傾向などありますか?

山田氏:CVCは約400社、人数ベースだと1,000人以上にご参加いただいています。

石井:国内CVCの母数が450社ぐらいなので、業種問わずほとんどのCVCが参加しているといっても過言ではないですよね。

山田氏:そうですね、多分ほとんどの業種、業界の方たちに参加いただいていると思うので、特に傾向はないですね。石井さんも含めて皆さんが積極的にコミュニティの輪を広げてくださったおかげで、大きな規模になってきました。あと、スタートアップについては、ライトなご相談から資金調達・事業連携なども含めると300社以上とつながりができています。

スタートアップとCVC、両軸の変化がうまく回り始めている

ーー最近、CVCを立ち上げる企業が急激に増えているという話題をよく聞くのですが、変化を感じることはありますか?

山田氏:直近は、CVCの設立件数自体は急激に増えたというよりも、毎年着実に増えているように思いますね。今現在も検討や立ち上げ準備をしている企業もいらっしゃいますし、いわゆる大企業の活動に限らず、中堅規模の企業が既存事業を変革していく手段としてCVC活動を始めるケースもだいぶ増えて、裾野がどんどん広がっていると感じています。もはやITや金融など一部の業界に限った話じゃなくて、本当に全産業の方々が取り組んでいるような印象ですね。

ーー企業のCVC活動が盛んになる中で、スタートアップの方々から見たCVCの印象も変わってきていますか?

山田氏:変わってきているし、これからもっと変わっていくんじゃないかなと思っています。資金調達でも事業連携でも良い事例が出てきていますよね。スタートアップ側がCVCをうまく活用できているということだけでなく、CVC側もスタートアップとの連携がうまくできるようになってきたというか、ひと昔前の「大企業の人たちはスタートアップ慣れしていない」みたいな感じはあんまりない気がします。

石井:確かにスタートアップとCVC、両軸の目線での変化がありますよね。以前はスタートアップへの出資が単なる受発注のような関係性でしかないケースもあったと思いますが、CVCの目的としてエクイティ(株式)だけでなく事業シナジーも求められるようになると、より両社だからこそ実現できることを探求するという関係性に変わってきているように感じます。そして、それがバリューアップにつながってきている。
これはスタートアップの方々のCVCの使い方がうまくなっているということもありますし、CVCが増えて先進的に取り組まれてきた事業会社の良い事例が出始めているのもあると思います。

山田氏:東芝テックCVCの鳥井さんと元DNX Venturesの中垣さん、セーフィーの佐渡島さんの鼎談記事にもCVCとスタートアップの連携についての話がありましたよね。

ーーこちらの記事ですね、読んでいただきありがとうございます。セーフィーさんの事業会社との連携事例はとても参考になりました。もっとCVCとスタートアップの事例が増えていくことを期待したいですね。そういう意味でもFIRST CVCの活動はCVCのプレゼンス向上につながるように思います。

山田氏:はい、そうでありたいと思っています。つい先日も「JAPAN CVC SUMMIT」という国内最大級のCVCイベントを開催しました。業界別グループに分かれて行なう事例共有会(分科会)やいくつかのセッションのほか、投票でスタートアップとの事例を表彰するアワードも実施しました。
仕事に役立つTipsやノウハウを学べるイベントは世の中にたくさんある中で、今回は事業会社とCVCの方だけが参加できるイベントだからこそ、コミュニティの内輪感やポジティブな雰囲気を醸成することを目指していました。

実際にCVCの活動歴が長い人もいれば、CVCを立ち上げたけど始まったばかりで不安という人もいる中で、お互いの悩みや思いを共有することで「いろいろ大変だけど、変えていくために一緒に一歩踏み込みましょう!」という一体感が生まれていたように思います。ちなみに、今回のトークセッションでは東芝テックの錦織社長や石井さんにもご登壇いただきました。その節はありがとうございました。

石井:こちらこそ、ありがとうございました。このイベントを通じて得た共感やナレッジが皆さんのCVC活動を一歩でも二歩でも前に進めるきっかけになり、結果として新たな事例が生まれ、来年のイベントで登壇するようなことがあったらおもしろいですよね。

山田氏:はい。横のつながりやプラクティスをシェアして世の中の目に留まるようなことにつながると皆さんの活動がさらに活性化しますよね。今後もこうしたイベントなどを通じて、みんなでCVCのムーブメントを作っていけたらいいですよね。

石井:本当にそう思います。次のイベントもすごく楽しみにしています!

ーーありがとうございます。次回はコミュニティの意義や、CVC業界、スタートアップ業界の人材についてもお話を伺いたいと思います。


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