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写真日記

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#写真日記

情

人に対する評価基準は今と昔では大きく異なるのではないかと感じている。昔は人柄さえ良く見せれば他人を騙すことが容易だったのか、情に基づく付き合いを多様な場面に持ち出すことが散見されたようだ。現在は人が創り上げた役割に組み込むことで人をものとして扱うことができ、居場所を得るために物事の処理能力で優劣を競っている。ものとしての扱われ方には優劣がないのだが。

ISO100
f8
1/20s

同族嫌悪

同族嫌悪

強くあり続けるためには立ち止まってはいけないと思っている。しかし、変わることを他から強いられることに納得できないのは自分がまだ餓鬼で我儘だからなのだろう。こうして自己評価を間違え続けた先に忌み嫌う大人像が存在するのだとすれば、同族嫌悪というのは言い得て妙な表現か。

ISO100
f16
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すれ違い

すれ違い

すれ違いざまの景色に一喜一憂していても仕方ない。大半は取りこぼしてしまうのが普通で、例え手に入れたとしてもただの運に過ぎない。望んだ通りの現象が起きることは皆無だ。逆に今手にしているものの中に望んだものがあると信じ、一つ二つと数え始めれば、目の前の取りこぼしに固執することはなくなるのではないか。

ISO100
f16
1/50s

逆行

逆行

他人とは違う方向へ進む傾向が自分にはある。それは個性でもなんでもなく、執拗に隣の芝を見て何度も劣等感を抱き、それでもなんとか自分が持つ色で補うことができないかを施策しているだけだ。叶うのであれば足並みを揃え、互いを支え合いながら楽しく生きたいというのが本心だ。しかし、今は他人に誇示したいと思えるような色彩は持ち合わせていない。世間の潮流に逆行することが目的へとなり替わり、時ばかりが過ぎてしまわない

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負荷

負荷

デジタルカメラにしか触れていないせいか、フィルムを用いた写真に妙な憧れを抱いている。しかし、環境負荷について考えたとき、フィルムの消費や現像が無視できない問題であることに気づく。単純に欠点しかないのであれば悩むことがないのだが、何十年も使い続けることができるほどの堅牢性がフィルムカメラにはある。また、より高画質、高精度を求めて開発され続ける現代のカメラにおいても環境負荷が発生していることは変わりな

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持続

持続

持続可能社会を謳う昨今において、使い捨てることを前提とした便利さを享受することに罪悪感を抱いてしまう。古い物は単純かつ堅牢であることから、手入れや修復を重ねれば世代を越えて使い続けることができる。持続可能性のある事物は不便であることを理由に過去に捨てたものであり、未来志向で新たに開発することは道理に適さないように思う。

ISO100
f16
1/30s

年の瀬

年の瀬

年の瀬になると蟠りを解きたくなるのはなぜだろうか。既に手遅れなのに今まで放置していた雑題をやおら掘り返し、より身軽な状態で新年を迎えようとする下心は験担ぎに近しいように思える。他人と共有できてしまう節目にはどうも価値観が揺さぶられる。

ISO1600
f5
1/60s

純真

純真

人目につかない場所にある特色を見つけると像を収めたくなる。ものに溢れる世の中だから、素通りしている光景が自ずと増えてしまうのかもしれない。何もないと高を括っていても、いざ散策に向かうと思わぬ収穫があることがほとんどだ。そうやって風景を探しながら歩いていると、未熟な時期の純真が甦ったような気になる。

ISO200
f8
1/13s

生活

生活

変化を好むあまり、自分の生活で精一杯になる傾向がある。改めて周りの人間それぞれに苦悩があることを考えると、社会の複雑さに思わず頭を抱えてしまう。そんな不明瞭な視界に一つの繋がりを見出すと衝動的に縋りたくなってしまうのは、変化には生存手段の一つ程度の価値しかないことを暗に示しているのではないか。もしそうなら手段が目的に転じている現状を再考する必要がある。

ISO100
f16
1/13s

闘争

闘争

差別や戦争という言葉を拒絶し、愛や平和ばかりを賛美する組織に違和感を抱いている。確かに格差は対等に縮まった方が良いだろうし、争い事もないに越したことはない。どのような考えも行動も個人の責任の下に自由であるべきだ。しかし、社会で執り行われるのは様々な同調圧力という形式での争いだ。その過激で活発な姿勢たるや闘争を求めているのではないかと疑う程である。いま一度考えると、我々は戦時中に一億総玉砕すべしとい

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運

過ぎたことを悔やんでも仕方がない。そんな思考で気を転じることができるようになったのはつい最近のことだ。鬱屈とした生き方にも慣れ、運を掴んでかけがえのない宝に恵まれることもあった。あと10年早く身についていたらどれだけ明るい20代になっていただろうか。ああ、また悪い癖が出ている。

ISO800
f5.6
1/13s

異国

異国

まるで時期を見計らったかのような寒波に耐えきれず、ダウンコートを身に纏った。そうまでして夜景を見ることで何か得るものがあるのかを問われると返す言葉もないが、自分を含めて飾られた異文化を愉しむ人間が多いのは、それが日本人的美学に準えているからだと考えている。季節の変遷を感じ、詩を認め、草花を生け、茶を淹れ、旬な食材を嗜みながら暦に酔いしれることは古くから伝わる美である。例え異国から持ち込まれた文化で

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渡航

渡航

もしも今すぐに海を飛び越えたとしても、自分なりに降り立った地の気候や生活を楽しむことができるだろう。ただ、そこから何を得てどの様に運用するのかを考えると、楽しむだけの安易な渡航には費用に見合う価値がないように思えてしまう。腰を据えて自分を中心とした小さな国を擬似的に生み出すのであればそれは有効だろうが、そのために捨てなければならないものを今すぐに手離す覚悟はない。

ISO200
f14
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代償

代償

薄給で質の高い仕事を要求されることに不満を抱く人間は多い。対して、安価で質の良い製品が溢れる環境に疑念を抱く人間は少ないように見える。限られた需要の中で行われる競争によって価格に対する合目的品質ばかりが上昇し、一つのものを長く大切に使い続けるという心情が人々から失われてしまったからだろう。価値の本質がずれたことで払い続けている代償を我々は認識すべきだ。

ISO200
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