つん

2005年11月生まれ、文章や詩歌・絵/(せいきゆりか)

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    ぼちぼち書いてます。中編・長編を書きたい。

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    詩を書いています。ゆっくりしていってね。

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    物を書きます……

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小枝散りゆく、つゆ知らず

既視感。  昔、私はこの近くに住んでいたことがあった気がする。なんとなく河の感じや道に見覚えがある。朧げなのは10年も前の記憶だからで、小学校に上がる前だった。まだ母と暮らしていたときだ。  この街は交通量の多い、広い大通りよりもうんと幅の広い運河が流れている。河は黒々としていてうねるように流れている。少し潮のニオイが混ざった運河特有の匂いがする。このニオイを嗅ぐのが日常になって暫く経つ。ここでは旧来、船と呼ばれている船の形とはだいぶ違う小さいビル群のような船が河を流れ荷物を

      • それは妖(あやかし)本の虫のおんな。

         彼から聞いた話から想像する限り、彼女は前髪を長くたくわえて下ろしていて髪は鬱陶しい長さ、目は切れ長で陰気な雰囲気で足を引きずって歩いているイメージだった。実際、彼女に会った印象は濃い顔に眼力の鋭い丸い目が付いていて頬っぺたが丸く、キリッとした口元でカッコよくスタスタと早足で歩く女だった。前髪は左右に分けていたので丸いおでこがツヤっと光りを放っていた。しかし彼女が口を開いた途端、イメージは一転する。ひどく陰気で低い話し声だった。話すだけでこの場をしんと暗くするのはこの人くらい

        • 蛙化現象のお姫さま

           「え?支払いがPayPayだったから蛙化したの?嘘でしょ?だってあんた颯太先輩のこと半年くらい好きだったじゃん。まじか。」友達のマミコは呆れるくらい惚れっぽく飽きやすい。女友達の間でも評判の分かれる部分だった。「だってさ、好きな人にはカードでってスマートにお会計して欲しいじゃん!PayPay⭐︎って鳴るの余りにもカッコ悪い。なんか一気に冷めちゃった。好きだったけどさ。」  マミコは色素の薄い茶髪でピンクがかった白い肌を持ち瞳も薄いブラウンだった。うさぎみたいで可愛らしい見

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          女が母になるとき

           女は好きな男に従順だった。言われるがまま男根を口淫し精液を飲み干す。恍惚とした表情を浮かべ、男に気持ち悪いと殴られる。それでもヘラヘラ笑っていた。こんな男でも好きだったのだ。とにかくその男の家に入り浸り不埒な日常を送っていた女。気づけば男の子どもを妊娠していた。  堕ろせという男、泣きじゃくって産みたいという女。女はこの男の元を離れひとりでこの小さな命を育てる決心がついた。夜逃げみたいにして男から離れ小さな港町で暮らす。最初は簡単な内職をして過ごし、徐々にスーパーで働くよう

          女が母になるとき

          月明かり、盗人現る。

           月か明るすぎる夜、その少年は神のお賽銭をくすねた。今日食べるご飯にも困ってたからだ。草鞋などもなく裸足の足は傷だらけで、顔は土で汚れていた。近所の田圃を少し手伝い、なんとか食べ物を貰っていたが、弟や妹のご飯がない。まだ働けない小さな彼らを食わすためにはお賽銭をくすねるしか無かった。  その少年は神のお賽銭をくすねた。今日食べるご飯にも困ってたからだ。草鞋などもなく裸足の足は傷だらけで、顔は土で汚れていた。近所の田圃を少し手伝い、なんとか食べ物を貰っていたが、弟や妹のご飯がな

          月明かり、盗人現る。

          傷心小旅行

           旅の途中列車の中だった。ガタゴトとイーゼルの汽車が走る音がする。窓から陽の光が差す。眩しいが、同時に気持ちが良い。窓からは汽車の煙も同時に見える。夏代子は恋人と2日前に別れ弾丸で旅に出ていた。有名な温泉地で元恋人と行こうねと言っていた場所、文庫本を読みながらコーヒーを飲んでいる。思えばいつも彼は携帯を触っていて、あれは浮気相手に連絡をしていたのだろう。私には仕事の連絡と言っていたがそれは嘘だ。  クリスマスの日、サプライズで彼の家に遊びにいくと、浮気相手とセックス中の彼がそ

          傷心小旅行

          小夜のこと

           「身体が弱かった小夜を優先して美優にはいっぱい我慢させちゃったね。ごめんね。」そう眉毛を下げて謝るお母さんに「大丈夫だよ。私ちっちゃい頃結構楽しかったんだよ?お母さんのお手伝いしてたからさ料理と家事上手くなったし!」そう気にしてないことを伝える。笑顔が戻った母に安心する。  小夜は白血病だった。小さい身体で何度も辛い治療に耐えていて偉かった。幸い今は健康で元気だ。小夜とはよく恋バナをする。小夜は中学で同じクラスの松原くんが気になっているようで,バレンタインのチョコレートを一

