拙醒日記 | ゆっくり社会を考える

上手く醒めるのは、むずかしい。 熱狂、毀誉褒貶、攻撃的なことば。これじゃない。 いまを…

拙醒日記 | ゆっくり社会を考える

上手く醒めるのは、むずかしい。 熱狂、毀誉褒貶、攻撃的なことば。これじゃない。 いまをゆるく、考えていく。 本業 →国際政治、書籍企画・執筆、講演企画

最近の記事

米国中間選挙:トランプの自爆

「勝ちに不思議の勝ちあり」という言葉を有名にしたのは、野村克也監督だが、米国民主党の支持者にとっては、こう言いたくなる選挙だったようだ。なんといっても、ビル・クリントン(1994年)もバラク・オバマ(2010年)も、1回目の中間選挙で大敗を喫してきたのだ。まして、彼らよりはるかに負の実績が大きいジョー・バイデンが中間選挙を乗り切れるとは、多くの人にとって想像できない事態だった。 「勝てる理由」がなかった民主党 民主党は、少なくとも連邦上院を制した。下院は、執筆時点ではまだ

    • マスクのそと

      するりと家のなかから逃げてきた、台所の料理の匂い。田畑の土が、キャベツやブロッコリーのような香りを立てる。そうか、あれは土そのものの匂いだったんだ、と、いまさらのように気づかされる。 政府もようやく、屋外ではマスクを外してよい、と本格的に言い始めた。日本の場合、屋外での活動については、法的根拠のある規制などなかったと思うのだが、「外してください」なら言ってもよいだろう。実際、広々とした河川敷なのに、ランナーやサイクリストが、息苦しそうにマスクを着けていた。「外してください」

      • 安定政権という「夢」

        政権が短い期間でくるくる変われば、不安定な政治、という。政権が長く続けば、長期政権のおごり、といい、あるいは権力は腐敗する、という。まことに世間は口さがない。 1年ぶりに、日本では政権が変わったらしい。 「変わったらしい」と、日本に住んでいるくせに、他人事のように言いたくなる。目が日本にあまり向いていないのもあるのだが、日々のニュースについて見る気がしなくなって、ずいぶん経つからでもある。 「新政権が成立しました」。 そうか、新政権ができたんだな。 「安定」が足を掬う一

        • キャンセル・カルチャーをめぐる政治

          キャンセル・カルチャー(Cancel Culture)が、アメリカ政治で大流行である。著名人や政治家などの、文化的・政治的に「正しくない」とみなされる行為や言動を批判し、「キャンセル」してしまうというムーヴメントだが、すっかり政治問題となってしまった。 日本ではまだ、「キャンセル・カルチャー」という言葉が政治の舞台で語られることは少ないが、もしかすると今後、いわゆるネット右翼を中心に浸透するかもしれない。今回は、そんな「キャンセル・カルチャー」(以下、鍵カッコなしで表記)に

        米国中間選挙:トランプの自爆

          トランプ・ラビリンス

          「トランプは共和党のキングメーカーになるかもしれない」 最近、この種の発言を聞くことが増えた。 筆者の知人の場合、ほとんどはネガティヴだ。しかし、たまに肯定的な人もいる。トランプに党が牛耳られてしまうことを警戒している共和党支持者のは、少なくない。逆に、民主党支持者は「ざま見ろ」と言わんばかりに喜んでいたりする。 キングメーカー・トランプ?共和党のイギリス支部(※1)の人物が、BBCに「トランプはキングメーカーになるかもしれない」と発言していた。連邦議会への突入という始

          二度目もみじめな笑劇としてーートランプ弾劾の結末

          「すべての偉大な世界史的な事実と世界史的人物はいわば二度現れる…(中略)…一度目は偉大な悲劇として、二度目はみじめな笑劇として。」 この有名な言葉で始まるのは、マルクスによる『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』だけれど、ドナルド・トランプに対する弾劾は、1度目も2度目も、みじめな笑劇だったような気がする。1度目は民主党にとって、2度目は共和党にとって。 幕切れは早めにトランプに対する2回目の弾劾裁判は、2月9日から13日までの5日間という、異例の短さで結審した。元大統

          二度目もみじめな笑劇としてーートランプ弾劾の結末

          「劇薬」トランプの代償

          共和党にとってドナルド・トランプは、劇薬だったらしい。誰が対抗馬でも勝てないはずだったヒラリー・クリントンを降し、2018年中間選挙でも上院多数派を維持した。劇薬は効くときにはよく効いた。ところがその代償は、重く苦しい。 大統領を退任して3週間、一度は「トランプ追放」に傾いた党幹部も、支持者のバックラッシュに遭遇して、立場を反転。そうすると中道に近いグループが「あんな異常者に付き合ってられるか」と共和党からの離脱を模索。そうこうしているあいだに、重要なブレーンや支持者が離党を

          「トランプ信者」の裏側

          ドナルド・トランプ大統領の退任が、あと12時間ほどに迫った。 ABCやNBCといった比較的中道を行くニュース・メディアも、喜々として「あと12時間だ」とカウントダウンしている。報道は、大統領就任式に向けた警備状況や、新型コロナウイルス(特にワクチンに関するもの)が、多くを占める。おいおい、次期国務長官とかの公聴会はそっちのけでいいのかい、と若干つっこみたくなるほどだ。アメリカの主要メディアの関心は、トランプとコロナという2つの大きな「敵」の排除に、もっぱら向いている。 とこ

          カジュアルな反乱

          アメリカの連邦議会議事堂が暴徒に突入され略奪を受けるという光景を、自分が生きているあいだに見ると思っていた人は、そう多くなかっただろう。映画では、宇宙人やゾンビによって攻撃・炎上させられる「常連」の場所だが、現実には、ナチス・ドイツやアルカイダも攻撃できなかった、アメリカ政治の中枢。しかし、2021年1月6日のフィクションめいた現実には、どこか喜劇めいたカジュアルさが漂う。事件がもたらす影響の深刻さにもかかわらず、である。 「4時間の反乱」まず簡単に、事件の概略を確認してお