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「天才とホームレス」 第1話

<あらすじ>
金持ちで勉強ばかりしてきた小六の「ゆきや」と、大阪から転校してきた「てっぺい」と、河川敷に住むスーパーホームレスのおっちゃんの話。クラスの中での「えんぴつけずり」ビジネスから宇宙まで、どんどん世界は広がっていく。

小六のこんな中途半端な時期に転校してきたコイツは、ひどく個性的な見た目をしている。

髪の毛はボサボサで、服は汚れていて、ずっと口を開けている。
授業中もずっと歌ってるし、貧乏ゆすりもひどい。
黒板を見ることもなく、何かをノートに書き殴っている。

かと言ってずっとひとりぼっちなわけじゃなく、休み時間になるとクラスの人気のある女子を口説いていた。
とにかくマイペースで周りの目は気にしない。
だいぶ嫌われてそうだけど、、、。

こんなやつは僕が一番関わってはいけない人間だ。
私立中学に行く僕には関係がない。
どうせ半年後には離れ離れだ。
そう思っていた。

転校して数日後、
アイツがビジネスを始めたのだ。
それは「えんぴつけずり」ビジネスだった。

鉛筆のおしりをオーダー通りにハサミで削るというものだった。

初めにアイツの鉛筆に目をつけたのは、クラスのバカたちだった。
運動神経だけ良くて、年がら年中ドッジボールをしている。
その中の一人が朝から馬鹿でかい声で騒いだのだ。
「すげーーーー!!お前の鉛筆、かっけーなーーー!!」
アイツは脇芽も降らずノートに何かを書いている。
ドラゴンのシルエットにおしりを削った鉛筆で。
「なぁ!なぁ!おれにも作ってくれよ!」
アイツの体をゆする。
けだるそうに、
「あー、いいよ。一本100円ね。
 鉛筆とオーダーを書いた紙をそこに置いといて」

そしてその日の夕方には、
そいつの手元に「伝説の剣えんぴつ」が届いていた。
隣のクラスにも聞こえるぐらいの大声で喜んでいたから、すぐにわかった。

次の日には大量のオーダーが来ていた。
昼休みまでには整理券が配られていた。

そのうち、クラス中の人が、アイツが削った鉛筆になっていた。

アイツはそこで止まらなかった。
ビジネスが軌道に乗ってきた頃にもう一つのビジネスを始めたのだ。
整理券にハンコを押し始めた。それもカッコいい昔の書体だ。
当然、そこに目がいく。
そして「消しごむハンコ」ビジネスが始まった。
ガッチリとリピーターを掴んだのだ。

なんだコイツは、、、
ビジネスがうますぎる。

僕の父は大会社の社長だ。
僕はそこを継ぐことを期待されている。
幼い頃から家庭教師が付けられ、勉強も経営も叩き込まれてきた。
そんな僕にも思い付かないことを、何でコイツはできるんだ。

あまりにも気になるすぎて、その日、僕は生まれて初めて家庭教師をすっぽかした。
帰り道にアイツの跡をつけずにはいられなかったんだ。

午後2時半に学校が終わり外に出る。
いつも真っ直ぐに帰る道とは逆方向だ。

アイツはめちゃくちゃ寄り道をした。
猫にも犬にもついていき、トカゲや虫をいちいち捕まえた。
タバコ屋のおばちゃんにはお金を払わず大量のお菓子をもらっていた。

ゆっくりゆっくり進んでいくのでイライラした。
でも空をみると綺麗だった。
こんなふうに空を見たのはいつ以来だろう。
なぜだか胸が苦しくなった。

アイツは河川敷に向かっていった。
腕時計をみるとまだ3時過ぎで唖然とした。
もう二時間ぐらい経っている気がしていた。
なんて時間が進むのが遅いんだ、、、

その後、河川敷にある大きな橋の下のビニールシートと段ボールで作られた家に入っていった……。

な、なにをしてるんだ!
そんなことをしたら危ないじゃないか……!

