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今こそ、「エモい」の意義を問い直す。心震わすエモーショナルな楽曲10選。

「エモい」という言葉が、一般的な用語として広く使用されるようになったのは、いつからだろうか。

この言葉がバズワードとして蔓延るたびに、語源の一つである「エモーショナル」という意味合いから乖離が生じているように感じる。

思うに、本来、「エモい」という言葉が示そうとしている心の在り様は、単純な喜怒哀楽でなければ、単なる感情の押し売りや安売りによるものではない。

あくまでも僕の定義だが、本当に心を震わせるようなエモーショナルな表現は、そのまま僕たちに、哀しみや逆境を突破するための力を与えてくれる。

理由も根拠もない覚醒感。真っ直ぐに現実と向き合うための勇気。絶望の淵から立ち上がるための希望。そうした眩い可能性が、「エモい」とされる表現には宿っているのだ。

僕は、そんな音楽に救われているからこそ、「エモい」という言葉だけでは表し切れない心の動きを、少しでも言葉にしていきたい。

今回は、この数年の間にリリースされた楽曲の中から、僕の思うエモーショナルな楽曲を10曲セレクトした。

この記事が、あなたが新しい音楽と出会うきっかけになったら嬉しい。


米津玄師/TEENAGE RIOT(2018)

《煩わしい心すら  いつかは全て灰になるのなら/その花びらを瓶に詰め込んで火を放て  今ここで/誰より強く願えば  そのまま遠く雷鳴に飛び込んで/歌えるさ  カスみたいな  だけど確かな  バースデイソング》

壮絶な感情の爆発。いわゆる「ロック」という表現フォーマットでしか表し得ない心の叫びが、この3分45秒に込められている。今やJ-POPシーンの王座に君臨した米津玄師だが、彼の根底に流れているのは、やはり「ロック」のDNAなのだ。


欅坂46/エキセントリック(2017)

《I am eccentric 変わり者でいい/理解されない方が  よっぽど楽だと思ったんだ/他人の目  気にしない  愛なんて縁を切る/はみ出してしまおう  自由なんてそんなもの》

「反抗」と一言で表してしまえばそれまでだが、その激情の裏には、極めて繊細で内省的な想いが息づいている。それが、決して青春期に特有の感情ではないことを、この楽曲は、僕たち大人へ教えてくれる。


King Gnu/Flash!!!(2018)

《間違いだらけの人生が/光を見失わせる  tonight/一瞬でいい、今だけでいい/逆らって》

この全能感、この覚醒感、本当に凄い。再生ボタンを押すだけで、一瞬にして新しい自分へ生まれ変わるような未知の体験が待っている。技巧派と称されることの多いKing Gnuだが、彼らの表現の本質は、そのエモーショナルな魂の叫びなのだ。


Official髭男dism/イエスタデイ(2019)

《遥か先へ進め  幼すぎる恋だと/世界が後ろから指指しても/迷わずに進め  進め  2人だけの宇宙へと/ポケットの中で震えたこの手で今君を連れ出して》

透徹な祈りと願い、そして、揺るぎない覚悟。鮮烈な決意表明を音楽に託したこの曲は、やはり「恋愛」とエモーショナルな楽曲の抜き差しならない関係を証明しているように思う。


Aimer/Black Bird(2018)

《愛されるような  誰かになりたかっただけ》

この壮大なロック・バラードは、全てのリスナーが心の内に秘める不安や葛藤を、力強く抱きしめ、大空へと飛翔させていく。楽曲のラストに訪れる、この究極のパンチラインにとにかく痺れる。


amazarashi/空に歌えば(2017)

《虚実を切り裂いて  蒼天を仰いで  飛び立った永久/空に歌えば  後悔も否応無く/必然  必然  断ち切るには眩し過ぎた  未来へ、足掻け》

amazarashiは、「言葉」のバンドである。あらゆるワードやラインに、秋田ひろむの魂が刻印されていて、だからこそ、この3分38秒の音楽体験は果てしなく濃厚なものになるのだ。


BiSH/プロミスザスター(2017)

《答えは神様だけが知ってる/don't you think every time/あの空を染めてけ》

あらゆる枠を取り払い、どんな障壁も突き破る。真に心を動かす音楽は、そうしたブレイクスルーの可能性を僕たちに示してくれる。あまりにも直情的な決意のロック・チューンが、彼女たち自身の心情と呼応していることを思うと、思わず胸が熱くなる。


Eve/白銀(2019)

《ただ  ただ  このまま終わりにしたくないんだ/刹那的な物語を今/ゆこう》

僕たち一人ひとりに与えられた生命の力が、精一杯に躍動する時の鮮やかな輝き。そのダイナミズムをそのまま表すかのような展開が堪らない。「エモい」という言葉が、「青春」を讃えるために用いられることが多いのも、やはり納得がいく。


ヨルシカ/心に穴が空いた(2019)

《小さな穴が空いた/この胸の中心に一つ/夕陽の街を塗った/夜紛いの夕暮れ》

ヨルシカの楽曲、そしてアルバムは、毎回のように深遠な「物語」を僕たちに伝えてくれる。そして、その「物語」が、suisの清廉な歌声によって紡がれる過程で、一人ひとりのリスナーが胸に抱く等身大の感情が、優しく等しく肯定されていく。彼ら・彼女らの表現に、心を救われるような経験をした人は、きっと少なくないと思う。


花譜/夜が降り止む前に(2019)

《あなたにはわからないわ/何一つ聞こえないや/「今まで」と/「これから」は/かき乱した夜に/消えていけ》

僕が2019年に出会った作品の中でも、この曲の破壊力は桁違いであった。巷でバズワードとなりつつある「エモい」という感情に、もう一度くっきりとした輪郭を与える彼女のフラジャイルな歌声に、強く心を震わせられてしまう。



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