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メンズメイクは一過性のブームなのか論

こんにちは。
ソーシャル文化研究所(以下、ソー文研)の鈴木です。

昨今、女性だけでなく男性においても、美容の話題をよく耳にするようになりました。
以前から、洗顔や化粧水などのスキンケアを中心とした美容の話題は男性においても定番化していましたが、いまの流れはそれまでの流れとは少し違う質感があります。

ハイブランドがメンズメイクの商品を発表したり、新しいメンズメイク用のブランドが生まれたり、メンズメイクのテクニックやアイテムを紹介するYouTube動画が増えてきたり。

スキンケアを超えた「メイク」領域までメンズ美容の商品や発信が増えていますが、持続的な文化となっていくかどうかは、情報の受け手たる生活者側が主体的に受け止め、会話や行動の中に採り入れられるかどうかにかかっています。

果たして、メンズメイクは令和を通り過ぎる風なのでしょうか。
それとも、世の中の空気を構成する1つの成分になっていくものなのでしょうか。
ソーシャルメディアでうまれたクチコミの観測を通じ、考察してみたいと思います。

「メンズスキンケア」を超え、急速に拡大する「メンズメイク」

「メンズメイク」は、人々の間でどれほど語られているのでしょうか。

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「メンズメイク」「メンズスキンケア」のオーガニックツイート(※1)を分析/集計期間:2017年4月~2020年3月(※2)

2017から2019年まで、3年間のツイート数を追ってみると
2017→2018年:約1.8倍(前年対比)
2018→2019年:約3.1倍(前年対比)
と、加速度的に増えてきていることが分かります。

そして、2018年以降「メンズスキンケア」のクチコミ数を超え、「メンズメイク」が語られるようになってきているのは、見逃せない兆候です。

「メンズメイク」の年間ツイート数をもう少し細かく見てみると、2019年においても前半から後半にかけて大きく伸びていることが伺えます。

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「メンズメイク」のオーガニックツイートを分析/集計期間:2017年4月~2020年3月

「メンズメイク」は単純な1つの行動ではない

多くの男性がきっと未経験であろう「メイク」。
改めてメイクの工程を俯瞰してみるととても複雑で、それなりのモチベーションがないと続かない行動様式であることは明白です。

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「メンズメイク」というのは男性による一連のメイク行動の総体ですが、特にどこの工程に注目が集まっているのかを調べたのが以下のグラフです。

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「男性」「男子」「メンズ」とともにツイートされた各アイテムのオーガニックツイートを分析/集計期間:2019年4月~2020年3月

ファンデーション、そしてBBクリームの件数がとても多く、固有の箇所のカバーやメイクアップ以上に、メイクの中でも全体に関わるアイテムへの注目度の高さが伺えます。

伸びる! 伸びる!「BBクリーム」

そもそも「BBクリームとは?」という方もいらっしゃると思いますが、
BBクリームのBBは、ブレミッシュバーム(Blemish Balm)の略と言われ、
Blemish(傷)を隠すBalm(軟膏)のような意味を持ったアイテムです。

化粧下地やファンデーション、コンシーラーなどの機能をオールインワンで兼ねそろえたアイテムで、メンズコスメとしてさまざまなメーカーが展開を進めています。

メイクは複雑で難しくても、「とりあえずBBクリームを塗っておけばよい」ことから、男性にも浸透しやすそうなアイテムです。

そして、メンズメイクの工程の中でも特に語られる量の多かった「ファンデーション」と「BBクリーム」について、直近3年のツイート数の推移を調べてみたのが以下のグラフです。

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「男性」「男子」「メンズ」とともにツイートされた「ファンデーション」「BBクリーム」のオーガニックツイートを分析/集計期間:2017年4月~2020年3月

「ファンデーション」のツイート数が経年であまり変化していないのに対し、「BBクリーム」のツイート数が2年前から10倍に伸びているのは興味深い事実です。

しかし、なぜ「BBクリーム」はこんなにも伸びているのでしょうか。
どのように語られているのかを知るために、「BBクリーム」が2019年にどのような言葉と語られていたのかを調べてみました。

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「男性」「男子」「メンズ」とともにツイートされた「BBクリーム」の関連語を分析/集計期間:2019年4月~2020年3月

