ジョージア国立バレエ「白鳥の湖」+ABT クロエ・ミスルディン @ロンドン
State Ballet of Georgia
Swan Lake
Thursday 13 April 2024 at 19:30, London Colliseum
ジョージア国立バレエの来英公演白鳥の湖を見てきました!(ど定番古典の白鳥なのでネタバレとか気にせず全部書いてます。ネタバレ聞きたくない人はどうぞ見ないでください!)
最初は、ごめんなさい、全く興味なかった。舞台天国ロンドンで限られた予算でやりくりしているので、白鳥は興味ある新演出か新振付、もしくはめっちゃ見たいダンサーがいるときしか食指が動かないのです。そしたら私がめっちゃ見たかったダンサーが客演というニュース!それがアメリカン・バレエ・シアターのクロエ・ミスルディン。クロエはつい先月ABTのプリンシパルに昇格したばかり大注目の若手スターダンサー。その前からインスタですごく気になってたダンサーなのですが、ホットな話題のダンサーが今、しかも演目も昇格したのと同じ白鳥ということで、これはもう絶対行くでしょ!となったのでした。(ちなみにアメリカのダンサーやカンパニーがイギリスに来るのも非常に稀なのです。ABTはもう10年以上くらい来てない)
ジョージアの白鳥は、ザ・古典。バレエを知らない人に白鳥の湖ってこんなですよ〜と見せるのに相応しいど定番。衣装も中世風で(袖に振袖みたいなひらひらがついてる)おとぎ話って感じ。それが仇となったかわかりませんが、チケット売れ行きがあんまり芳しくなかったらしく、私がクロエの客演を知った3週間前でチケットが20%オフになっててめちゃラッキー!と思ったのも束の間、購入直後にさらに45%オフ!もっといい席で見れたのに悔しい!と観客側は思うんですが、主催者側は胃が痛かったことでしょう…。もしやガラガラなのか⁉︎と思いきや、この日はかなり人がいっぱいでした。おそらくロンドンのバレエファンがクロエの客演ニュースを聞いたと思われます。(公式ではキャスト表は見つけられなかったけど、ロンドンバレエファンのフォーラムでクロエの出演日を特定することができました。)
クロエの白鳥は、それはもう本当に美しかった! バレリーナなんてみんな美しいですが、その中でも光るクロエのプロポーションの圧倒的美しさ。(ちなみにお母様のヤン・チェンも元ABTのダンサーだったんですが(私世代はテレビのとんねるずの木梨「憲武バレエ団」がABT遠征に行った時の映像で拝見してます。)背はあまり高い方でなくてかわいらしい感じのスタイルでした。)長い手足がしなやかに動き、まさに理想のオデットそのもの。テクニックも素晴らしく、プリンシパルへのスターダムを駆け上っただけある期待の星! というのを見せつけてくれました。白鳥を全幕見るのは久しぶりで、多分前回はロイヤルのスカーレット版白鳥、単品ガラでもロイヤル版だったので、普段たおやかな白鳥を見るのに慣れてましたが、さすがロシア系のジョージア、オデットもかなり表現豊か。美しく長く伸びたクロエの羽がめちゃくちゃ物語っていました。足のラインも美しく、アダージオ最後の180度パンシェ、バリエーションでも美しく伸びた足にいちいちため息。テクニックは音楽性も伴ってパーフェクトで、バリエーションでアチチュード&アロンジェでの長いバランスはそのまま飛び立って行きそうでした。コーダでの早いパッセも音楽にピッタリあって完璧。ブラボーの嵐でした。
