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生理に対する意識の変化について、クチコミから読み解いてみた

はじめまして。ソーシャル文化研究所(以下、ソー文研)の髙品です。

女性にとって「生理」は生きていくうえで必要なことである一方で、私たちを悩ませているひとつです。

これまでは、こういった悩みや生理そのものについて話題にすることをタブー視する風潮があり、メディアでも個人間でも語られることが少ない傾向にありました。

ところが、最近はテレビやオンラインメディアなどで生理について見聞きする機会が増えるのと同時に、生理に関するクチコミも増えてきました。これにはどんな背景があるのでしょうか?

本記事では「生理」に関するクチコミ分析を通じて、その背景や内容を読み解いていきたいと思います。

若年層は「生理」が話題になることにポジティブ

大王製紙による調査(※1)によると、「生理に関してメディアやSNSで話題になるのはいい傾向だと思いますか」という設問に対して、10~20代を平均して約52%が、40~60代を平均して約39%が「非常にそう思う」「そう思う」と回答。

10〜20代の人たちは、上の年代に比べて生理を話題にすることをポジティブに捉えていることがわかりました。

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※1 大王製紙株式会社「生理に関する意識調査(2020年1月27日)」を参照し、ソー文研が作成

この調査結果をTwitterの利用者割合(※2)と比較すると、10~20代は約74%、40~60代は40%以下と30%以上の差があり、そもそも若年層の方がソーシャルメディアを利用している(これまでも生理に関する話題に触れている)ことから、話題になることに抵抗が少ないと考えられます。

※2 NTTドコモ モバイル社会研究所「2020年一般向けモバイル動向調査(2020年1月実施)」

生理に関するクチコミの中身

ソーシャルメディアで「生理」はどのように語られているのでしょうか? 「生理」についてツイートされた内容を、以下の4つに分類して件数を調べてみました。

・生理痛などの苦悩
・生理用品について
・生理と男性(夫や恋人など)
・生理休暇について

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生理痛などの苦悩は「生理」と「痛い」「だるい」など、生理用品に関することは「生理」と「ナプキン」「タンポン」など、生理と男性は「生理」と「夫」「彼氏」など、生理休暇については「生理」と「休暇」のオーガニックツイートをそれぞれ集計/集計期間:2020年1月1日~12月31日/データ元:ソーシャルリスニングツール「ブームリサーチ

最も件数が多かったのは「生理痛がきつい」や「気分が悪い」、「イライラする」など心身の負担に関する内容でした。

次に多いのが生理用ナプキンやタンポンなどの「生理用品に関すること」で、そのツイート数は2018年から2020年にかけて約2倍増加していました。

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「生理用品」に関するオーガニックツイートを集計/集計期間:2018年1月1日~2020年12月31日/データ元:ソーシャルリスニングツール「ブームリサーチ

ここ数年でどのような「生理用品」に関するツイートが増えたのか、生理用品のツイート内容を3つに分類しながら読み解いてみましょう。

生理用品の選択肢が増えている

① パッケージの変化

無印良品は2020年10月に生理用ナプキンを発売し、そのパッケージデザインが話題に。同ブランドらしい茶色の紙素材の箱に、生理用品であることが記載されているだけのシンプルなデザインでした。

ツイートには、「このデザインなら買いやすい!」「これまでいかにも生理用品って感じで嫌でした」「デザインは好みがあるので、それぞれが好きなものを選べばいい」とポジティブな意見が多かったです(ツイート数:2,740件)。

また、ユニ・チャームの「#NoBagForMe」プロジェクトは、生理や生理用品について気兼ねなく知れる・話せる社会の実現を目指しています。

これまでに「購入時に紙袋で包む必要性を感じさせない」パッケージデザインを複数開発・発売。開発時にはソーシャルメディアや街頭でアンケート調査を実施したり、他にもワークショップやイベントなどを開催したり、さまざまな活動を通じて数多くクチコミされました(ツイート数:1,940件)。

「生理用品」と「パッケージ」がともにツイートされる関連語を調べてみると、「シンプル」「恥ずかしい」「可愛い」が多いことがわかりました。

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「生理用品」「パッケージ」とともにツイートされた関連語をランキング形式で掲載/集計期間:2020年1月1日~12月31日/データ元:ソーシャルリスニングツール「ブームリサーチ

前述した事例のような、企業によるパッケージデザインを変える取り組みが影響し、生理用品のパッケージについて意見を発信するユーザーが増えたと考えられます。

私自身、生理用品を購入する際は機能やコスト面などで自分に適したものを選んでいましたが、近年はシンプルで可愛いパッケージデザインの商品が発売され、生理用品の選択肢が増えたと感じています。これまで以上に「選ぶときの楽しさ」や「所有するときの喜び」というポジティブな体験ができるようになりました。

