ショートエッセイ

 充実してるようでしてない日だった。オジサンと海までドライブしに行った。アジの刺身定食を食った。オジサンにそのあとLINEで軽くセクハラされて嫌だった。そのあと彼氏とお話しした。電車の中では桜庭一樹を読んだ。なんとなくいつかバンドマンとセックスをしたことを思い出した。あれが私の初めてだった。
 
 処女喪失したからって私は何も変わらんくて別に心は純粋のままだった。好きな人とするセックスは甘美なもの。バンドマンはキスがうまくて溶けてしまいそうになった。甘い夜もすぐに更けて、彼の背中に抱きついて寝た。男の人の硬い背中は不思議と安心感があった。朝が来て二度寝三度寝をして昼だった。

 彼がお蕎麦を茹でてくれたのでそれを食した。ボソボソしていてあまり美味しくなかったけど、彼と食べれたのが嬉しくてニマニマしていた。彼はとてもカッコいい顔立ちだった。私は彼をじっと見つめるだけで幸せだったが、何?とキレ気味に言われるのが怖かったので自重していた。帰りのバスで見えた諏訪湖や山の景色があまりにも綺麗だったので泣きそうになってしまった。旅先で1人で見る美しい景色は心にひびを入れるナイフのように突き刺してくる。帰路私は心細くなりながらも何とか帰宅したのだった。

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