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有料記事まとめ

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#短編小説

砂時計で時を刻んで

 バイトが終わって帰り道とぼとぼ歩いて家に着いた。ただいまーと言いながら、ドアを開ける。母親が険しい顔で待っていて、こう言い放った。「アンタ昨日混血の色男と街歩いとったやろ?隆(たかし)くんはどうしたん?あんな睦まじく話しとって、あれは浮気やろ。」全く身に覚えのなかったわたしは急いで弁解する。「あのね、高木さんはバイト先の社員さんなの!うちとは何の色恋の関係もない。お母さんなんなの、最近。ずっとそ

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安楽死救済制度でも救われない。

 20XX年、逼迫した介護による問題で知的障害や精神疾患を抱える者、後期高齢者の安楽死救済制度が法律にて確立された。杏奈は重い、生活に支障をきたすレベルの精神疾患を患っているので、この安楽死制度を受ける側となる。2週間、湖の近くのコテージで余生を過ごしたあと薬物投与で安楽死を図る。ずっと幻覚や幻聴に苦しんでいた杏奈はやっと解放されるんだという思いと、死への恐怖が拭えなかった。幻覚や幻聴って当事者は

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蛙化現象のお姫さま

 「え?支払いがPayPayだったから蛙化したの?嘘でしょ?だってあんた颯太先輩のこと半年くらい好きだったじゃん。まじか。」友達のマミコは呆れるくらい惚れっぽく飽きやすい。女友達の間でも評判の分かれる部分だった。「だってさ、好きな人にはカードでってスマートにお会計して欲しいじゃん!PayPay⭐︎って鳴るの余りにもカッコ悪い。なんか一気に冷めちゃった。好きだったけどさ。」

 マミコは色素の薄い茶

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戦争

 クタクタの足でなんとか玄関まで辿り着いて、ドアを開けた瞬間しゃがみ込む。プラスチックのパックに入ったポテトサラダをプラスチックのフォークでお皿に出さずにそのまま食べる。つまんないテレビ観ながら、時折目に入ってくる月を睨む。たぶん世界が滅んでしまうまでこんな生活を続けるんだろうな......

 あと一個ジェンガを引っこ抜けば簡単に崩れ落ちるだろうに、絶妙なバランスを保っている。その造形に大した美

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