ブラームスとクララ・シューマンは恋愛関係にあったのか《3》
前回はこちら。
ブラームスの熱烈な恋文
若きブラームスがクララにどんな感情を抱いていたかは、現存している多数の書簡から推し量ることができます。シューマンの入院後、子どもたちの生活のため各地へ演奏旅行に出かけなくてはならず、多忙を極めていたクララに送られたものです。
あくまでも「友達」だった
―――ここで余計なものを付け加える必要はないでしょう。二一歳の青年ブラームスは、クララに強烈な恋愛感情を抱き、しかもはっきりとそれを表明していました。しかしながら、クララが彼の思いに応じることはありませんでした。
クララがブラームスに送った書簡は、彼女自身の強い要望で破棄されたものが多く、両者の往復書簡集には欠落した部分があります。そこに何が書かれていたのかは、もはや確かめようがありません。シューマンの死後、クララは子供たちへの手紙の中で、ブラームスのことをこう表現しています。
「真の友のごとく、彼は私の悲しみのすべてを分担してくれました。精一杯努力して、私の心を明るくしてくれたのです。つまり彼は、あらゆる意味で私の友でした」
なぜ下世話な噂が流布したか?
ブラームスの側にははっきりと思慕の念があり、周囲から見ても尋常でない関係に見えていたにもかかわらず、二人の関係はプラトニックなものであったと考えられます。それでは、なぜ二人の関係をめぐり、安っぽい昼メロめいた俗説が流布したのでしょうか。ナンシー・B・ライク著『クララ・シューマン』(高野茂訳、音楽之友社)を読みながらその謎を掘り下げていくと、意外な事情に突き当たりました。
(続き)
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