もうどうしても気になって(心配よりも好奇心で)、中を覗いてしまった。

「おぉ、なんやこの子は」
無愛想なおっさんが低い声で、僕を見て言った。
アイツはチラッと僕の方を見て、
「お!なんやっけ?クラスにおるやんな?」
と言ってまたノートの世界に戻った。
めちゃくちゃ関西弁じゃないか。
そういえば、関西からの転校生だった。

「おまえ、こいつに見られてもいいんか?」
おっさんが続ける。歓迎ムードではない。
「あー、ええよ、ええよ。
 誰かに言いふらすとかないやろ」
何かを作っているようだ。こっちを見もしない。

「お、おい。こんなとこでなにやってるんだよ。
 こんなん絶対ダメだろ!」
震えた声で言った。ギリギリだった。
「え?なにが?ダメなん?」
「え……、だって、僕ら小学生で……。え……」
「ええやん!お前も一緒にやろうや!」
「えぇ?!」
「今、ロケット作ろうとしてんねん。
 このおっちゃんおもろいねんでー!
 なんでも知ってんねん!」
学校では見たことないような笑顔で笑う。
おっさんは賢そうには見えない。少なくとも僕のデータにはない。

しかし、その書き込んでいるノートを見ると何も言えなくなった。
精密な設計図と高度な計算式であることは、僕にはわかった。
僕じゃなきゃ見逃してしまうだろう。
しかし、僕にはわかった。

僕は驚いてしまって、そのノートから目が離せなくなった。
じっくり読んでいると、嬉しそうに
「おお、お前も読めるんか!どや?すごいやろ??」
と話しかけてきて邪魔だった。
「なぁ!お前も一緒に作ろうや!
 そのうちクラスのやつらにも見せてやりたいねんけどな。
 一旦、成層圏まで飛ぶやつを作るねん。
 このおっちゃんのお手伝いやけどな。
 俺もお金集めたり、材料集めたり、計算したりすんねん」
腹が立つほど、心はワクワクしていた。
なんて面白そうなことを、僕が家で机に向かっている間にやっているんだ。

「ていうか、お前そんなによく喋るやつだったのか。
 そんなに関西弁だということも知らなかった」
そういうと、困ったように笑って、
「いやー、、、あんまり関西弁やとバカにされてまうかなって思って、、、。
 東京やし。
 てか学校じゃ緊張してあんまり喋れへんねん。
 もう小学校も終わりやし、、、」
な、なに!? コイツ、人の目を気にして?!
緊張してるやつがあれか??
ははは、と笑って「あ!」と言ったかと思うと、またノートに一心不乱に何かを書き込み始めた。
なんて、マイペースなやつなんだ、、、。

おっさんも気がついたら別の作業をしている。
このおっさんもマイペースなのか。
草を編んで、、、まさか靴を作ってる??
なんてことだ、、、

「なんや、お前も仲間に入るんか?」
こっちを見ずに低い声で聞いた。
「え……、は、はい」
え……!「はい」と言ってしまった!
まさか仲間に入ると、入りたいと思ってしまった。
「おっしゃ!じゃあパーティやな!」
と、おっさんが腰を上げた。

そしたら「パーティ」の言葉にピクリと反応してアイツが立ち上がった。
「よっしゃ!」
そう言ってさっきタバコ屋でもらったお菓子を、低いテーブルの上に並べた。
おっさんにはタバコを手渡した。
え、それ大丈夫、、、?

おっさんは透明の液体の入った何のラベルもついていない怪しいビンを出してきて、汚いグラスに注いだ。
僕らにはオレンジの液体の入った、これまた何のラベルもついていないビンとコップを手渡した。
慣れた手つきでアイツはコップに注ぐ。
「これはこの近くに植えてるオレンジの木からとったんやで!すごいやろ!」
え、それも違法じゃ、、、
もう常識がわからなくなってきた。

おっさんは何の遠慮もなくタバコを吸い始めた。
タバコは絶対にダメだ、バカのやるもんだ、と昔から教えられてきたから、こんなに近くで見るのも、匂いを嗅ぐのも初めてだった。
かっこいいと思ってしまった。

透明の液体を飲んで、少しテンションが上がったおっさんが
「よし、お前!名前は何や!」
と、さっきより少し高い声で言った。
何の液体なんだ、、、?
「あ、高田です。高田ゆきやです」
あ、つい全部言ってしまった。え、本名を言ってしまった、いいのか?
「よっしゃ、ゆきや!わしは山中や!おっちゃんでええ!
 おい!おまえも自己紹介せえ!」
「はい!大阪から引っ越してきました、小六の岸田てっぺいです!
 いご、おみしりおきを!」
てっぺいっていうのか。
「よし!乾杯や!」
いや、もう飲んでたけど。

そうして宴が始まった。
来た時はあんなに無愛想だったのに、宴が始まるとおっちゃんはめちゃくちゃ喋った。
僕のことを根掘り葉掘り聞いてきた。
僕もついつい全部喋ってしまった。
このオレンジジュースにもなんか入っているのか?

