見出し画像

音楽大学は今と昔ではだいぶ変わりました

昔の音大受験

音大に行きたいと心に決めたのは中学3年生の頃でした。当時、横浜にあるヤマハのお店に用もないのに毎週通っては楽譜を物色したりショーケースに張り付いて新品のキラキラした管楽器を見てヨダレを垂らしていたのですが、実はその時、音楽大学案内という超分厚い本もしばしば立ち読みしていました。

その本には日本にある音楽大学や音楽学部、附属高校などのデータや入試内容、過去問題などが掲載されていた記憶があります。それを見て、どんなことをすれば音大に入れるかをリサーチしていました。

合わせて、音大受験対策用の聴音問題集やらコール・ユーブンゲンやら、副科ピアノの課題になっている楽譜を見て、なるほどこういうのができるようになったら音大に入れるのか、と思いを馳せていました。立ち読みばっかりですいませんでした。最終的には全部買い揃えました。

中学校を卒業する少し前に両親に音大に行きたいことを伝え、音大に入るには何をどうすれば良いのかを説明したりと、これまでヤマハで情報収集した成果を遺憾無く発揮し、ピアノのレッスンを受けさせてもらい、高校に入ってすぐにピアノの先生のツテでトランペットの先生を紹介していただき(そこで津堅先生を紹介していただけたのは本当に奇跡でした)、音大進学に向けての受験勉強を強引にスタートさせた、という流れです。

当時は「トランペットで音大=器楽専攻」

これが今から30年前の話でして、当時の音楽大学というのはトランペットで入学するなら当然「器楽専攻」でした。器楽専攻は自分の専門楽器について研究する専攻で、実技レッスンや吹奏楽、管弦楽、室内楽などを学び、誰も口に出すことはなかったけれど、将来は音楽の専門家、特にトランペットでの音楽家を目指すことが当たり前のような環境でした。

当時の感覚からすると学校の先生になりたいのならば音楽教育専攻か、他大学の教育学部に入るのが当然のような雰囲気でした。したがって受験の時点で自分が将来どの音楽の道に進もうとしているのかが明確になっていて、具体的な専攻もそれにより自動的に決まっていたわけです。

現在の音楽大学

一方、現在の音大は非常に多様化しています。もちろん各楽器に特化した専門家を目指す器楽専攻は当然健在ですし音大の顔とも言える専攻のひとつですが、その専攻生が学校の教員を目指すことも、僕が学生の頃だったら珍しがられていた一般就職をする学生も増えてきています。
そもそも、僕が音大生の頃は「音大生は一般就職に不利」と言われていたのですが、それは僕の世代が就職氷河期ドストライクだったからで、今はそんなこと全くありません。中学高校の音楽科教員も真剣に目指せばなれます(僕が学生の時は合格率何十倍という、異常な高倍率でしたので不可能に近かったです)。

現在の音楽大学は専攻も多様化していて、僕が講師をしている東京音大の吹奏楽アカデミー専攻は、演奏家、教員、吹奏楽指導者、メディア系など、目指す可能性の分岐が広く用意され、様々なカリキュラムが用意され、それぞれのエキスパートの講師がいます。
他大学でもジャズ、ミュージカル、ポップス、舞台スタッフ養成、アートマネジメントなど、今は本当にいろいろあり、入学してくる学生の目指すものも将来に対する考え方も多様化しているわけです。

音大受験生を教える先生へ

前置きが長くなりましたが、今回なぜこんな話をしたかと言いますと、僕ら世代(以上)の当時の若干閉鎖的な音楽大学で学んできた経験とその印象が強く残り、さらに現在の音大の多様化をあまりよく知らない音楽教室講師や学校教員の方は、「音大受験はとても大変で厳しく倍率も高く、入学したら当然一流の音楽家を目指し、一般就職は不利だし、そもそも音大受験に進路を定めたら変更がきかないからよく考えてから決めるべきだ」と言っている人が多い印象があります。でも、それちょっと古いかもしれません。

もちろん受験生自身が真顔で「将来は世界中で活躍するソリスト一択、他は認めません」と言い始めたらそりゃいろんな意味で大変かもしれませんが。

とは言え、今も昔も音楽の基礎力は絶対持っているべきだし(合格できても入学してからが大変)、演奏能力も音楽の知識も高ければ高いほうが良いに決まってますから、それなりの受験対策レッスンをする必要があります。これらについては以前以下のブログに書きました。

ま、こんなこと書いてきましたが、僕も音大を卒業してから数十年ぶりに講師として母校に戻ってきて、多様化している環境に驚いたわけです。

そうですね、昔より大変なのは学費…かな…


荻原明(おぎわらあきら)

荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。