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小売業界で話題の無人店舗。海外の動向と、日本に浸透させるための課題とは?

少子高齢化が進む中、労働力不足を解消する自動化、省人化施策として話題となっていた「無人店舗」。今では非(避)接触の買い物体験ができるという文脈で事例を耳にするようになった気がします。

無人店舗は本当に日本に浸透するのか?そのために乗り越えるべき課題は?といった疑問について、今回は海外の情報を整理しつつ投資メンバー(鳥井・小澤・吉村)の意見も交えてお伝えしたいと思います。

Amazon Goはレジレス店舗技術をサービス化

未来の店舗の姿としてメディアで大きく取り上げられていたのが、米Amazonが2018年から提供するレジレス店舗「Amazon Go」でしょうか。Amazonは顧客ロイヤリティ向上のため、新しい買い物体験を実現する様々なサービスを提供しています。その中でも「Amazon Go」は有名なので、小売業界に携わる方やテクノロジーに興味のある方なら、説明不要の事例かもしれません。

いちおう概要を述べると、Amazon Goの利用者はスマートフォン用アプリをダウンロードし、Amazonアカウントとの連携を済ませてから来店します。そして、店舗入口のスキャナーでアプリの二次元バーコードを読み込ませて入店。店内の棚から好きな商品を手に取ったり、あるいは持参したバッグに入れたりしたあと、会計を済ませることなく店舗を出るだけで、自身のAmazonアカウントから自動で商品の代金が引き落とされるというもの。

この店舗にはコンピュータービジョンやセンサーフュージョン、ディープラーニングなど自動運転車で使用されているものと同じタイプのテクノロジーが活用されているのですが、技術うんぬんよりも、単純にショッピング体験として全く新しいものを提供している点に、世の中の関心が集まった理由があるのではないでしょうか。2020年にはAmazon Goの技術を「Just Walk Out」という名称のサービスで提供開始。既存の店舗に数週間で導入できるというハードルの低さも話題になりました。

2021年にはロンドンで「Just Walk Out」を採用した生鮮食品ストアがオープンしたほか、同年6月には、ワシントン州で同社の大型スーパー「Amazon Fresh」への導入もスタートしました。

この店舗ではゲートの入り口で、Just Walk Outのレジレスサービスを利用するか、従来の有人レジを利用するかを選べます。さらに、Just Walk Outを選択した場合も、アプリで二次元バーコードをスキャンする方法、非接触の手のひら認証システム「Amazon One」で手のひらをスキャンする方法、Amazonアカウントに紐づけたクレジットカードやデビットカードを挿入する方法と、3つの入店方式を用意しています。また、店内には従業員もいるので、必要に応じて店員からサービスを受けられる点もポイント。

レジに並ばなくてもいい、レジ無しストア」という文脈で話題となったAmazon Goではありますが、レジレスだけにこだわらず、ユーザ目線でより新しく、楽しいショッピング体験を提供するための様々な工夫がされているのです。

AIチェックアウトシステムのユニコーン企業も登場

Amazon Go以外の動向も見てみましょう。2018年に無人レジ店舗をオープンしたStandard Cognitionは、陳列棚センサーやRFIDなどは不要で、Amazon Goよりも少数の天井カメラを取り付けるだけで簡単に導入できる無人レジサービスを展開しています。また、顔認識などの生体認証を一切使用しないことでプライバシーに配慮している点も特徴だと言えるでしょう。同社は2019年のシリーズBで3,500万ドル、2021年のシリーズCで1億5,000万ドルの資金調達を行い、10億ドルの評価額でユニコーン企業の仲間入りを果たしています。

その他の動向だと、2021年にアメリカン・エキスプレスがニューヨーク市ブルックリンのスタジアム「バークレイズ・センター」にて、アメックスカード所有者専用の無人店舗をオープンしました。Amazon Goと同じように、アメックスの非接触型決済カードなどをゲートにかざすことで入店でき、好きな商品を取ってそのまま退店できるというものです。

チェックアウト不要のテクノロジープラットフォームを開発する米スタートアップのZippinも、スタジアムやアリーナの売店への導入を推進しています。

スポーツ観戦中のレジ待ち解消はニーズがありそうなので今後どのぐらい普及するのか注目しています。

ユーザー体験の向上にどうつなげるかがポイント

COVID-19前後から、日本でも都内を中心に無人店舗はいくつか出てきています。完全無人型でなくても、セルフレジを置いてあるコンビニをよく見かける人は少なくないのではないでしょうか。メンバーも購入点数が少ない時やお昼のピーク時はセルフレジを積極的に使っているようです。

一方、「無人店舗だから行く、セルフレジだから行く、というモチベーションではないですね。やはり前提として欲しいものがあるからお店に足を運ぶわけで、買いたい商品が置いてあることが最も重要です」と答えるメンバーも。

確かに、Amazon Goのような新しいカタチのお店が出てきたら、興味本位で一度は来店するかもしれませんが、自分にとって必要な商品がなければ次も行きたいとはなかなか思えませんよね。そういう意味では、ユーザー体験の向上が無人店舗の成功を左右するポイントになりそうです。

では、リアル店舗でユーザー体験を構成する要素とは何でしょうか?
ざっとリストアップしてみました。

・品揃え
・値段
・商品の探しやすさ
・商品のピックアップのしやすさ
・決済のしやすさ
・配送
・新しいものとの出会い

などなど

いろいろある中で、どういうニーズを重要視するかがポイントかと思いますが、メンバーが口を揃えて「レジ待ちに並ぶ時間はなくしたい(特にお昼時の行列はしんどい!)」と言っていたので、例えば品揃えは若干弱くても来店から決済までのスピードだけは他のどこにも負けない無人コンビニとかがあれば、とにかく急いでいる人にはヒットするかもしれません。

ちなみに、メンバーからは、「既存のスーパーやコンビニを無人化するパターンだけでなく、最初から目的やユーザー体験が既存の店舗形態とは全く異なる、新しい店舗のフォーマットを模索する方向性もあるのかもしれませんね」といったコメントがありました。

確かに、シチュエーションやニーズを限定した無人店舗は面白いかもしれません。例えば、サンフランシスコのCafe Xは、ロボットを活用した完全無人のカフェバーをサンフランシスコとサンノゼの国際空港に展開しています。それから、これは店舗ではなく自販機ですが、シカゴのFarmer's Fridgeはオフィスや病院などの施設に新鮮なサラダのデジタル自販機を設置しています。

このように、オフィス、従業員食堂、大学、病院の一部で小規模の無人店舗を導入するなど、シーンやニーズをグッと絞り込んだ商圏は発展する可能性がありそうです。

また、無人店舗の導入には国ごとの環境でも違いがありそうです。Amazon Goを利用したことがあるメンバーからは、「アメリカのコンビニは薄暗かったり、夜間に一人で入店するのは少し怖かったりするが、Amazon Goは明るい雰囲気でカメラもあって安心して買い物を楽しめた」という声も。

「アメリカで無人店舗が浸透しているのは、日本ほどコンビニや自販機が充実していないからでは?そう考えると、日本のマーケットは少し異なるかもしれませんね」といった話がありました。

次回は次世代のショッピングカートに話題を広げつつ、未来の店舗の可能性や、投資目線での期待なども聞いてみたいと思います。

出資や協業について相談してみたい方は、公式サイトよりお気軽にお問い合わせください!


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