砂時計で時を刻んで

 バイトが終わって帰り道とぼとぼ歩いて家に着いた。ただいまーと言いながら、ドアを開ける。母親が険しい顔で待っていて、こう言い放った。「アンタ昨日混血の色男と街歩いとったやろ?隆(たかし)くんはどうしたん?あんな睦まじく話しとって、あれは浮気やろ。」全く身に覚えのなかったわたしは急いで弁解する。「あのね、高木さんはバイト先の社員さんなの!うちとは何の色恋の関係もない。お母さんなんなの、最近。ずっとその調子やけん、気が滅入る。」少し機嫌を直した母は「そうなら良かったわ。アンタ婚約中やねんから軽率な行動は控え~。」そう言い残し去っていった。大きなため息をつく。確かに高木さんには口説かれたけどキッパリ断ったのだ。わたしは隆を愛しているから。太陽みたいに明るい性格に何度も救われてきた。茶色い髪をドライヤーで乾かしながら、日に焼けた肌に白い歯がきらきらと光る隆の笑顔を思い出す。中高6年間、サッカーをやっていたから、今でも真っ黒なのだ。6年間文化系で吹奏楽部のわたしとは正反対だ。肌もまっしろだしね。彼を思い出して多幸感に溢れながら、わたしは眠った。

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