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【意訳/抜粋】将来編:2031年以降 ①

未来は今:持続可能な開発を達成するための科学


はじめに

2012年のリオ+20会議での「我々の求める未来(The future we want)」と、2015年のハイレベル政治フォーラムで国連加盟国に決定された「我々の未来を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ(“Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development)」。
それら2つの成果文書は、持続可能な開発に関する国際報告書にて報告されることとなっている。
2016年フォーラムでの宣言では、加盟国は別組織の独立した科学者たちから4年に1度の報告書を作成してもらうことを決めた。
その科学者たちは、国連事務局長に指定され、また、地理的およびジェンダー的にバランスの取れた経歴、科学的分野そして機関から選ばれた15人の代表だ。

本報告書「未来は今:持続可能な開発を達成するための科学(The Future is Now: Science for Achieving Sustainable Development)」は、独立した科学者集団が作成した初めての、4年に1度の持続可能な開発に関する国際報告書なのだ。


2019年の独立科学者集団の一覧

共同議長
• Peter Messerli (スイス), 開発と環境センター(Centre for Development and Environmen), ベルン大学, スイス
• Endah Murniningtyas (インドネシア), 国家開発企画庁(Bappenas), インドネシア共和国

会員

• Parfait Eloundou-Enyegue (カメルーン), 開発社会学部, コーネル大学, アメリカ合衆国
• Ernest G. Foli (ガーナ), 科学産業研究評議会 (CSIR), 林業研究所, ガーナ
• Eeva Furman (フィンランド), フィンランド環境研究所 (SYKE), フィンランド
• Amanda Glassman (アメリカ合衆国), 開発と環境センター, アメリカ合衆国
• Gonzalo Hernández Licona (メキシコ), 社会開発政策評価国家委員会 (CONEVAL),メキシコ
• Eun Mee Kim (大韓民国),国際大学院 ,梨花女子大学校 , 大韓民国
• Wolfgang Lutz (オーストリア),ビットゲンシュタイン人口統計および国際人的資本センター , 国際応用システム分析研究所 (IIASA), オーストリア
• Jean-Paul Moatti (フランス),開発研究所  (IRD), フランス
• Katherine Richardson (デンマーク), 持続可能な科学センター,コペンハーゲン大学 , デンマーク
• Muhammad Saidam (ヨルダン),王立科学協会 , ヨルダン
• David Smith (ジャマイカ),持続可能な開発研究所 , 西インド諸島大学 (UWI)
• Jurgis Kazimieras Staniškis (リトアニア),環境工学研究所 ,カウナス工科大学 , リトアニア
• Jean-Pascal van Ypersele (ベルギー), 地球生命研究所,ルーバンカトリック大学 , ベルギー


持続可能な開発に向けた変革

望ましい変革を必要な規模・スピードで達成するための6つのエントリーポイント
・現状のペースでSDGsの取組みが継続した場合に2030年以降に起こり得るであろう状態

▷求められている行動


A.人間の福祉と能力
・3億4200万人が極度の貧困層

▷全てのステークホルダーは、貧困の撲滅や強靭性強化に、国際的な食糧と品質の高い基本的なサービス(健康、教育、水、トイレ、エネルギー、防災リスク管理、十分な住居、社会的包摂)に多角的にな視野で貢献しなければならない。それらはまた、誰でもいつでもアクセス可能であることと、貧困と脆弱さが集中して降りかかっていて、最も取り残されやすい個人に特別な注意を払うべきだ。それは、婦女子、障がい者、先住民などのことだ。
▷政府は、全人類が力を得て一人一人が正しく変われるような人生を送れるよう、誰でも平等に機会を得ることを約束し、法的であったり社会的な差別を撤廃して、人々の能力をつくることに投資すべきである。


B.持続可能で公正な経済
・年間グローバル資源の使用量が18トン/人 以上(2060年までの予測値)

▷政府、国際組織、民間組織は、持続可能性の低い工程ではなく、より長期的な持続可能性の方向に強く軌道修正できるような投資をすべき。
▷すべての利害関係者は、お金持ちの国、中程度の国益の国、および貧しい国に対して異なるアプローチで協力する必要がある。環境資源の乱用が多い国がGDP成長をしやすいという構造を変えなければならない。


C.食料機構と栄養様式
・6億3700万人が栄養不足(2050年の予測値)
・少なくとも20億人が強度の水ストレス状態

▷すべての利害関係者は、既存のインフラ、政策、規制、標準、および方向性を大幅に変更して、普遍的な健康を促進し、栄養失調を排除しながら、環境への影響を最小限に抑える食品および栄養システムに移行するように努力すべき。
▷先進国が発展途上国の持続可能な農業成長を支援しつつ、品質の向上、レジリエンスの構築、環境影響の削減などのために、食品消費に関連するバリューチェーン全体に責任を負うべき。

