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短編小説

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普段noteでは日記ばかり書き散らかしていますが、時折人様の企画に乗っかって短編小説を書くようになりました。創作って、恥ずかしくて楽しい。
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#ショートショート

たぐり寄せる物語

たぐり寄せる物語

短編小説を書きはじめたのはごく最近、今年の初夏の「ピリカ☆グランプリ」への応募からだった。
リーダーのピリカさんはもちろん、shinoさん、カニさん、戌亥さん、ねじりさんと私が普段楽しく読んでいる方々が主催だったので、思い切って創作の世界に踏み出してみたのだ。
思えばさわきゆりさんの文章に出会って「こんなに短い文章でこんなに濃いものを伝えられるのか!」とびっくりしたのも、このグランプリがきっかけだ

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【ピリカ文庫】チョコレート【ショートショート】

【ピリカ文庫】チョコレート【ショートショート】

「たでぇま〜」
間延びした声で、父が帰ってきた。
外は雨だというのに、だいぶ呑んできたらしい。
両肩に下げたエコバックには、半額の焼き鳥やコッペパンがぎゅうぎゅうに詰まっている。
それをどさりと床に置くと、父は洗面所へ手を洗いに行ってしまった。

「あ、そうだ。これ」
居間に戻ってきた父はズボンの前ポケットから、何かを二つ取り出した。
受け取ってよく見ると、それはひしゃげたチョコエッグだった。父の

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【ショートショート】カルピスの寝息

【ショートショート】カルピスの寝息

あなたはだんだん眠くな〜~る
あなたはどんどん眠くな〜~る

目の前で揺れる五円玉を一心に見つめるフリをしながら、私は迷っていた。

弟の歳三が「さいみんじゅちゅにかけてあげる!」と小走りで和室に駆け込んできた時、私は「夏休みの友」という名の敵に向かって猛然と鉛筆を振るっているところだった。
夏休みはあと二日しか残っていないというのに、ちゃぶ台には手つかずの読書感想文用原稿用紙と、半分弱までし

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