美意識ある組織とは
おかげさまで本日、株式会社リバース・フロウは創立8年目を迎えることができました。
たくさんの方たちに支えられて本日があること、あらためて感謝申し上げます。
今回のコラムは、美大生でもある私が、最近組織というものをどんな風に見るようになったかを、言語化していきたいと思います。
■美意識は細部に宿る
近年、この仕事を通して強く実感しているのは、
「経営者の美意識は、組織の細部にまで宿る」
ということです。
美意識(aesthetic consciousnes)とは、
哲学者バウムガルテンのいう「感性的認識」でいうところの、
美的な対象にたいして働く、自由で主観的な意識と言えるかと思います。
簡単に言えば、
「美を受け入れる意識。美を創造する意識」となります。
私は今、芸術・デザインについて大学で学んでいますが、
こうした視点を通すと、これまでとは少し違った視点で、ものごとを見られるようになってきます。
それは特に、私が専門とする「組織開発」において、顕著です。
ときどき、「この組織は、美しいな」と思うときがあります。
まったくもって主観的で抽象的な表現ですが、それはどんなところで感じるのか?
例えば、
・社員が、まったく構えず、会社の理念を自分オリジナルの言葉で表現できる。
・打合せやメールに、「やらされ」「お仕着せ」ではなく、「したい」「やりたい」で言葉や文面が一貫されている。
・打合せ時、上司と部下がほとんど対等に会話している。
・「周りの反応」「上の判断」を待つまでもなく、「私はそれが好き」とまず言える。
・訪問した際に通される部屋のインテリア、出される食器、使われているPCなど、目に入るものすべてに、意図されたデザインがある。
・Zoomなど、オンライン時の映り方や背景に、気遣いや統一感がある。
などなど。
社員の方たちにとっては無意識でやっていることかもしれないけど、
そこには「経営側のセンスが行き渡っている」と、思わざるを得ないのです。
■美意識の高さは感染する
美意識とは、自由な主観によって働く意識、
つまり「自分だけの受け止め方」から生まれるものです。
そして、美意識は、人に感染します。
美意識は、経営者が「何を美しいと感じるか」から生まれる、言葉・行動によって、外に現れます。
言葉や行動に現れれば、それは社員に影響を与えます。
例えば、美意識の低い経営者がいるとします。
その会社ではきっと、「美」というものが意識の外にあるので、
自分の感性を信じることができず、
「わかりやすい答え」ばかりを探し、
誰もがもっているモノにすがり、
自分のことが信じられなくなる。
いわゆるステレオタイプが量産されていくということは、想像に難くありません。
たぶん、ですが、
職場も雑然としていて、
古いOSのパソコンを使い、
人にも仕事にも無関心で、
会議も無駄に長いわりには、最後は上席の一言で決まり、
指示や依頼されたことに反射的に、疑問なく従う。
そんな感じになるのではないでしょうか。
無意識でやっているこうしたことは、
その組織の「風土」として、やがて外部から
それなりの評価を食らってしまうかもしれません。
政治家や経営者のセンスのない失言は、命取りであることは間違いありません。
が、社員ひとりひとりで、外で起こすセンスのない言動。
これらすべてが、その組織から生まれたものである、ということです。
そう考えると、経営者/リーダーにとって美意識を育てることは、
長い目で見ると、組織の死活問題にすらなりかねませんね。
■美意識を育むには?
普通、人が美意識を育むためには、「美しいもの」に触れることが大切です。
アートに触れたり、自然に溶け込んだりしながら、「あ、これは美しい」と思う感性を呼び起こすことから始めることが、一般的です。
そういったことから、組織にとって、社員の感性を磨くためには、
まずは、経営者自身が、美意識を言動に昇華させること。
そして、社員に「答えのない問題」に向き合わせることです。
上席から「これが正解なんだ」と言われ続けてきた人たちにとって、なにより辛いのは、「自分で考えろ」と突き放されることです。
しかし、正解を与え続けている限り、社員に感性は育ちません。
■組織にとってアートとは何か?
それは、
「答えが見つからないかもしれないが、どこか興味がそそられる問題」
です。
つまり、「問い」です。
社員の想像力、思考力をしなやかに駆使して、感性を伸ばしていく。
そのために経営者は、簡単には答えの出ない「問い」(つまりアート)を、どんどん社員に投げかけることです。
私は、自分の仕事の最大のミッションのひとつは、
「人の美意識を刺激すること」だと自覚しています。
経営者/リーダーが感性を磨き、創造力を備えることは、
結局は、組織に高いレベルの美意識として、感染していくものです。
この、正解のない時代。
私とともに、感性を刺激し、自分と組織のために磨いていきませんか?
そうした試みを、私はこの8年目、どんどん試みていきます。
これからも、よろしくお願いします。