D.エネルギーの脱炭素化とエネルギーへの普遍的アクセス
・化石燃料が総エネルギーの78%⇒世界平均気温2℃以上上昇
・6億5000万人が受電できないまま(2040年の予測値)

▷国際/国家機関および利害関係者は、炭素価格と化石燃料の段階的な撤廃を宣誓したパリ協定を現実のものにするために、2050年までのセットゼロCO2排出を実現し、目標7の達成を見据えた国際エネルギーシステムを再編するために協力すべき。

E.都市及び都市周辺部の開発
・都市人口の35%が廃棄物管理システムにアクセスがない
・サハラ以南の都市人口の56%がスラムに住む

▷中央政府は、都市に、効果的で証拠に基づいた包括的な参加方針の確立に参加するための自律性と資源を付与するべき。

F.国際環境コモンズ
・18億人が絶対的な水不足を経験(2025年の予測値)

▷政府、地域社会、民間部門、および国際的な活動者は、持続可能な開発目標を達成しながら、天然資源の保存、復元、および持続可能な使用に必要な変革をすぐに達成するべき。
▷政府は、特に国際環境コモンズに影響を与える環境の外部性を評価するべき。また、価格や規制含むあらゆる仕組みを通して使用様式を変えるべき。


翻訳元

https://sustainabledevelopment.un.org/content/documents/24797GSDR_report_2019.pdf

(参考)「抄訳版」として公益財団法人地球環境戦略研究機関が日本語翻訳し、国際連合広報センターが監修したもの:https://www.unic.or.jp/files/GSDR2019.pdf


用語の意味

【じぇんだー】(ジェンダー)gender・・・男性・女性であることに基づき定められた社会的属性や機会、女性と男性、女児と男児の間における関係性、さらに女性間、男性間における相互関係。<ジェンダーとは、生物学的な性別(sex)に対して、社会的・文化的につくられる性別のことを指し、世の中の男性と女性の役割の違いによって生まれる性別のこと。>参照:UN WOMEN 日本事務所(https://japan.unwomen.org/ja/news-and-events/news/2018/9/definition-gender )(最終アクセス:2021 年 4 月 26 日) 

【きょくどのひんこん】(極度の貧困)extreme poverty・・・1 日 1.90 ドル未満で生活する人々のこと。<2030 年までに、極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。> 

【きょうじんせい】(強靭性)resilience・・・自然災害や戦争などによって社会環境が悪化しても、すぐに元どおりに回復できる状態のこと。レジリエンス。<災害が起きても被害を最小限に抑えられるように、強靭性を構築する。> 

【ほうせつてきな】(包摂的な)inclusive・・・包み込むこと。ある概念が、より一般的な概念の中に包括されること。< すべての人に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルで実効的で責任ある制度を構築するための下支えとなるので、持続可能な開発に向け、平和で包摂的な社会を推進するためには、国際的な殺人、子どもに対する暴力、人身取引や性的暴力の脅威などに取り組むことが重要である。> 

【みずすとれす】(水ストレス)water stress・・・水に対する人間あるいは生態学的な要求に応えられる能力、あるいはそれらの欠如。<水ストレスは、水の入手可能性、質、アクセス可能性を指す。> 

【いんふら】(インフラ)infrastructure・・・産業や社会生活の基盤となる施設やサービス。電気、石油、ガス、パイプラインといったエネルギーや、学校、病院、道路、橋、航空、電車、港といった交通・社会資本、携帯電話回線などの通信網・ICT、水に関する処理や分配などを指す。<時代や場所等の条件によって変化するインフラの種類や重要性を、商業目的に留まらず、いかに公共の利益に還元できるかが重要である。>参照して翻訳:国連(https://unstats.un.org/sdgs/metadata/files/Metadata-17-17-01.pdf )(最終アクセス:2021 年 4 月 28 日) 

【すらむ】(スラム)slum・・・都市における、主に低所得者層の人々が集まって住んでいる区域。貧民街。貧民窟。<都心の栄えている場所とその周辺地域との接触地域(インナー・シティ)や、商業地域と工業地域の交錯地域などにスラムが形成されることが多い。> 


留意点

・画像と中身は関係ありません。
・翻訳元サイトの全部を翻訳するとは限りません。
・なるべく初心者の方でもわかりやすいと感じてもらえるように、場合に応じて意訳と直訳を使い分けるよう心掛けています。(ご指摘ありましたら是非、理由と共に教えて下さい。)
・用語の意味の凡例パターン1:【よみ】(用語または単語)英語・・・意味<使用例>
・用語の意味の凡例パターン2:【英語略称】(日本語読み)英語・・・意味<使用例>

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