おっちゃんの手元にはお菓子だけじゃなく、刺身があった。
「え、さ、刺身?」
「がはは。どや、食ってみるか?」
食べてみると、めちゃくちゃうまい!こんなの食べたことない、、、!
最高と言われる鮨屋に何度も行っている僕が、だ!
「え、これ、なに?どうやって?」
困惑していると、てっぺいが、
「すごいやろー!
 おっちゃんのとこに漁師さんが持ってきてくれんねん。
 おっちゃんが色々教えたってるからな!」
何もんなんだ、、、。

タバコ屋もそうらしい。
おっちゃんのアドバイスで経営危機を救われたという。
そして、てっぺいも定期的に見に行って、アドバイスしたり、聞き取り調査をしておっちゃんに伝える役をしているという。
そりゃビジネスが上手くなるわけだ、、、

気がついたら6時になっていた。
辺りはすっかり暗くなっている。
ケータイには何度も電話が来ていた。
やばい、、、

急いでブルーシートの家を出た。
「あ、ありがとうございました!」
靴を履き直しながら礼を言った。
「おう。また来いよ、ゆきや」
おっちゃんに名前を呼ばれた時、なぜか泣きそうになった。
てっぺいも、
「じゃ!」
と、言って、またノートに書き込んでいた。
何時までいるつもりなんだコイツ、、、

夜の風が気持ちよかった。
もう冬も近いのにあの家は暖かかった。暑いぐらいに。
どういう仕組みなんだ……?


家に帰ったら警察が来ていた。
マジか……。
玄関でママが騒いでいる声がする。
確かにこんなこと、生まれて初めてした。
しかし僕の頭は意外と冷静だった。

「ただいま……」
「あぁ!ちょっと!帰ってきた!!」
泣き崩れる母。
「どこいってたの!!心配するでしょう!!
 何回電話しても出ないし、家庭教師もあるのに、、、
 あ、警察のみなさま!すみません、、、無事、帰ってきましたので、、、」
その間に僕は、階段を上がって自分の部屋に行った。

ふぅ、、、
どうしようか、、、
でもあそこにはまた行きたい。
どんな授業よりも勉強になるだろう。

なにより忘れられなかったのは、ふと見上げた空だった。
あんなにゆっくりと時間が流れるなんて、僕は知らなかった。

「よし」
と言って、てっぺいのように僕は、ノートを広げて、そこに戦略を書き始めた。
両親を説得する戦略だ。

チームおっちゃんプロジェクト
1、現状
おっちゃんとてっぺいの仲間になった
続けて行きたいと思っている
おっちゃんは街のあらゆるところとつながりを持っている
コンサルをしている
ロケットや宇宙の知識を持っている
二人は関西人
2、問題点
家庭教師が毎日あること
正直にいうとママが許さないだろう。きっとパパも。
おっちゃんがホームレスなこと
3、戦略的設定(つくべき嘘)
てっぺいが親友
ビジネスについて語り合う仲間
おっちゃんがてっぺいの知り合いの大学教授
街を対象に社会実験をしている
それに協力してほしいと誘われた
4、交渉内容
家庭教師を減らすこと
門限を6時に設定

