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トイプードルのミシン屋さん / 短い物語 #1


お月さまが目をつむり、
お星さまがにこにこ歌う
その先になり響く ミシンの音
ずずずずず うぃーんうぃーんうぃーん

暗い夜もお月さまに照らされて、
お星さまのきらきらの歌声に心がおどり、
今日もトイプードルのぽぉはミシンとリズムを刻む
ずずずずず うぃーんうぃーんうぃーん 
はい 完成
ちょっきん

できた できた ぽぉの手づくりハンカチ
たくさん作ったぽぉの手づくりハンカチ
気づけばお月さまもお星さまもすやすや寝てる
トイプードルのぽぉもなんだか ふわわぁと 眠たくなってきた
そのまま うとうと ひとねむり

静まりかえったミシンと心地よいトイプードルのぽぉのすーすーすー
そこにベイビープードルのママを求める うぇーんうぇーんうぇーん
トイプードルのぽぉはふと目を覚まし ベイビープードルをぎゅっと抱きしめる
にこっと笑ってまた眠るベイビープードルをパパプードルの隣にそっとそっとおろす
そのまま そっーと そっーと ミシンに戻る
後片付けをしよう、
そう思ってミシンに戻った
するとそこに 暗い暗い夜にその姿を隠したようなまっくろのハムスターがいた

「どうしたの?」
まっくろのハムスターは じーっとぽぉのハンカチを見たまま何も答えない
ちくたく ちくたく ちくたく 不思議な時間
だけどトイプードルのぽぉはあることに気づく
まっくろのハムスターは怪我をしていた
トイプードルのぽぉは さっき作ったばかりのハンカチでそっとまっくろのハムスターを包む

トイプードルのぽぉのハンカチの中
まっくろのハムスターはあったかいと感じる
まっくろのハムスターのからだとこころは痛い
だけど トイプードルのぽぉの優しさでぽかぽかっ ぽかぽかっとあたたかくなってきた
そうしてそーっとゆっくり話し出すことができた

「ぼく、まっくろだから夜にみんなに踏まれるんだ…

今日もまた踏まれたの…
いたくて、いたくて…

ぼくはここにいるよって、わかってもらえないの…
暗い夜の中ではぼくはいないのと同じなんだ…

かなしい…
そして いないと思って踏まれると痛くてもっともっとかなしい…

….. さっき お月さまの光に照らされて、
お星さまの歌声と気持ちいいミシンの音が聞こえたの。
その先にあなたがいた。
そして、そのもっと先にこのとっても綺麗なハンカチがあった…
ぼくとは違う綺麗な色と模様だなぁって、そう思うと近くで見たくなったんだ…」

まっくろのハムスターのこころはからだの黒色よりもっともっと黒くて悲しかった
自分が黒色じゃなければよかったと思った
黒色なんて大嫌いだって思った

そんなまっくろのハムスターにトイプードルのぽぉがそっと箱を取り出して渡す
「この中から好きな布を選んでね。
わたしがあなたがここにいるよってわかるように目印の服を作ってあげる。」
そうトイプードルのぽぉは言った

まっくろのハムスターは嬉しかった
だけど箱の中の布はどれも綺麗すぎてまぶしくて心がぎゅーっと痛くなる
だって ぼくはただの黒色
暗闇ではみんなに気づいてもらえないただの黒色
そんな僕に似合う布はこんな綺麗な布の中にない
そう思うと心が痛かった
また悲しくなった
涙がこぼれそうになった

そのとき
「黒色はね、どんな色ともどんな模様ともばっちり合うんだよ。それに黒色はね、他の色を引き立てたり いろんな模様をもっと綺麗に映し出すことができるんだよ。これは黒色の素敵なチカラなの。」
トイプードルのぽぉはそう言って、またそっと箱をまっくろのハムスターに渡す
「だから、まっくろのあなただからこそ この箱の中の全部があなたに似合うのよ。」
と言いながら

まっくろのハムスターは知らなかった
この黒色が他の色を引き立てることができるなんて
この黒色がいろんな模様をもっと綺麗に映し出すことができるなんて
そんなこと知らなかった
まっくろのハムスターはもう悲しくない
まっくろのハムスターは好きな布を堂々と選べた

トイプードルのぽぉの紡ぐ音
ずずずずず うぃーんうぃーんうぃーん
ずずずずず うぃーんうぃーんうぃーん
もう少しもう少し
あとちょっと
ずずずずず うぃーんうぃーんうぃーん
はい 完成
ちょっきん

できた
できた!
トイプードルのぽぉが作った世界に一つのまっくろのハムスターのためだけの服
まっくろのハムスターが自分で選んで自分のためだけに作ってくれた優しい服
トイプードルのぽぉの言う通り、
まっくろのハムスターがその服を着るとその服の色と模様は一段ときらきらと輝いた
まっくろハムスターのまっくろのチカラ

トイプードルのぽぉのミシンの音で目を覚ましたお月さまとお星さま
にこにこ笑ってまっくろのハムスターに光を照らす
まっくろハムスターはここにいるよ、って
トイプードルのぽぉの優しい服を着たまっくろのハムスターはこの夜 だれよりも綺麗に光っている

トイプードルのぽぉが作ってくれた優しい服を着て、自分を好きになれたまっくろのハムスターはきらきら輝きながらとっても素敵な笑顔で笑っている
もうからだもこころも痛くない
トイプードルのぽぉの優しさが治してくれた
トイプードルのぽぉの優しい服が癒してくれた

トイプードルのミシン屋さん
トイプードルのぽぉは今日もこうしてミシンとリズムを刻む
ずずずずず うぃーんうぃーんうぃーん

トイプードルのぽぉがミシンとリズムを刻む
それは誰でもないあなたのためだけに
あなたのために優しさを紡ぐために
そんなトイプードルのぽぉのミシン屋さんがここにある


the end…*                            つな


つな とは

Thank you for reading so much.
See you again.
Big love.🤍🕊️

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