戦争まで引き起こした「イエロー・ジャーナリズム」⑦~イエロー・プレスの特質
(図=イエロー・ジャーナリズムの象徴となったキャラクター「イエロー・キッド」)
前回はこちら。
ハーストがピュリッツァーに挑んだ背景
ところで、ハーストがピュリッツァーに対して激しく敵対心を持った背景には、反ユダヤ感情があったことが指摘できる。サンフランシスコ時代、ハーストは《ワールド》紙のライバルである《ニューヨーク・ヘラルド》紙に肩入れしてこう述べている。
「ヘラルド紙は公正で勇敢な新聞であり、尊敬に値する。エグザミナー紙もかくありたいと願うたぐいの新聞だ。それに引きかえワールド紙は、社主がユダヤ人であるため、不快で不道徳な忌まわしい新聞だ。私はこれを嫌悪しているが、攻撃するには強大過ぎる」
イエロー・プレスの特徴
さて、一部繰り返しになるが、ここでイエロー・ジャーナリズム期の紙面の特色をまとめておく。
①大見出しの多用
言うまでもなく、紙面を見た時に最初に目に入る情報が見出しである。大きな活字で、赤や黒の字で印刷された。つまらないニュースでも、さも大事件が起きたかのように印象づけることができる。事件の犯人を決めつけるような行き過ぎた断定にもつながる。
②視覚的工夫
読者に記事を読ませるため、イラストやカートゥーンのような資格情報が惜しみなく盛り込まれた。できごとを鮮明なイメージとともに報じることもできるが、記者が見てもいない光景をでっち上げたり、誇張したりすることも可能であった。
③内容の虚偽
記事の本文にも多くの問題があった。インタビュー自体が捏造だったり、見出しがミスリーディングであったり、詐欺的な似非科学が紹介されたりした。
④読者へのサービスや社会貢献
ピュリッツァーの《ワールド》紙に始まる日曜付録をつけたほか、「イエロー・ジャーナリズム」の各紙は弱者救済のキャンペーンにも協力的だった。
なお、紙面が俗っぽい内容だったからといって、個人としてのハーストやピュリッツァーの人柄が低俗だったわけではないということに注意しておきたい。「自分の理想とする新聞をつくる」には、まず読まれなければ意味がない。読まれるためには、人が興味を持つ紙面づくりをする。大きなニュースがなくても、新聞社の方で話題を作り出す。有能な経営者が合理的な選択を続けた結果、「イエロー・ジャーナリズム」は誕生したのである。
(続く)
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