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カスピ海は海か、湖か?

「世界最大の湖」として知られるカスピ海。面積は約37万㎢で、日本の総面積とあまり変わりません。

 地理的には問題なく「湖」に分類されますが、2018年に締結された沿岸国の協定では、国際海洋法に基づいて領海が設定されました。つまり、法的には「海」という扱いになっています。

 この合意に至るまでには、「カスピ海は海か、湖か?」をめぐる紛争がありました。

 30年ほど前、カスピ海に面する国はソ連とイランのみでした。国際法上、海には海岸線の長さに応じて領海や排他的経済水域が設定されます。しかし、湖にはそのような規定はなく、基本的に沿岸国が折半します。当時は沿岸国が二か国だけだったので、カスピ海からの資源は均等に二分しておけば問題ありませんでした。

 しかし、1991年にソ連が崩壊すると事情が変わります。ソ連の解体により、カスピ海の周辺にカザフスタン、アゼルバイジャン、トルクメニスタンという独立国ができたためです。

 1990年代半ば、カスピ海に大量の石油や天然ガスが埋蔵されていることがわかり、権益をめぐる対立が深刻化しました。新興の3か国は「カスピ海は海である」と主張し、沿岸の長さに比例して領海などを設定するよう求めました。

 一方、イランは沿岸国の中でもっとも沿岸の線が短く、従来から権益が大幅に後退してしまうため、「カスピ海は海」とする案に強硬に反対し続けてきました。

 しかし、最近になってまた情勢が変わります。アメリカとの対立が激化したイランは国際的孤立を深め、ロシアとの接近を模索。カスピ海問題でも譲歩し、2018年に歴史的合意がなされた、というわけです。

 合意の中で「カスピ海は海」と明記されたわけではありませんが、国際海洋法に基づいた線引きがなされたのです。

(参考)



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