柿田川 朝(かきたがわ あさ)

好きな本を、自分が楽しむために翻訳したいと思ったので、noteを始めました。好きな部分…

柿田川 朝(かきたがわ あさ)

好きな本を、自分が楽しむために翻訳したいと思ったので、noteを始めました。好きな部分から進めていって、最終的には全文翻訳できれば良いなと思います。 「あしながおじさん」の全文が終わり、いまは続編「Dear Enemy」に取り組んでいます。

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ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.135~137★初回

マサチューセッツ州ウスター ストーンゲイト荘 12月27日 ジュディへ  お手紙届きました。びっくりして2回読んじゃった。ジャービスさんからあなたへのクリスマスプレゼントが、ジョン・グリア孤児院を模範的な施設に改革する事業で、それで、あなたはそのお金をつかう役目に私を選んだ、ってこと? 私が――このサリー・マクブライドが、孤児院の院長! ――かわいそうに、気がふれちゃったのね。じゃなかったら、二人そろって阿片中毒になっちゃって、熱にうかされて幻覚を見ながらうわごとでも言っ

    • Dear Enemy完結!

      去年の秋から(!)取り組んでいた「Dear Enemy」の翻訳が、ついに終わりました…感無量です…。 ここまで読んでくださった皆さま、どうもありがとうございました。 取り組む前から難しそうだなーと思っていて、実際に難しかったのですが、でも本当にやった甲斐はあったと自分で思っています。 ラストの一言だけは、半分くらい終わった時点でもう決めてあって、それに向けて進んでいました。 原文だと最後は「!」ではないんですが、ここまで伏線的にひっぱってきたスコットランド訛りを「どやあ!」

      • ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.345~348★最終回

        ジョン・グリア孤児院にて 土曜日、朝の6時半! 大好きな敵さま 「もうすぐきっと 素敵なことが起こるよ」  今朝起きたとき、何があったか思い出して驚きませんでした? 私は驚いちゃった! 2分くらいは、どうしてこんなにも嬉しい気持ちなのかわからずにいました。  まだ明るくなってはいません。でも私はばっちり目を覚まして、どきどきしながらこうして手紙を書いています。あとで、最初にここへやってきた、信頼のおける子に手紙を託します。それで、オートミールと一緒に、この手紙があなたの朝

        • ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.343~344

          (続き) 金曜日  今日、ドクターに会ってきました。包帯でぐるぐる巻きにされていて、見るだにお気の毒な様子だった。でも、どうにか、私たちはここまでのすれ違いをみんなもとの軌道にのせることができました。それなりに言語理解力のある2人の人間が、自分たちの心理的なありようをお互いにまったく伝え合えないなんて、悲惨じゃない? 私も彼の考えてることは最初から理解できなかったけど、彼のほうは、いまだに私の考えてることを理解できないみたい。私たちみたいな北方の人間って、なんだってこう、冷

        • 固定された記事

        ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.135~137★初回

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.342~343

          1月29日 木曜日 ジュディへ  先週ばーっと書きなぐって送った10ページの手紙は、とんでもなく支離滅裂だったでしょうね。あの手紙はびりびりにやぶってねって言ったけど、ちゃんと守ってくれた? 私の書簡集にあの手紙が入っちゃったら嫌なのよ。私の精神状態は、まったくお恥ずかしくて、衝撃的で、外聞の悪いものではあるけど、でも人間の感情はどうにもできないもの。普通なら、婚約するってとても嬉しい気持ちになるもののはずよね。ところがそんなものは、ああ、婚約を解消した、この何にも束縛され

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.342~343

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.341~342

          ジョン・グリア孤児院にて 木曜日 敵さま  いまの私は、先生に対して、とっても友好的な気持ちになってるんですからね。私が「マクレイ先生」ってお呼びするときは先生のことあまり好きじゃなくて、「敵さま」って呼ぶときは好きなんです。  サディ・ケイトから、先生のお手紙(と、あとでわかりました)を受け取りました。左手で書かれたにしては、素晴らしい出来だと思いますよ。最初に見たときは、パンチくんからの手紙かと思っちゃいましたけど。  明日4時に伺います、しっかり起きててくださいね! 

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.341~342

          閑話

          どんどこどんどこ話が進んで、ついにクライマックス! ゴードンと別れて、超ウキウキしながら帰っていくサリーの様子が、私は大好きです。相当なストレスだったんだね…。 さて、私が愛読している松本恵子版の翻訳ですが、たまーに翻訳が抜けている部分があります。(まさか意図的ということもないとは思うのですが) さきほど記事をアップした部分にある、私の大変に好きな段落が、松本恵子版では抜けてしまっています。これは本当に残念、ものすごく良いところなのに…。 具体的には、この文です。 村岡花

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.340~341

          1月27日 マクレイ先生へ  この手紙、先生がお目覚めのときにうまく届きますでしょうか? たぶん先生はお気づきでないでしょうけど、私4回もお宅に伺ったんですよ。お礼を申し上げたり、見舞い客として完璧な振る舞いをお見せしたりしようと思って。ギプスで固められた不愛想な英雄さまのファンだとかいうご婦人がたが、花束やらゼリーやらチキンスープやらのお見舞い品を持ってくるものだから、マクガーク夫人はその対応でてんてこ舞いしてるそうですね、感動的なお話です。先生は、華やかな帽子をかぶった

