「環境」「チーム」脱退編③

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「環境」からの脱退を師匠に認められた後、Aがどうしても最後に話したいというので、五反田の喫茶店で再度話しました。そこは奇しくも、私が始めてA、Bと語り合った喫茶店と同じ店でした。

Aには師匠以上に恩義を感じていました。というのも、当時やる気のないどこにでもいる会社員だった自分を誘ってくれ、人見知りが解消した、という点では、この3か月も悪いものではないな、と思っていたからです。自己投資をさせることが目的であると分かっていても、「本気でビジネスパートナーとして一緒にやろうと思っていた。今でも常守には可能性があると思っている」というAの言葉には心を動かされました。

最後に「俺は常守が変われる可能性を信じている。常守がこの先の人生で、変わることをもう諦めるというのなら、もう何も言わない。少しでも変わりたいと思うなら、やっぱり一緒にやりたい。どうかな?」と言われました。変われるタイミングが「環境」に所属している「いま」しかない、というのは詭弁だ、と思う一方で、確かに自分を変えられる可能性のある出会いというのは、この先そうそう無いかもしれないとも思い、ここでも迷いました。

ただ、ここに至って私が気づいたのは、自分を変える可能性を「出会い」に求める限り、結局自分は変わることはできない、ということでした。自分に自信がなく、人見知りだった自分。「環境」の仕組みに乗っかって成功していく自信がない自分。師匠が喝破した通り、私は確かに自信がなく、すぐに責任転嫁しがちな性格です。それが嫌で、変わりたいと願い続けていましたが、変わるためには、まずは自分の自信の無さ、責任転嫁癖と逃げずに向き合うしかないのだと、ようやく気がつきました。

私は言いました。「正直、この先また変わりたいと思う瞬間が来るかもしれない。二度とこないという自信はない。でも、自分の自信の無さは、チームに入る前も入った後も、変わらず残り続けた自分の個性だ。だったら、自分を変えることは諦めて、個性を受け入れながら、自分の人生が少しでも良くなるように自分の管理下にあることに取り組んでいきたい」と。Aは悲しそうな顔で頷くと、「また会おう」と言って去っていきました。

今にして思えば、そもそも大した夢もないのに、なんとなく起業している師匠についていけば、今より良い暮らしができるんじゃないか、という、甘ったれそのものの考えで「環境」に関わってしまったのが間違っていました。「自分が源」と教えられ、弟子入りもハードワークも自分で決めたと思っていましたが、そもそもの動機が完全に師匠任せ、組織任せではできるものもできません。だからこそ、「ここにいて頑張ればなんとなく収入が上がる」という根拠のない希望が自己投資のシステム説明によって打ち砕かれたときに、一気に自信を無くしてしまったのだと思います。

以上が、「環境」に勧誘されてから脱退するまでの私の物語です。「環境」の仕組みについては別途考察しますが、この文章を読んだ方が、マルチ商法紛いにはこのような勧誘方法もあり、こんな人が洗脳されるのか、と他山の石にしていただければ、著者として嬉しい限りです。

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