「女性」や「好感度UP」といった言葉とともに語られるのは、外見をよりよく見せようというポジティブなマインドに起因していそうです。

一方、「青髭」や「目の下」、「口周りシワ」、「頬の肌荒れ」などの言葉からは、気になるポイントをカバーする存在としてもBBクリームが捉えられていると推察できます。

もともと男性の関心事としてあった「スキンケア」の延長として「メイク」への関心が高まっている側面が強く、BBクリームが「メンズメイク」の門戸を開く役割を担ってきたと言えるかもしれません。

ただ、商品やブランド単体ではなく「メンズメイク」という文化が深く根付くかどうかは、「ファンデーション」や「BBクリーム」などの後の工程にまでみんなの関心が高まっているかどうかに鍵があると考えます。

加速を始めた「シェーディング」「ハイライト」「アイライナー」

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「男性」「男子」「メンズ」とともにツイートされた「シェーディング」「ハイライト」のオーガニックツイートを分析/集計期間:2017年4月~2020年3月

「シェーディング」とは、肌より少し暗い色を肌にのせることで、顔の彫りを深く見せたり、鼻を高く見せたり、顔の輪郭をシャープに見せたりするようなアイテム、およびその工程を表します。

まだ総量としては多くないものの、経年で大きな伸び率を見せたのが「シェーディング」です。
この2年間で4倍にまでツイート数が増えていて興味深いです。

また、「シェーディング」ほどの割合ではないですが、肌より明るい色を塗ることで顔のメリハリを強める「ハイライト」についても2年間で1.4倍の伸びを見せています。

また、アイメイク関連アイテムにおいて「アイシャドウ」のツイート数が総量として多いものの、目の印象を整える「アイライナー」が経年で増加傾向な点も、アイメイクが少しずつ浸透してきていると推察されます。

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「男性」「男子」「メンズ」とともにツイートされた「アイシャドウ」「アイライナー」のオーガニックツイートを分析/集計期間:2017年4月~2020年3月

浮かび上がる「メンズメイク」の輪郭

ここまで、「メンズメイク」が実際にどのように受け入れられているのかを明らかにすべく、Twitterのクチコミを観測してきました。

ツイート数としては「メンズメイク」が「メンズスキンケア」を追い抜き、勢いを感じることができる結果を確認しましたが、「BBクリーム」の伸びからは、まず「スキンケアの延長としてのメイク」を感じさせる側面がありました。

これだけだったら、「メンズメイク」の浸透は新たな「BBクリーム」の登場とその流通に留まっていたかもしれません。

しかし、「シェーディング」や「ハイライト」のようなメイクを理解していないと触れることのない少し深い階層の商品、ポイントメイクとして使用する「アイライナー」などのツイート数の増加からは、「メンズメイク」が広がりつつも深まり始めていると示唆されています。

「メンズメイク」はさまざまなコスメを活用した「行為の束」であり、行為の多様化の萌芽が見えてきていることは、「メンズメイク」という文化がまだこれから発展をしていく段階であることを表していると考えます。

まだまだ「メンズ」に特化した商品のカテゴリーは限定的です。
そして、既存の女性用にデザインされたコスメを男性が学び、活用を始めた段階です。

さまざまな男性向けコスメのアイテムカテゴリが拡充されたり、既存のコスメのマーケティングのターゲットが男性になったりしていくと、「メンズメイク」の浸透はより加速していくのかもしれません。

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特定のキーワードのクチコミを分析したい方は、ソーシャルリスニングツール「ブームリサーチ」がおすすめです。興味のある方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。


※1 オーガニックツイートは、リツイートなどによって拡散されたツイートを除き、一次発信されたツイートのみを指します
※2 本記事において「2017年」は2017年4月~2018年3月、「2018年」は2018年4月~2019年3月、「2019年」は2019年4月~2020年3月を指します
※本記事のデータは全て、ソーシャルリスニングツール「ブームリサーチ」を活用して算出しています
鈴木 崇太(すずき そうた)
ソー文研 文化観測士。制作会社にてプロモーション・イベントのディレクションを経験後、 2011年にトライバルへ入社。SNSを基軸とした企業のコミュニケーション設計に従事する。SNSと街の観察に基づく「生活者の気持ちに寄り添った」企画の設計を得意とし、2018年には「ポッキー&プリッツの日」のプロモーション施策であるTikTokキャンペーン「#ポッキー何本分体操」を手がけた。
Twitter @suzukinosonzai


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