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.340~341

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.338~340

          (続き)  ゴードンは去り、二度と戻らない、という形で決着がつきました。その場に立って、ついに彼の姿が丘の向こうへと消えていくのを見つめながら、私は、自分は自由で、独りで、誰のものでもないんだと気づきました。ええジュディ、解放された喜びと、自分は自由だっていう感覚が、一気にこみあげてきたの。あなたにはうまく説明できないな。幸せな結婚生活を送ってる人には絶対にわかってもらえないと思うのよ、私が感じた、輝かしく素晴らしい「独り」の感覚は。両腕を大きく広げて、急に自分自身のものと

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.338~340

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.337~338

          1月22日 ジュディへ  この手紙は、ジョン・グリア孤児院とはまったく関係のないものです。ただのサリー・マクブライドから。  4年生のとき、ハクスリーの書簡集を読んだこと覚えてる? あの本にあった一文が、いまでも頭から離れないの。「人生にはいつでもホーン岬がある。人はそこを乗り越えるか、さもなくば難破してしまう」。これってまったくの真実だわ。ただ問題は、何かが見えたとしても、それがホーン岬だって判別できるとは限らない、ということ。霧の深い中での航海で、岬だと気づかないうちに

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.337~338

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.336~337

          1月21日 ジュディへ  ヘレン・ブルックスは、あの厄介な女の子たち14人を、じつにお見事な腕前でもって監督しています。誰かに依頼する仕事の中ではこれがいちばん大変なんだけど、彼女は気に入ったみたい。うちの職員に、貴重な戦力として加わってくれそうです。  それから、私パンチくんの話をするのを忘れてました。火事が起こったとき、夏の間パンチくんをあずかってくれてた例の素敵な女性お2人が、さあこれからカリフォルニア行きの汽車に乗りこもうってところだったの。お2人は、パンチくんを荷

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.336~337

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.335~336

          ジョン・グリア孤児院にて 1月16日 ゴードンさま  お願い、お願いだから落ち着いて、事態をややこしくしないでちょうだい。いまこの瞬間に孤児院を辞めてほしいだなんて、まるっきり話になりません。どうかわかって。うちの子たちがこんなにこんなに私を必要としてるときに、それを見捨てるなんてできるわけないでしょう。それに私、まだこの「いまいましい慈善活動」をやめる準備なんてできてません。(これ、私の字で書かれてるのを見たら、ご自分がどんなことを言っていたのかよくわかるでしょう!)

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.335~336

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.334~335

          (続き) 金曜日  どうしてサリーはドクターの様子を少しでも知らせてくれないんだろう、って不思議に思ってるでしょうね。私、直接は何も話を聞いてないのよ、会ってもらえないんだもの。でもね、彼、私以外の人には誰にだって会ってるの――ベッツィ、アレグラ、リバモア夫人、ブレットランド氏、パーシーさん、評議員の皆さまにだって。皆さんおっしゃるには、肋骨の骨折と、腓骨の粉砕骨折については、すこぶる順調に回復中とのことです。腓骨って、折れちゃった脚の骨の具体的な名前だと思うんだけど。彼は

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.334~335

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.332~334

          (続き)  火事が起こったのは土曜の未明で、日曜になったら、近所じゅうの教会の牧師さんたちが、「孤児院が施設としてどうにか稼働するようになるまで、子ども1人か2人をお客として3週間あずかってくれるご家庭はありませんか」って有志を募ってくれました。  その呼びかけへの反応には感動しちゃった。どの子も、30分たたないうちに行き先が決まったのよ。これが、将来的にどういうことになるか考えてもみて――今後、これらのご家庭は、孤児院に対して個人的な関心を寄せるようになるってことじゃない

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.332~334

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.331~332

          ジョン・グリア孤児院にて 1月14日 ジュディへ  聞いて! J.F.ブレットランド氏は火事の件をニューヨークの新聞で読んで(やっぱり都会の新聞はくわしいことを載せるみたいね)、心配にうち震えながら飛んできたの。黒焦げになったここの敷居から転がりこんできて、第一声は、 「アレグラは無事ですか?」  でした。 「はい」  と私。 「よかった!」  彼は叫んで椅子に倒れこみ、 「ここは、子どもを置いておけるような場所ではありません」  と、厳しい口調で言いました。 「アレグラ

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.331~332

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.329~331

          (続き)  残っていた子どもたちは、大人と一緒になって夜じゅう働いてくれた年長の男の子たち以外、親切なご家庭何軒かにあずけることができました。町が一丸となって私たちを助けてくれようとするその光景に、私、心の底から感動しました。この孤児院の存在すら知らなかったんじゃないかというような町の人が、夜中に駆けつけて、自分の家を使っても構わない、と言ってくれるのよ。みんな子どもたちを家に入れて、温かいお風呂に入れて、熱いスープを飲ませて、ベッドに寝かせくれるの。いま私が把握している限

          ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.329~331