続く値上げと消費者の生活防衛
”物価が上がっている…”と、様々なシチュエーションで感じることが多いのではないでしょうか?
いつも購入している商品がいつのまにか高くなっていた!とか、 毎月の電気代が想定以上に!という事を体感しているのではないかと思います。
こういった日常生活への影響はまだまだしばらく続きそうな状況の中で、節約は大切ですね。
そんなニーズに対し、スーパーや食品メーカーでは消費者を応援するために様々な工夫をしているようです。今回は消費者ニーズに合わせて変化している、食品トレンドについて「食品商業」編集部さんにレポート頂きました。
スーパーやコンビニなどの売上が回復し、上昇傾向にあります。
日本チェーンストア協会の販売統計データを見ると、食料品の既存店ベースの売上は、2023年春から前年比を上回っています。しかし、客数と販売点数が増えているのなら良いのですが、売上増に大きく寄与しているのは、値上げによる商品価格の上昇にあります。
食品の売上構成比の高いスーパーやコンビニは、言うまでもなく食料品の値上げによる売上の底上げ効果が大きくなります。実際、関係者の方々からは「1品あたりの買上額が上がって買上点数、客数が減少している」といった話を耳にします。
消費者は、あらゆるモノやサービスの値上げが常態化し、ある程度の値上げを受け入れている一方で、毎日の生活に欠かせない食品については、より低価格の商品を求める傾向が強まっているようです。
対するスーパーは、価格意識の高まりや買い控えにつながらない工夫が求められています。
続く食品値上げ、いつまで続く?
帝国データバンクが行った食品主要195社の価格改定動向調査によれば、2023年通年の値上げ品目数は、既に実施されたものや今後予定するものを含め、累計で3万1,887品目となるとのことです。2022年累計の2万5,768品目を大きく上回る品目数です。
値上げの要因は、円安が輸入食材を直撃したことと、記録的な猛暑による農作物への影響です。スーパーには、精肉、鮮魚、青果、日配、惣菜などの部門がありますが、最も売上構成比が高いのは野菜類です。肉料理でも魚料理でも、どのような料理にも野菜は欠かせないため、その値上げは家計にとって一番大きな打撃になります。
売手のスーパーにとっても頭の痛い問題で、たとえばトマトは昨年の5割増しで売らなければならないほど、仕入れ価格が上昇しました。高くなりすぎた野菜類を消費者は敬遠するため、販売予測も立てにくく仕入れにも苦労します。
しかし、この値上げラッシュも今後は落ち着く傾向になるだろうとの予測もあります。
また、上がりすぎた価格に対して、スーパーは特定の品目について、あえて価格を下げ消費者の生活を応援しようといった動きも見られます。
行き着くところまで上がった感のある食品の価格は、いきなり下がることはないにしろ、高止まりか、あるいは下降傾向に転じる可能性もあるようです。
節約志向の強まり
帝国データバンクの調査によれば、今年、2023年9月の家計負担額は前年の2022年に比べて4,058円増加。止まることのない値上げへ対抗するため、1世帯あたりの食品支出額は、月額3,685円抑節約したと試算しています。
こうした中、商品の値上がりだけでなく、電気代も上昇し家計を圧迫していて、消費者はさらなる生活防衛に頭をひねっています。
例えば、パスタの乾麺は、コロナ感染が拡大した時期、買い物回数を減らすために乾麺を買いだめする消費者が急増し、品切れが続いたアイテムです。こうした買いだめはなくなったものの、値上げによって売上に変化が出ています。
パスタの乾麺には、3分の早ゆでタイプから十数分のゆで時間が必要なものまで、さまざまな商品がありますが、その中で伸びているのが早ゆでタイプとショートタイプだと言います。
鍋に水を入れて10分もかかるのでは、電気代がもったいないと考える消費者は多く、3~4分でゆで上がる早ゆでタイプや、小さめの鍋で少量を素早くゆでることのできるショートタイプが人気となりました。
時短調理への関心は、光熱費節約のために、簡便な商品を選ぶ傾向が強まっているのです。
コロナ禍で広がった在宅勤務から、コロナ禍前の勤務態勢へと戻り、時間節約のために中食需要が伸びるものの、調理に時間をかけると光熱費が増えるために、短時間で調理できるものを選ぶ傾向が強くなっているのです。
冷凍食品にも変化が
前述の通り、天候に大きく左右され価格の変動幅が大きい野菜は、使う機会が多いだけに頭を痛める消費者が多くなっています。こうした中、注目されたのが冷凍食品です。ほうれん草やアスパラガスなどの冷凍野菜が人気になっています。
また、パスタを早ゆでするなど工夫しても、パスタソースも値上がりしているため、麵とソースが一緒になっていて、電子レンジで5分で完成するような冷凍食品は価格の変動が少なく、光熱費に気を遣うことも少なく、なおかつ手軽で時短にもなると売上が伸びています。
この傾向はスーパーに限らず、コンビニでも同じで、冷凍食品の取り扱いコーナーを広げたりしていますし、冷凍食品専門店も登場するなど、消費者の生活防衛心理にマッチしているといえるでしょう。
こうした社会情勢や消費者の買い方の変化に対応しながら、仕入れコスト、光熱費、人件費などが上昇している中で、買上点数減に繋がりにくい価格政策や、さらなるロスプリベンションが求められています。
(取材・文:「食品商業」編集部)
消費者の生活防衛意識の高まりに伴う、買い物傾向の変化をレポートしていただきました。時短調理品や簡便品が、時間の節約だけでなく光熱費節約の観点から選ばれているのは興味深いポイントです。買い物するときに、価格そのものはもちろん、電気やガス、水はどのくらい使うのか?も購買に影響を与えるため、より節約ニーズにマッチした商品設計やレシピ提案、買い合わせ提案がスーパーや食品メーカーにも求められそうですね。値上げは高止まり、または下降するという予想もあるようですが、日々の暮らしの中でそれを体感できるようになるのは、もう少し先のことになるのではないでしょうか。お店側も各種コストが上昇する中で消費者意識の変化に対応するのは簡単なことではないと思いますが、様々な工夫やアイデアにより、買い物の楽しみや豊かな暮らしを応援する提案が生まれることを期待したいと思います。