ビジネスプランの勉強が役に立つ。
書き出すと冷静になれる。

整理された頭で下の階に行った。

「座りなさい。ご飯食べながら話しましょう」
冷たいトーンのママの声。
う、怒っているな、、、
なるべく冷静に、ゆっくり歩いていつもの席に着いた。

目の前のハンバーグに目を向けつつ、
ママが席に着くか着かないかのタイミングで話し始める。
こういうのは意表をつくのが大切なのだ。

「ビジネスをもっと勉強したいと思ってるんだ」
こういうのは相手が喜ぶ言葉から始めなければいけない。
特にママはそうだ。
予想外の話が来てママは驚いた顔をしている。
「最近、転校してきた岸田くんがさ、
 めちゃくちゃビジネスに詳しくて、めちゃくちゃ僕と仲良くなったんだ。
 それで彼がビジネスを学んでいる人を僕に紹介してくれたんだ。
 それで今日は遅くなったんだよ」
まだ話が入ってこないという顔だ。
そこに畳み掛ける。
「だからさ、ママ。
 家庭教師の回数を減らしてほしいんだよ。
 その人のところに行きたいからさ。
 今日のことは謝るよ。連絡しなくてごめん。
 でも、その人と会って、僕もっとビジネスを勉強したいと思ったんだ。
 だからさ、頼むよ。お願いします」
最後は敬語を使うと良い。
そして先に謝るとそれ以上追及できなくなるのだ。
すべて計算通りだ。

「え、ちょっと、待ってね。
 えーと、、、。
 パパと話し合うわね。
 でも、明日はちゃんと帰ってきなさいね!
 とりあえず、また話し合いましょう。
 いいわ、今日のことはもういいから、さ、食べましょ!」
いけたーー!!
まだ交渉は成功とは言えないが、今日のことは切り抜けた。
そしてこの感じだとパパもいけるだろう。
厳しいが基本的にはママに任せている。
朝早くから出勤し、夜も遅い。
休日ぐらいしか会うことはないし、休日もあんまり家にいない。
そんなパパだから、ママがどうかと問えばやってみろと言うのだ。
気にしているのは成績だけだろう。

食べ終わって自分の部屋に上がる時、
「ありがとう」とママに言ってから上がった。
ママは照れていた。
よし、いける。

その夜はなかなか眠れなかった。
ロケットについて、本を広げ、ネットで調べて、ノートに書き出していったのだ。
悔しかったから。
どれだけやってもてっぺいに追いつける気がしなかった。

ノートを開いたまま、机の上で朝まで寝ていた。


次の日の学校。
教室のドアを開けるとてっぺいと目があった。
「よ!」
と、てっぺいが僕に挨拶をしたから教室がざわついた。
僕はカーッとなってしまって、変な顔で自分の席まで歩いた。

するとてっぺいが目の前にきて
「今日は来れるんか?」
と、満面の笑みで言った。
なんか犬みたいだ、、、

「今日は行けない。
 家庭教師が来るんだ」
「ああ〜、そうなんか〜。
 わかった。おっちゃんに伝えとく」
てっぺいは残念そうに席に帰って行った。

と思うと振り返って、
「あ!明日の土曜日、昼からロケット飛ばすで!
 あそこに集合な〜」
と大きめの声で言った。
クラスがざわついている。
てっぺいは気づいていない。
にこ〜っと笑っている。

「わかった。行けたら行く」
なるべく冷静に答えた。
クラス中からヒソヒソ話が聞こえた。
てっぺいの方を見たら、もうノートを開いていて聞こえていない。
どこが、人の目を気にしているんだ、、、?

前を向いて周りが目に入らないようにした。
耳が赤いかもしれない。
それでも明日が楽しみで、一人でにやけてしまった。


次の日、午前の勉強をこなして、昼ごはんを急いで食べ、河川敷に向かった。
走ったために脇腹が痛くなった。
おっちゃんの家を見つけて近づいていくと、畑を耕しているおっちゃんを発見した。
畑……? どこまで自由なんだ、このおっちゃん。
しかも近くにオレンジの木は見当たらない。
どうやら点在させているらしい。
確かにその方がバレにくい。
賢い……。

ハッと我に返って、おっちゃんに声をかける。
「おっちゃーん!」
「おー!ゆきやか!」
おっちゃんに名前を呼ばれると嬉しくなる。
「てっぺいはまだ来てへんぞー」
なんだアイツ。
まあ確かに何時からとは言っていなかったし、言っていても時間通りに来るようなやつじゃない。

