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[気づきの日記帳05]インターネットの誕生が開いた体験の時代
[2002年の気づき]
インターネットの商用利用が一般化し、企業のコミュニケーションに活用され始めたのが1990年代の後半。マスメディアを中心に回っていた広告の世界が今の時代の形に変化していく流れは、そのあたりから始まったのでした。世界のトップブランドは競うようにネット活用を模索し始め、2000年代に入る頃には、世界を驚かせるような活用事例が登場し始めます。
NIKE iDは、NIKEシューズのカスタマイズ販売のお店。現在も人気サービスとして愛され、世界中のNIKEファンにカスタマイズシューズを提供しています(Nike By You : https://www.nike.com/jp/nike-by-you )。世界で最も権威あるクリエイティブアワード、カンヌ国際広告祭(現カンヌライオンズ)に初めて登場したのが2000年。そして今のUIモデルにアップデートされ再エントリーするのが2002年。その2002年に、NIKE iDは、カンヌ・サイバー部門の最高賞であるグランプリを受賞します。
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カンヌのサイバー部門で、オンラインショップのサイトがグランプリを獲るのは、極めて異例なことでした。なぜならショップサイトは、販売機能という制約があり、自由な表現ができにくく、表現ジャンプがとても難しい領域だと考えられていたからです。
自分はこの年のサイバー部門審査員の一人として、そのグランプリ審査の現場にいました。時代は、Flashという動画技術がブラウザー表現に革命をもたらし、格段にリッチになった表現が海外の先端制作会社から発信され始めていた時代。NIKE iDもFlashを使って作られていましたが、その評価のポイントは、他のものとは全く異なるものでした。
映像やポスターなどのマス表現で行われてきたブランディングは、
NIKE iDに象徴されるような多様な接点での「体験」へと場を移していく。
世界中から集まった審査メンバーたちは、このNIKE iDというショップサイトに、まったく新しいBrandingの可能性と未来を感じました。長きBrandingの歴史と流れに「体験」の時代が到来したことを確信したのです。
Brandingが、そのBrandを好きになる理由、買いたくなる理由を作るものだとするなら、別にその形式やスタイルはどんなものでもいいわけで。カスタマイズシューズをプランする工程を通じて、自分にとってのNIKEデザイン、自分にとってのNIKEシューズ、自分にとってNIKEブランドマーク、自分にとってのシューズディテール、、、それら全てを考えていくこと。それは、これまで誰も考えたことのない最高のブランド体験になんじゃないか。このカスタマイズショップサイトは、そうした意図と問いをもって世に送り出されている最高のBrandingコンテンツなんじゃないか。
マスコミュニケーション全盛の時代は、ブランドイメージは、フィルムやポスターによって作りだされるものと信じて疑いませんでした。その時代は、それほど圧倒的なパワーをマスメディアは独占していたのです。しかし、インターネットが生まれて、インターネットで提供されるコンテンツには、マスコミュニケーションの一方的情報体験とは違う、深いブランド体験を提供する可能性が見えてきた。たとえばそれは、ショップという形式でもいい。アプリというプログラム形式でもいい。オンラインライブというイベントでもいい。ユニークなインターフェースで寄付を募る活動でもいい。YouTube映像というコンテンツでもいい。
それを実感してから自分たちは、ブランディング業務を体験軸で考えるように変わっていきます。
家電新製品のプロモーションを街中での色体験で表現したり
オウムに言葉を覚えさせる体験を通じて新商品のブランディングを考えたり
ブランドファンを集めるためのコミュニティを設計したり
トレーニングの日常が楽しくなるプログラム体験を作ったり
「盗み」のリアルな体験によってコンテンツのブランディングを考えたり
多様なニーズに合わせたカタログが自動生成されるサイト体験を作ったり
団体のパーパスが体験できるツールを作ったり
誰もがスターになった自分を体験できる体験で商品ブランディングをしたり
体験の時代。生活者と商品、生活者とサービスは、体験を通じて結ばれる時代がやってきています。もちろん機能価値は重要です。でも、機能価値も体験という文脈に置き換えて考えれば、すべてはユーザー主語の文脈で総体整理することができます。
新しいブランドを預かったら、目指す到達点に向けて、そのブランドが提供すべき体験のポートフォリオを考えてみる。その全体像を共有した上で、個々の体験価値を最高のものにしていくためのディレクションをしていく。これまでCMのクオリティとグラフィックのクオリティを統合的にディレクションしてきたように、体験の時代は、YouTube映像と公式ウェブサイトとオンラインUI体験と店頭体験とファンコミュニティ体験を統合ディレクションする。そんな時代が来ているのです。
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