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ケアマネジャーは誰の味方か?(11)~2024年度制度改正に向けた部会意見を読み解く~

ニッセイ基礎研究所主任研究員
三原岳

本コラムの第1回では、ケアマネジャー(介護支援専門員)を取り巻く環境を俯瞰する図を示しつつ、第2回第3回ではケアマネジャーに期待される「代理人」機能を考えることで、多職種連携の必要性を指摘しました。さらに、第4回第5回はインフォーマルケアを巡る話題、第6回は介護サービス事業者との関係で生じる「公正中立問題」、第7回第8回第9回は市町村との関係を考察しました。

第10回から少し表題とズレる面が出て来ますが、次の2024年度制度改正を占うため、介護保険制度の現状を概観しました。第11回は昨年末に示された社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の介護保険部会の意見書を読み解きます。


先送りには2種類

年明け後も議論(朝日新聞)、結論を先送り(日本経済新聞)、来夏までに先送り(毎日新聞)、負担増結論先送り(産経新聞)、負担増多く結論出ず(東京新聞)…。2024年度制度改正に向けた介護保険部会の意見書が固まった翌日(2022年12月20日)の紙面では、こんな見出しが躍りました。

つまり、負担と給付の見直しに関して、多くの論点が先送りされたことを伝える記事です。その後、細かい修正を経て、部会意見は2022年12月20日に正式決定されました。

(本稿では初出に限り、関係するリンク先を貼りますので、お時間がある時に現物でご確認下さい)

これは過去のパターンと比べると、異例の対応といえます。従来は「制度改正の2年前に介護保険部会で意見書公表→制度改正の前年に法改正、報酬改定→制度改正」という流れを辿っていましたが、部会として一部の案件については結論を先送りしたのです。

しかし、先送りには「2027年度にも始まる次の次の制度改正に先送り」「2024年度に控えた次の制度改正に向けて、2023年度に先送り」という2種類に分かれます。

このため、2024年度の次期制度改正を占う上では、部会意見を丁寧に見ていく必要があります。その際には、役人の難解な言葉遣い(いわゆる「霞が関文学」)を理解したり、他の省庁の動きも加味したりすることも求められます。以下、霞が関文学や役所同士のパワーバランスの痕跡を読み解くことで、今後の展望を試みることにします。

まず、負担と給付の関係に関する論点については、経済財政諮問会議を中心に、2021年12月に決定された「新経済・財政再生計画改革工程表」(以下、工程表)に盛り込まれていました。

工程表は毎年、制度改正の議論を踏まえて見直されており、この時には図表1の通り、(1)居宅介護支援費の有料化、(2)軽度者向け給付の見直し、(3)2~3割負担の対象者拡大、(4)多床室料の負担見直し――の4つが盛り込まれるとともに、それぞれ厚生労働省の審議会で議論する方針が示されていました。

今回は(1)(2)の動きを主に解説し、次回では(3)(4)を説明します。さらに、要支援1~2の人のケアマネジメントを地域包括支援センターからケアマネジャーに委託できるようにする見直しなど、別の論点も部会意見では示されていますので、併せて取り上げたいと思います。

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