見出し画像

続・ミッチーの私服

どうやら私は、スーツフェチであるらしい。
転職したての彼氏から先日、「自己紹介で使えそうな俺の写真ない?」とLINEがきた。
あるともさァァ!」と勢い込んで写真フォルダをスクロールしたら、スーツを着た彼ばかりが目に飛び込んできた。

……解せぬ。
彼は春夏秋冬、パジャマ日和なのに。
あまり出社しなくてもよい会社からほぼリモートの会社に移った彼は、いまやべらぼうに多くの時間をパジャマで過ごしている。
たまにオンラインの打ち合わせに出席するときは上半身だけシャツを羽織り、散歩に誘うとそのシャツの下にスラックスを履く。
にもかかわらず、私のフォルダにはパジャマと同じくらいか、それを若干上回るくらいのスーツ姿の彼の写真が格納されている。

彼がスーツを着ていると、ついつい生まれてはじめてパフェを頼んだときみたいなテンションであらゆる角度から写真を撮りたくなってしまうからだ。
そんな己のはしゃぎっぷりを振り返って実生活からかけ離れた写真フォルダに納得し、よさげな写真を何枚か選んで彼に送った。

私が送ったなかには、外出先で撮った私服の彼の写真もあった。
写真フォルダのなかでスーツとパジャマに挟まれた、ちょいと渋めな私服姿(お父さんのお下がり)。
私服といっても、種類は限られている。
やや肌寒い日は、グレーの長袖のシャツに黒のスラックス。
暑い日は、水色の半袖シャツにチェック柄の濃い灰色の短パン。
箪笥から新たな服を出すのが面倒だと、たった一着を洗っては着て洗っては着てを繰り返している。

別に普段はそれでもいいのだけれど。
数年に一度でいいから、全力にイケメている彼の姿を見てみたい。
だって彼は、ミッチー(及川光博氏)に似ているのだから(我が弟談)。
いや、より正確に言えば「ミッチーから華やかなオーラを取り去り、年齢をもう少し上げた感じ」ではあるのだけれど。
とはいえせっかくスッと通った鼻筋や涼しげな目元を持っているのだから、「スーツ姿」「パジャマ姿」「ゆる私服」にもう一つ、「キメ私服」をファッションコレクションに加えたっていいじゃないと思っているわけである。

彼氏と顔の雰囲気が近いから私服を参考にさせてもらおうと思ったのに、ミッチーったらどんなときもキメキメだったの!
ひょっとして、私服がカメラに写らない呪いにでもかかってるんか?

以前「ミッチーの私服」と題してそんなことを書いたところ、コメント欄やTwitterにて彼のファンである「ベイベー」や「男子」から数々の証言が寄せられた。

私がどれだけGoogleで検索してもほとんど得られなかった情報がまたたく間に集結するさまは、ベイベーたちの気前のよさやミッチーの服装のブレなさ、そしていかに彼が愛されているかを力強く物語っていた。
「ひょっとして、ミッチーの私服もイケてないのでは?」なんて、失礼な疑いをかけてごめんなさい。

いただいたコメントは、感謝とお詫びをたっぷり込めてきっちりと合掌してからスマホのメモ帳にコピペした。

そしてそのコピペをもとに箇条書きにまとめたのが、こちら。

【購入先】
・スタイリストさんが選んでくれたものの中から気に入ったものを私服にしている

【シャツ】
・昔はツルツルの柄シャツ(唐沢寿明氏いわく「カーテンみたいな柄」)だった
・最近はツアーTシャツ+昔よりは派手ではなくなった柄シャツを羽織る
・第三ボタンまで外した襟付きシャツ

【パンツ】
・黒のスリムパンツ
・黒のスラックス
・細身パンツ
・デニムはごくたまにしか履かない。履いてもブラックデニム系

【靴】
・黒の革靴
・先の尖った革靴
・スニーカーを履くことはほぼない

【眼鏡、ハットなど小物系】
・黒縁眼鏡
・サングラス
・黒のハット
・ボルサリーノハット(つばの広いフェルト地の帽子)

服の購入先から全身のコーディネート、そして「誰からこんなふうに評されていた」といった情報まで、知りたかったのに知り得なかったことを惜しみなく教えてくださったみなさまには、もう本当に感謝してもしきれない。

そして誰も「ズボン」って言わないんだなというところにも、ひそかに感動している。
実は私は、いまだにパンツ呼びに慣れていない。
初めて聞いたときは「下着のパンツとアクセントは違うけれど、でも口に出しにくいわ…!」と恥ずかしがっていたし、最近は自分のズボンはパンツと呼ぶには格好よさが足りないのではないかと気になってついズボン呼びに固執してしまう。
だから今回みんなが口を揃えて「パンツ」と断言するのを聞いて、やっぱりミッチーが履くのは「パンツ」なんだなとそのおしゃれっぷりに深く頷いてしまった。