          小夜のこと

          安楽死救済制度でも救われない。

           20XX年、逼迫した介護による問題で知的障害や精神疾患を抱える者、後期高齢者の安楽死救済制度が法律にて確立された。杏奈は重い、生活に支障をきたすレベルの精神疾患を患っているので、この安楽死制度を受ける側となる。2週間、湖の近くのコテージで余生を過ごしたあと薬物投与で安楽死を図る。ずっと幻覚や幻聴に苦しんでいた杏奈はやっと解放されるんだという思いと、死への恐怖が拭えなかった。幻覚や幻聴って当事者は孤独だ。誰にも感覚を共有できないから。この法案は他の先進国には糾弾されたが、でも

          安楽死救済制度でも救われない。

          ショートエッセイ

           充実してるようでしてない日だった。オジサンと海までドライブしに行った。アジの刺身定食を食った。オジサンにそのあとLINEで軽くセクハラされて嫌だった。そのあと彼氏とお話しした。電車の中では桜庭一樹を読んだ。なんとなくいつかバンドマンとセックスをしたことを思い出した。あれが私の初めてだった。    処女喪失したからって私は何も変わらんくて別に心は純粋のままだった。好きな人とするセックスは甘美なもの。バンドマンはキスがうまくて溶けてしまいそうになった。甘い夜もすぐに更けて、彼の

          ショートエッセイ

          エロティックな天使

           「私に男性器を刺しなさい。」衝撃的な言葉を女王様は言った。タケルは動揺していた。さっきまでムチで打たれているのを我慢していた矢先だった。「いやでも、今勃ってないし貴方も濡れてないでしょう?」顔を覗き込んで様子を伺うと彼女は私の息子を踏み、口淫し始めた。情けなく項垂れていた息子は勃起し彼女はその間に跨り、上下に動き始めた。彼女はとてもセックスが上手い。ただひたすら私はやられっぱなしで情けないことに喘ぎ声を上げていた。「や、やばい。イクッ。」精子がドピュッと音を立てて出るとスッ

          エロティックな天使

          シャボン玉 夏の夕暮れにシャボン玉をした。夕暮れに透けるシャボン玉がきれい。蝉と鳥が鳴く声がする。飛行機が空高くを飛んでいる。僕は裸足で屋上で寝転んでいる。ぬるい空気がまとわりついてそれが心地いい。僕は夏が好きだ。

          シャボン玉 夏の夕暮れにシャボン玉をした。夕暮れに透けるシャボン玉がきれい。蝉と鳥が鳴く声がする。飛行機が空高くを飛んでいる。僕は裸足で屋上で寝転んでいる。ぬるい空気がまとわりついてそれが心地いい。僕は夏が好きだ。

          恋と愛と三角形と

           「大学生で付き合う人なんかみんなヤリモクやろ。気持ち悪い。」啓太は冷めた目でそう言う。「いやわかんないよ。純愛をちゃんと育んでるカップルもいるかもしれないでしょ。」みなみが口を尖らせてそう言う。夢みがちなみなみとリアリストな啓太、「咲はどう思うの?」みなみに聞かれ、困ってしまう。私はお付き合いをしたことがない。  「私は男性と付き合ったことがないから分からないけど、高校生カップルに比べてヤリモクが多いのは確かだよ。セフレとかも大学生になったらできるじゃん、ね。」みなみが「

          恋と愛と三角形と

          砂時計で時を刻んで

           バイトが終わって帰り道とぼとぼ歩いて家に着いた。ただいまーと言いながら、ドアを開ける。母親が険しい顔で待っていて、こう言い放った。「アンタ昨日混血の色男と街歩いとったやろ?隆(たかし)くんはどうしたん?あんな睦まじく話しとって、あれは浮気やろ。」全く身に覚えのなかったわたしは急いで弁解する。「あのね、高木さんはバイト先の社員さんなの!うちとは何の色恋の関係もない。お母さんなんなの、最近。ずっとその調子やけん、気が滅入る。」少し機嫌を直した母は「そうなら良かったわ。アンタ婚約

          砂時計で時を刻んで

          物件探しは海辺のまち

           海から坂を上がって5分、少し高台にあるその家は赤瓦の屋根と漆喰で塗られた壁が眩しかった。その家は古い日本家屋ながら手入れが行き届いていて、庭の植木も控えめながら生き生きとしていて感じが良かった。不動産屋の話を聞く限り、仲の良い老夫婦が小ぢんまりと幸せに暮らしていたそうだ。先におばあさんの方が亡くなって後を追うようにおじいさんも亡くなる。 お子さんたちもこの家を受け継ぐことなく、不動産屋に渡してしまったそうだ。夏代子と史郎はこの家が気に入ったので買うことにした。中古の家なので

          物件探しは海辺のまち

          箇条書きにっき

          3時に起きる。 セブンで花火。 チャッカマンがないから花火できない。 食洗機しまった。 スペースでチョリと話す。10人くらい集まって大盛況となる。 はるくんと通話。洗濯物干した。 浅草の寿湯に行く。まさるのお店に移動、茄子味噌,素麺、お豆腐、スズキのお刺身を食べる。ファンタと烏龍茶を飲む。(通話繋げたままの)はるくんとまさるとわたしの3人で話す。 ミスドでチョコドーナツばかり買う。後ろに並んでいたイケメン中国人と仲良くなる。電車でも一緒になり、彼のプロフィールについて掘り下げ

          箇条書きにっき