二幕で(ちなみに四幕構成だけど休憩は2−3幕間の一回きり。長!と思ったけどまあまあいけた。)クロエのオデットピッタリ!と思ったけれど、三幕でのオディールも華やかに登場した瞬間、完全なるファム・ファタルぶりでした。オデットと同じようなアームスのしなやかな動きもオディールとしてはとても妖艶に見えて、それは王子も落ちるのも納得の誘惑ぶり。ちなみにヴァリエーションはグリゴローヴィチ版でした。音楽だけでなく振り付けも。私が好きなやつ! (版権的にいいの?といらぬ心配をしてしまいますが…。実はグリゴローヴィチじゃなくてファジェーチェフとか古いボリショイの伝統の振りとかなんかな)私はオディールはこの音楽の方がしっくりくると思うんですよね、妖艶な感じがオディールっぽくて。普通のやつはなんかかわいい感じで悪女っぽさが聞こえないというか。振り付けもかっこよくて悪女オディール!って感じで好きです。そのヴァリエーションをクロエで見られただけで幸せ。コーダのフェッテは前半はシングルダブル、後半はシングルでしたが、ロシア版の高速コーダで綺麗に回っていたので見ていて爽快。ドンキや黒鳥のコーダはロシア版のように高速でギューンとやってくれる方が盛り上がって私は好きです。(もちろん振りは音楽には合わせて欲しいけれど!)もちろん今回もこのコーダが最高潮でした。
他のキャストで目を引いたのは、日本人キャストのお二人! 日本人だから目を引いたんじゃないよ! 本当に素晴らしかったです。(というのも、今回ギリギリに入場したのでキャスト表は休憩まで見られなかった。バルコニー&がっつり近眼なので、東洋人…かも?ぐらいしか認識できない)1幕、王子の横にいる王子の友人のベンノの方がめちゃくちゃノーブルだわ…と思ったら、日本人の細谷さんでした。細谷さんはノボシリヴィスクにいらっしゃった時から踊り見てみたいな、と思っていた方なので今回見られてラッキーでした! そしてパ・ド・トロワで目を引いた方の女性も偶然日本人のカガワトモネさん。足の伸びなどのラインがロングスカートの上からでもわかる美しさでした。
古典白鳥ってもう知ってるしな〜と思っていても、3幕以降の構成にバリエーションが見られるので前知識なしで見たらわりと楽しめることを今回学びました。今回ジョージアの3幕は、ハンガリー、イタリア、ポーランドのがちキャラクテール。あれ、ロシアとスペインないやん…私スペイン好きなのに…。なんなら数あるバレエのスペインの踊りでは白鳥のスペインが一番好きなのに。登場部分がかっこいいから。と思ったら、スペインはロットバルトの取り巻きみたいな感じで出てきました。(キャラクテール、嫁候補の踊り、オディール登場、スペイン、パドドゥの順)スペインかっこよくて好きなのはみんな同じだったのか、スペインだけ異様な盛り上がりでした。あまりに盛り上がってたのでなんか他のキャラクターダンスが可哀想なくらい。笑
そして4幕。私的には黒鳥のパドドゥでもうクライマックスという感じでいつも4幕はだれだれなんですが、ここで初めて、「お、このバージョンはハッピーエンドかバッドエンドかどっちだ?」という、なんかサスペンスドラマの犯人探しをするような感じの楽しみ方ができてきて面白かった。笑 で、ジョージア版は、〜〜〜〜〜ハッピーエンドでした! 意外!ロシアっぽい&がち古典というので悲劇かと思いきや。最後に愛は勝つ、的な感じでロットバルトがやられて(おそらく)、オデットは姫に戻ってめでたしめでたし、でした。
私は本当にクロエの白鳥を見られただけで満足! の舞台でした。が、他の公演日はどうだったのかな〜。この公演日を過ぎた後も45%オフです〜!という広告がSNSにいっぱい流れてきていて、人ごとながら不安でした。もうちょっと珍しい演目の方が私的には見たい!って思うのですが、やっぱり定番の方が売れ行きがいいのでしょうか。という視点から言うと、来年の新国立劇場バレエの来英公演も、ロンドンでは見られない演目やって欲しいな〜って思ったり。もうジゼルって決まってますけれども。ジゼルはロイヤルもENBもしょっちゅうやってるからなあ。ローラン・プティのコッペリアとか蝙蝠とか、ビントレーのアラジンとか、ローラン・プティとか‼︎笑 個人的にプティ作品が大好きなので熱望。ロンドンではENBがめちゃくちゃ稀にカルメンとか小品をやるくらいでレパートリーに入れてるところがあまりないので是非やってほしい〜!