② ナプキン以外の生理用品

ナプキンやタンポン以外にも、第3・4の生理用品として「月経カップ」や「月経ショーツ」も話題になっています。

「月経カップ」は欧米を中心に普及していましたが、最近は日本国内でも入手しやすくなりました。ツイート数を見てみると2018年は6,970件でしたが、2020年は18,760件と2倍以上に伸びています。

「月経カップ」を使用して感じたことを発信したツイートが、多くRT・いいねされている様子からは、利用率は低いものの月経カップに関心を寄せる人の多さが伺えます。

「月経ショーツ」に関するツイートも、2018年は140件でしたが2020年は1,780件と大きく増加しています。なかでも国内ブランドの「Nagi」が注目を集めていて、2020年5月の発表以来その吸水力や履き心地が高く評価され、発売後すぐに売り切れてしまうほど人気です。

月経カップや月経ショーツは、生理用品の新たな選択肢として今後さらに注目されるほか、利用率の向上も期待できるでしょう。

③ メディアによる発信

メディアが生理用品について発信することによるクチコミも散見されました。

2020年8月31日に放送された「生理キャンプ2020~前代未聞!生理の特番?テレ東、あえて話し合っちゃいます!~(テレビ東京)」は、「生理」をテーマにした番組を地上波で放送して話題になりました(ツイート数:2,280件)。
番組内では女性だけでなく男性出演者も「生理用品の使い方」や「生理の経験」に対して話していて、ツイートからは男性視聴者の生理に対する意識変容も見受けられました。

他にも、女性誌「SPUR」が創刊30周年を記念して渋谷で生理用ナプキンを配布するキャンペーンを実施した際は、この取り組みをきっかけに意志表示や意識が変化したことを述べるツイートもありました。

生理と男性

生理に関するツイートで3番目に多かった「生理と男性」については、2社の調査結果をもとにご紹介します。ミュゼプラチナムの調査(※4)によると、女性は「男性は生理のことをもっと知るべき」だと考えているようです。

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※4 株式会社ミュゼプラチナム「女性1,114人の生理事情。9割が『男性は生理を理解していない』と回答(2018月8月24日)」を参照し、ソー文研が作成

また、Womenʼs well-being推進プロジェクトによる調査(※5)によると、男女ともに生理を「子どもを生むために必要な現象」と認識しながらも女性は「生理は面倒くさい、わずらわしいもの」と思っている人が多いのに対し、男性は「あって当たり前のもの、自然なもの」「大人(成人)であることや、女性らしさの象徴」と思っており、男女で生理に対する意識に違いがあることがわかります。

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※5 Womenʼs well-being推進プロジェクト「『⽣理』への意識に関する⽩書2020(2020年1月)」を参照し、ソー文研が作成

9割以上の女性が「男性も生理についてもっと知るべき」だと思っているのは、こういった生理に対するイメージの差が理由のひとつだと考えられますが、これまでご紹介したような取り組みや近年生理についてオープンに意見が発信されることによって、それぞれの結果が変わる可能性もあるでしょう。

タブーから、オープンへ。それぞれが生きやすいように

生理に関するクチコミを読み解くと、女性は「選択肢」や「社会的な意識変化」を求めていたことがわかりました。これまでは生理用品の多くが画一的で、他人には相談しづらい状況でしたが、いまではオープンにしていく雰囲気や取り組みが支持されています。

また、こうした取り組みによりタブー視されてきた生理や生理用品が、徐々に社会の興味・関心ごととしてポジティブに受け入れられるようになりました。生理について語ることを一過性のトレンドとして捉えるのではなく、今後はより一層、生理や生理用品に対する意識を社会全体で変えていくことが求められます。

(一方で、オープンにしたくない方もいらっしゃると思います。本記事でご紹介した取り組みや生理を正しく理解する機会が増えることによって、両者が尊重される社会になることを願っています。)

クチコミを分析すると消費者の意思や行動がわかり、いま企業やブランドが求められていることや、提供すべき価値などを知る機会になります。ソー文研は2021年も研究を続けながら、ソーシャルリスニングの価値を伝えていきます。

※オーガニックツイートは、リツイートなどによって拡散されたツイートを除き、一次発信されたツイートのみを指します
髙品 万紀子(たかしな まきこ)
ソー文研 研究員。2020年4月にトライバルへ入社し、プランナーチームに所属。ソーシャルメディア運用からプロモーション、ファンイベント、PRなどの戦略策定や施策のプランニングまでを担当。異文化の探求に熱意を注ぎ、ASEANをこよなく愛する。
Twitter @mkmknemuina

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