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ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.336~337

1月21日
ジュディへ

 ヘレン・ブルックスは、あの厄介な女の子たち14人を、じつにお見事な腕前でもって監督しています。誰かに依頼する仕事の中ではこれがいちばん大変なんだけど、彼女は気に入ったみたい。うちの職員に、貴重な戦力として加わってくれそうです。
 それから、私パンチくんの話をするのを忘れてました。火事が起こったとき、夏の間パンチくんをあずかってくれてた例の素敵な女性お2人が、さあこれからカリフォルニア行きの汽車に乗りこもうってところだったの。お2人は、パンチくんを荷物と一緒にさっと小脇にかかえて、連れていってくれました。というわけで、パンチくんはこの冬パサデナで過ごしています。あの子、このままお2人の子どもになっちゃうんじゃないかしら、なんて私は考えてる。いろんな事件が起こったのに、私がこんな楽しい気分になってること、あなたは不思議に思うかしら?
 
あとから
 今夜は、かわいそうな傷心のパーシーさんがこちらで一緒に過ごしていました。私なら、自分の悩みをわかってくれているから、ってことで。どうして私が、みんなの悩みをわかってるってことになるのかしら? 空っぽの心から同情をしぼり出すのは、ものすごく疲れることなのに。この哀れな青年は、現在めっきり落ちこんでいるんだけど、私の予想では――ベッツィのおかげで――立ち直れるんじゃないかしら。彼はいま、ベッツィを好きになりかかってるギリギリのところで、でも本人は気づいてないの。現時点では、悩める自分をなんとなく楽しんでるような段階にいるわ。自分は悲劇の主人公で、深く傷ついた男なんだ、って。でも私は気がついちゃった。ベッツィが近くにいると、彼、どんな仕事にでも明るく手伝いを申し出るのよ。
 今日、ゴードンから電報が来ました。明日こちらへ来るって。彼に会うのが怖い。だって、言い合いになることはわかってるんだもの。火事の翌日に、彼は手紙で、「孤児院を投げ捨てて」すぐに結婚してほしいって言ってきたの。そのことを話し合いに来るんだわ。私、100人もの子どもたちの幸福がかかっているこの仕事を、そう気軽にほいほい投げ捨てることはできないって、どうしても彼にわからせることができないの。こちらへは来させないように頑張ったんだけど、世の中の男性同様、彼も言い出したら聞かなくて。ああ、私たちどうなるのかしら! 来年の自分がどうなってるか、ちらっとでも見ることができたらいいのに。
 ドクターはまだギプスで固められていて、ご機嫌はうるわしくないものの具合はいいようだと聞いています。毎日、短時間だけ起き上って、見舞い客の中でも厳選された人とだけ面会してるんですって。玄関先でその選別をするのはマクガーク夫人だから、彼女の気に入らない人は入れてもらえないの。
 さようなら、もっと書きたいんだけど、眠くて、目がかぶさってきちゃう(これはサディ・ケイトの言い回し)。もうベッドに入って、明日の107個の課題に立ち向かうべく睡眠をとっておかなきゃ。
 ペンデルトンご一家へ、愛をこめて。

S.McB.

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