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UVERworldは、僕たちの「ロック」を超越する

【UVERworld/『UNSER』】


UVERworldは、誤解されている。

彼らが「ROCKIN'ON JAPAN」の初表紙を飾った2013年6月号のインタビューにおいて、TAKUYA∞は次のように発言していた。

「僕はUVERworldっていう名前を聴いて勘違いする人たちに対して、そんなに不思議だとは思わないんですよ。そういう人たち、ほんとにたくさんいる。名前は知ってるけど音楽聴いたことないって人がほとんどだと思うんですよ。俺はそれをチャンスだと思ってる。」

そして、渾身の所信表明とも呼ぶべき"REVERSI"において、彼は高らかにこう宣言した。

《どうしても僕を認めたくない全ての人に/心から感謝を捧げるよ/敵も味方も その存在に平等に価値を感じる/でも白黒つけようか》

一度は受け入れられたはずのJ-POPシーンと決別を果たしながら、そして、未だ見ぬ「あなた」と出会うために未開のフィールドを開拓しながら、UVERworldの6人は孤高の闘争を続けてきた。

しかし、それもここで終わりだ。

正真正銘の最高傑作にして、未知の次元へ突入したことを証明する第2のデビューアルバム。

「ロックの時代は終わった」と叫ばれて久しい2010年代の終わりに、時代の必然と、揺るぎなき信念と確信、そして眩い希望を一つに繋げて打ち立てた、全く新しい「ロック」の金字塔。

「俺たちの答え」という意味が込められた10thアルバム『UNSER』は、つまりそういう作品だ。

本作でUVERworldが成し遂げた歴史的快挙を、もう誰も無視することはできないだろう。


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脳天を貫く重厚なビート。

幾重にも折り重なる極彩色のシンセレイヤー。

鮮やかに視界を切り開くクリアな音像風景。

そして、ロック/パンク/エレクトロ/トラップ/R&B/ヒップホップといった無数のジャンルを横断しながら、一つの音塊として渾身の一撃を叩きつけ続ける怒涛のミクスチャーサウンド。

それら全てが組み合わさった時の爆発力と高揚感は、はっきり言って前作までと比べようもない。そして、渾然一体でありながら、驚くほどにシンプルに洗練されたサウンド・フォルムは、ただただ、圧巻である。

世界のポップ・ミュージック・シーンの最先端と直接リンクを果たす「先鋭性」と、全方位へ炸裂する多彩な音楽的要素をポップな形で結実させてみせる「大衆性」。

その掛け合わせを、これほどまでに高度な次元において実現させた日本のロックバンドを、僕は他に知らない。

広大に飛翔する「ロック」、いや「音楽」の可能性を、心から信じさせてくれる作品、あまりにも稀有だろう。

この時代におけるロックバンドの正しい在り方を示した彼らの功績に、僕は最大限の敬意を払いたい。



そしてやはり、UVERworldの音楽の真髄は、そこに込められた熱きメッセージだ。


《数を求めれば失うもの 抱える価値などないもの/少し報われた昨日に 戻りたいなんて思わなくていい/今も目指す場所は あのゲームの背景 描かれてるだけで辿り着けないような/そんな場所じゃない あともう少しだろう/恐れずDrive さあ いざ行こう》("Making it Drive")


《それをどれだけ長く/創造的に考えることができるか/ゆっくりと着実に急ぐ/そんな矛盾を抱えつづけ/何かを待つだけの時間なんて短い方がいい/ここに来て最大の武器は/全ての苦い想い出とかいた恥/本当の自由などない/ならばこれはそれを否定する為の旅路》("Touch off")


《振り向かずグッバイ/僕を一人にした世界を追い掛けることは無い/善悪よりもずっと/その命何に使うか明確に出来た者が残る》("GOOD and EVIL")


ここで歌われる在るべき生き様は、他でもないUVERworld自身が懸命に体現し続けているものである。

だからこそ、この楽曲たちは、鮮烈なメッセージソングとして恐ろしいまでの強度を誇るのだ。そしてだからこそ、この楽曲たちは、今、UVERworldに初めて出会った「あなた」の心に突き刺さるのだ。

そうだ、彼らの闘いは、まだ終わっていない。新しく出会った「あなた」と共に、またここから始まるんだ。



なぜ彼ら6人は、今作『UNSER』の制作において、前人未踏の茨の道を歩み続けてきたのか。

混迷を極める音楽業界のためだろうか? 多様な音楽を浴びるように消費し続ける音楽リスナーのためだろうか? 頼りにすべき指針を失くした後進のロックバンドのためだろうか?

いや違う、UVERworldが変革を目指すのは、何よりも「ロック」そのもののためだ。

僕たちが愛する「ロック」を次の時代へと力強く更新するために、UVERworldは、その手で、その足で「ロック」を超越したのだ。

そうだ、長き音楽史を振り返れば、いつだって「ロック」は、そうやって進化を遂げてきたんだ。

だからこそ、

UVERworldは誤解されている、

そんな季節は、2010年代で終わりにしよう。

この国に生きる一人のロックリスナーとして、彼ら6人が完全無欠の新作を完成させたことを、僕は心から誇りに思う。

そして、彼らが先導する2020年代の「ロック」の未来は、光輝かしいものになると確信している。

何度でも断言しよう、『UNSER』は、2010年代のロック史に刻まれるべき歴史的傑作だ。

さあ、UVERworldの「ロック」と共に、次の10年を迎え撃とう。



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