「まぁ、畑手伝っていけや。
 今日、何するかは知ってるな?」
「う、うん。ロケットを飛ばすんでしょう?」
「そや。手伝ってけ」

畑は近くに来ると雑草まみれだった。
耕していたと思ったが違った。
雑草を刈ってそこに置くということをしていただけだった。
自然農法というらしい。
肥料も農薬も使わない。そんなことがあり得るのか?
なにもかもが不思議だ……。

畑の世話をしている間、ロケットの仕組みについて説明してくれた。
てっぺいのしていた計算についても。

おっちゃんは驚くほどに教えるのがうまかった。
全部の情報が澱みなく、どんどん頭に入ってくる。
その仕組みも、僕が調べた限りではあるが、おそらくめちゃくちゃ奇抜で、
まさか宇宙まで行くとは思えなかったけど、説明を聞き終える頃には絶対に行けると思った。

おっちゃんの目の奥はとても優しい。
この人はもしかしたら昔、とんでもなく偉い人だったんじゃないか。
そんなことを思って、今のおっちゃんの姿を見て考えるのをやめた。

てっぺいは3時ごろに来た。
遅すぎる。おまえにとって昼とはいつのことなのか。
悪びれもせず、「よ!」と言っておっちゃんの家に入ってきた。

「よし、飛ばすか」
そう言っておっちゃんは腰を上げた。

歩き出した二人についていった。
早々に河川敷を出て何処かに向かう。
何の説明もないまま20分ぐらい歩くと、町工場に着いた。
ここもまたおっちゃんの知り合いらしい。

そしてそこに、僕の背丈ぐらいあるロケットが置いてあった。

さすがに河川敷では飛ばせないということで、広場の使用許可を取っているらしい。
もちろんこの町工場の社長が。
どれだけ友達なんだよ。

そして軽トラックに乗せられて移動した。
トントン進んでいく状況に、僕はドナドナの歌の中の牛を思い出した。
そして青い空を見ながら軽トラに揺られた。


30分ぐらい走っていったところに大きな広場があった。
そこでキビキビと町工場の人たちが動いてロケットを設置する。
おっちゃんはわかるが、なんとてっぺいも一丁前に指示を出している。

計測器のモニターを見ながら、二人がディスカッションをしているが、まったく入っていけない。
なんて悔しいのか。
悔しいから全てをこの目に焼き付けて、忘れないと誓った。

いよいよ、ロケットを飛ばすとき。
あまりにもスムーズに発射の時になったので、逆に心配になった。
おっちゃんとてっぺいは落ち着いている。
そしてGoサインを出す。

「よーし、上げてくれ!
 3、2、1、GO!!」
バコーーーン!!
シューーーー!!
ドンドン上がっていくロケット。
あっという間に見えなくなった。

「よし、帰ろか」
え??
「うん、あとはスマホで確認ってことで。
 お疲れっした!」
「お疲れさまでしたー!!」
一瞬で片付けをして撤収となった。
え? 喜ぶとかは?
ハイタッチとかは?

唖然としてる僕の横でてっぺいが笑った。
「ププ、ゆきやどうしたん!
 めっちゃおもろい顔なってんで!」
コイツ、、、
「いや、もっとなんかあるんじゃないか?
 やったー!みたいな」
「いや、ロケット飛ばすだけやったら今どき色んなとこがもうやってるからな。そない珍しいことじゃないねん。
 人が乗ってたりしたら別やけどさ」
そう言ってスマホでロケットにつけたカメラの映像を見せてくれた。

「うおーーー!!!」
おっきい声を出して運転してくれているお兄さんを驚かしてしまった。
「あ、すいません。
 なんだこれ。もうこんなに行っているのか!
 なんて、、、」
画面には青く光る地球。
小さいカメラで画質はそこまで良くないはずなのに、今まで見た地球のどんな映像よりも美しかった。
「あ、青い、、、」
「お、ガガーリン」
ガガーリンもこんな気持ちか、、、

「ゆきやのスマホでも見れるで。
 このアプリを入れたら」
URLをBluetooth接続で送ってくれた。ここまではギリギリついていける。
「え、このサイトはなに?このアプリは何?」
「ん、作った」
コイツ、、、

その夜、遅くまでそのアプリで地球を見ていた。
夢と現実の境目がわからなくなるような夢を見た。


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