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⑥狂気と慈愛の食生活【タロジロと私。ときどきお父ちゃん】

愛息子タロジロへのラブレターです。
食事しながらお母ちゃんをフト思い出してくれるといいな。 
 
子どもに会えない親や親に会えない子どもは、愛していると伝え続けてほしい。 
 
温かい食事をカミシメテ、体も心も温めよう!
 
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10歳タロウがきゅうりをトントン切りながらお母ちゃんに話しかける。 
 
「お母ちゃん風邪のとき、タロウはお母ちゃんにニンジンサラダ作ったよな」 
 
 
慣れた手つきで卵を割りながら、お母ちゃんとタロウの記憶に交じりたい6歳ジロウが、会話にも交じってくる。 
 
「ジロウはそのとき何してたっけ?」 
  
 
 
二人仲良く料理する光景は、お母ちゃんにとっては、眩しい将来のタロジロ投影だ。 
 
 
 
私はありがたいくらい恵まれている。
 
 
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タロジロは赤ちゃんのころから食べることが大好きだ。 
 
おっぱいもグビグビ飲んで離乳食もパクパク食べた。 
 
 
 
 
何を作ってもおいしそうに頬張るタロジロに、私は無駄なスイッチが入る。 
 
 
 
 
栄養バランスはもちろん味や見た目もこだわり、タロジロの成長とともに拍車がかかっていく。 
 
 
スナック菓子やレトルト・インスタント食品などは、我が家でお目見えするケースはほとんどない。 
 
もちろんエンゲル係数とのにらみ合いもある。
 
 
おやつもほとんど手作り。 
外出にはほぼお弁当持参。
会食は週一くらいで我が家にご招待。 
 
 
 
今から思えば、半ば狂気じみている。
 
 
 
加えて、部屋にはチリ一つ落ちていないし、洗濯物もゴミも溜めるのが気にくわない。 
 
ホロホロ続けた合間のお仕事にも全力投球した。
 
 
 
疲弊しないほうがおかしい。 
 
 
 
私の狂気的な行動は、きっとお父ちゃんも疲弊させていたのだろう。
 
 
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タロジロは食べるのも好きだが作るのも好きだ。 
 
なかでもピザは数えきれないほどコネコネして一緒に作ったな。 
 
まだぺったんこの鼻やムチムチのほっぺにつく、白い粉の顔がとても愛おしかった。 
 
 
 
タロウ5歳、ジロウ2歳のとき。 
私はお母さんになってから、はじめての風邪で高熱をだした。 
 
朝のルーティーンをすませると、立っていられずリビングで横になってしまう。 
 
いつの間にか寝入ってしまった私は、キッチンから聞こえる二人の可愛いらしい話し声で目が覚める。 
 
 
私の目覚めに気付いたタロウが、慌てて大きな声をだす。
 
「お母ちゃんは寝といて!」 
 
 
ジロウはタロウのマネをして私に抱きついてくる。
 
「チャーチャンハネトイテ!」 
 
 
 
飛びついてくるジロウをフラフラでキャッチすると、その向こうには笑顔のタロウが見えた。 
 
 
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タロウは真剣な面持ちで、トレーにのせた何かを運びながら私に話しかけてくる。  
 
 
「お母ちゃんの好きなサラダ作ったで!オリーブオイルと塩かけといた。元気になるで!」 
 
 
続いてジロウが鼻の穴を広げて自慢げに話す。 

「タロウヒトリデ ツクッタネン!!ジロウチャント ミテタネン!」 
 
 
 
 
不格好なニンジンがゴロゴロ入ったサラダには、オリーブオイルと塩がたっぷりかかっていた。 
 
 
私は生野菜が大好きだ。
一人だけ毎日大盛の食卓。
オリーブオイルと塩が定番味だった。 
 
 
 
何も口にしたくなかったけど私はパクリ。 
 
一口食べるごとに、タロジロは「美味しい?」と目を輝かせて、私の顔を覗きこんでくる。 
 
私の目は涙が溢れる寸前だ。 
 
 
 
狂気じみた食事の支度をする私の傍らには、穏やかな眼差しで私を見つめる、タロジロがいつもいたような気がする。 
 
 
 
 
これ以上美味しいサラダは後にも先にもない。
食べずに一生とっておきたかったな。 
 
 
 
 
飛びついてきたジロウを抱きかかえたあと、私はタロウを優しく抱きしめたのだろうか。 
 
 
覚えているのは、希望と不安が入り混じったタロウの表情だけだ。
 
 
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ニンジンサラダの思い出質問に、10歳タロウが6歳ジロウへモジモジして答える。 
 
「ジロウはタロウを手伝ってたで」 
 
ひまわりのように微笑む満足げなジロウ。 

 
まな板を洗い終わったタロウが、こっそりお母ちゃんに耳打ちした。 
 
「ほんまはちゃんと覚えてへんねん。ジロウには内緒な」
 
 
 
愛おしいタロジロの風景は、6年前となんら変わらない。 

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ーーーー⑦につづくー 
狂気と慈愛の食生活・FB投稿(2020.12.13記) 
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Posted by つむぎ まどか on Tuesday, December 29, 2020


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