ミッチーの私服といえばこれ!」とそのコーデがこれだけベイベーたちの中でしっかりと定着しているのもすごい。
これを着て町を歩けばベイベーから「おっ!今日ミッチーコーデしてるね!」って声をかけてもらえたりしそうな雰囲気すらある。

けれどミッチーは、やはりスターである。
私服が判明したところで、そうやすやすとは真似できない。
特に柄シャツボルサリーノハットって、なかなかにハードル高くないですか……?
柄シャツは顔立ちや体格によってはチンピラに見えてしまうだろうし、ボルサリーノハットなんて一歩間違えば手品師だ。

これを彼に着せるために、どうしたらよいものか……。
真剣に作戦を練りながらミッチー関連のツイートを眺めているうちに、いつしか私のタイムラインにはベイベーたちが上げるミッチーの写真やイラストがなかなかの頻度で現れるようになった。

それをひとしきり観賞したあと、私服を教えてくれたベイベーのお一人が教えてくれたワンマンショーのYouTubeを観ながら「あー、麗しいなぁ…」と思わず独り言を漏らす。
それまでは彼がこんなに歌って踊れる人だとは知らず、やたらキラキラした、ファンの多い俳優さんだなぁくらいに思っていたのに。
動画をもう一度再生しようか、それともワンマンショーの感想ツイートを探そうかと迷ってふと、自分がミッチーの沼にハマり泉につかり(注:ミッチーに魅了されることは「沼にハマる」ではなく「泉につかる」というそうな)かけていることに気づいた。

いやいやいや、ちょっとたんま!

ここで私がベイベーになったら、まるで彼氏の顔目当てで付き合っているみたいじゃない!
それは違うのだ。
私はミッチーに似ているから彼氏が好きなのではなく、まず彼氏が好きで、その彼氏がミッチーに似ているのだという矢印の方向を、あらためて強く肝に銘じた。
ミッチーのコーディネートに近づけるべく連日「メンズ 柄シャツ」「ボルサリーノハット 黒」と検索しているのだって、別に彼にミッチーになってほしいなんて大それたことを考えているわけではなく、あくまでも彼の顔立ちに合ったコーデを見つけるための調査なのだ。

そう、彼は彼。ミッチーはミッチー。
何度もそう自分に言い聞かせながらも、つい英単語帳を開く受験生のような頻度でミッチーの画像を見漁ってしまう。もうどうしようもない。

私のベイベー化はさておき、彼にミッチーコーデを着てもらうための方法を考えなくては。
スラックスや革靴はともかく、柄シャツやハットのような彼の普段着にないアイテムを身につけてもらうには、そこそこに工夫が必要だろう。

たとえば、一緒に買いものに行って「あのシャツどう?」と勧めたとしよう。
……「いや、俺には派手すぎるわ」と断られ、着慣れた色のシャツをレジに持っていかれる未来が見える。

彼に似合いそうなシャツをネットで注文して、プレゼントとして渡すのは?
……一応着てはくれるだろうけど、サイズが合わなかったら悲劇だし、思っていたイメージからかけ離れていたら悲しい。

どうしたものかなぁ。
腕組みして考えていたら、ひとつ妙案が浮かんだ。
もうすぐ私は、28歳の誕生日を迎える。
最近誕生日祝いは何がいいかと尋ねられて特に浮かばず、「まぁ、一緒においしいもの食べよう」と答えてしまったのだけれど。

おしゃれな彼氏」をリクエストすればいいのだ!
「おしゃれ」とざっくり要望を出したところで、おそらく彼一人ではシャツを選べまい。
一緒にお店を見て、私がさりげなくミッチー寄りにエスコートすれば、そして「このハット、めちゃ似合うよ!」とボルサリーノハットをかぶった彼を褒め称えれば……なかなかのミッチーもどきが完成するはずだ

そうして選んだコーディネートを気に入ってくれたら一番だけれど、別にお誕生日限定でもいい。
その貴重な一日に私はあらゆる角度から写真を撮って「キメ彼氏フォルダ」を作り、その後長きにわたって楽しむことができるからだ。
渾身のおしゃれ彼氏と過ごす誕生日、なんだか素晴らしいものになりそうな予感。

***
ミッチーシリーズ(?)第一弾はこちら。

ついに服を買いに行きました。


この記事が参加している募集

私の推しキャラ

週末プロジェクト

お読みいただきありがとうございました😆