トトロ

塾講師&パートいろいろ。童話も書いています。読んでほっこりする童話を書いていきたいと思…

トトロ

塾講師&パートいろいろ。童話も書いています。読んでほっこりする童話を書いていきたいと思っています。

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最近の記事

夕暮れの飛行機雲 ⑧(小説)

  十年前からこの町はほとんど変わらない。  駅前の商店街の店はシャッターを下ろす店が少し増えただけで、新しい居酒屋とカフェがそれぞれ一軒できただけ。それだけだ。  時の流れから取り残されたように、今も人々は穏やかな暮しを守っている。  実家に帰ってから私は、あまりに時の流れが遅く感じ、何度も時計を見る。  なんて太陽はゆっくりと一番高いところまで上っていき、そして沈むのだろう。夜ともなれば、その闇の明けるのが百年先に感じられる。  遠くに日本アルプスの山々が見える平和な田舎

    • 夕焼けの飛行機雲 ⑦(小説)

      夕暮れの飛行機雲 ⑦    どうしたらいいんだろう。  僕は実家の自分のベッドに仰向けになり、天井を見ながら考えた。  部屋は僕が高校生の頃とぼほ一緒だった。  ほとんど家に帰らないんだし、机もベッドも本棚も片づけていいよ、と母に言っているのだが、いつ来ても無くならずに同じ場所にあった。強くなることにあこがれて貼ったジャッキーチェンのポスターもそのままだ。  真理の痩せて元気がない顔が頭から離れない。  何とかして、真理をを元気づけたい。  しかし、方法がわからなかった。  

      • 夕暮れの飛行機雲 ⑥(小説)

         夕焼けの飛行機雲 ⑥  川べりの並木道の緑が濃さを増すにつれ、クラスも受験の雰囲気へと変わっていった。  今年の夏はきっと、家族での一泊旅行もなく、夏祭りも浮かれ気分では行けないに違いない。去年、ゆかたと帯を新調したばかりなのに・・・  私は来年の春に迫る高校受験を前にして気が重い日々を送っていた。  夢見がちだった将来も現実の路線に軌道修正しなければいけない。偏差値という名前だけ知っていた言葉が意味をもつようになってくる。  未来は、それまで私が思っていたようなキラキラ

        • 夕暮れの飛行機雲 ⑤(小説)

           そういえば、祐樹は声がとてもよかった。  張りがあって艶艶している感じ?  特に声変わりしてからというものは、そこに包み込むような優しさも加わってその魅力的だった。  私は「声、いいね」なんて、とても恥ずかしくて言えなかったけど。  本人にはその自覚がないようで 「今日、後ろの席の女子に、声優になれば?なんて言われたんだ。何でかな?」  なんて、本当に理由がわからないって調子で言ったりした。  中学生になってクラスが別々になった私たちの会話と言えば、もっぱら携帯電話だった。

        夕暮れの飛行機雲 ⑧(小説)

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        • 童話
          1本

        記事

          夕暮れの飛行機雲 ④(小説)

             新緑がまぶしい土手の上の桜並木を、僕はやや速い速度で走る。  田舎の、そして初夏の匂いがする。  カラッとした風は涼しいくらいで、汗も滲んでこない。だんだんペースを上げていく。  小さな孫を散歩させているおばあさん、ベビーカーを押す若いお母さん、ウォーキングしているおじいさん。いろんな人とすれ違う。みんなそれぞれのペースで散歩を楽しんでいた。  やがて左手に水色の欄干の大きな橋が見えてきて、僕はそこを渡り、今度は土手の道を折り返す形で走り続けた。  真理、ちゃんと帰れた

          夕暮れの飛行機雲 ④(小説)

          夕暮れの飛行機雲 ③(小説)

            祐樹、かっこよかったな。  私は家へ帰る道で何度もそう思った。カーネーションの鉢を抱えているけど重たいというほどではない。  紺色のナイキのトレーニングウエアの上からも、ほどよく筋肉がついているのがわかった。健康的な二十代の若者の見本のようだった祐樹。  小さな頃は私よりもずっと背が低くて、手も足も棒切れのように細かったってけ。私の三倍は風邪をひくことが多かったように思う。  そんな祐樹がどんどん逞しくなっていったのはいつからだろう。  そうだ、五年生の時、サッカーチーム

          夕暮れの飛行機雲 ③(小説)

          夕暮れの飛行機雲②(小説

          記憶障害、ってほどでもないけれど、ときどき自分がどこにいるのかわからなくなる。  立ち止まったときに、自分がどこへ行こうとしていたのかわからなくなったり、なぜ自分がこれをやり始めたのかわからなくなったり。まるで八〇才過ぎのおばあさんみたいだ。  病院の先生は「一時的なものですよ。だんだんそんな症状は出なくなっていくので大丈夫。」と言っていたけど、一向によくなる様子はない。でも、どうでもいいや。未来なんかないのだから。  つい外へ出てしまったのも、そんな症状のせいだ。  だから

          夕暮れの飛行機雲②(小説

          夕暮れの飛行機雲①

           五月の風がバラの香りを運んできた。  隣の家のおばさんはバラづくりが趣味で、毎年この季節になるとむせるようなバラの香りが私の家の庭まで届いた。  とはいってもこの香りをかぐのは五年ぶりかな。  去年は病院で、その前の年までは結婚して別の土地に住んでいたから。  天国もこんなバラの香りで満たされているといい。映画で見る天国は花がいっぱいで、みんな白い服を着て天使なんかもいる。  最近はすごく身近に感じる天国のことを思う。とはいえ、体の方はどこも悪くない。ただ気持ちが天国に近い

          夕暮れの飛行機雲①

          童話を書いてみた

          何年か前に書いた童話を書き直してみました。 当時は完成した話しだと思っていたけど、いろいろ読みづらい所も見つかって・・・ 自分ではだいぶよくなったと思います。 時間があったら読んでください。

          童話を書いてみた

          電子書籍が出ます。小中学生をもつ親御さんにぜひ読んで欲しいです。 https://www.amazon.co.jp/dp/B0B782G21P

          電子書籍が出ます。小中学生をもつ親御さんにぜひ読んで欲しいです。 https://www.amazon.co.jp/dp/B0B782G21P

           怠け者のサトウさんを変えたものは

           五月のある晴れた日のこと。  サトウさんはいつものように庭のベンチに座ってぼんやりしていると玄関のベルが鳴りました。  たいていセールスの人しかたずねてこないので、いつもなら無視するところですが今日はそうもいきません。  なぜなら玄関から、サトウさんのいるベンチは丸見えだったからです。おまけにその訪問客とサトウさんは目が合ってしまいました。 「こんにちはー。おじいさん」  お客は大声でおじいさんにあいさつをしました。  野球帽をかぶった10歳ぐらいの男の子でした。  子供が

           怠け者のサトウさんを変えたものは

          とかげと兵隊さん

           砂漠の真ん中の小さな小屋に若い兵隊さんが一人で住んでいました。  兵隊さんの仕事は小屋の横の見張り台から国境を見張ることです。  となりの国から侵入しようとする人がいたら警報を鳴らしてやめさせなくてはなりません。  もともととなりの国は兵隊さんの国と同じ国だったので、本当は兵隊さんもそんなことはしたくないのですが、仕事なので仕方ありません。 「つらい仕事だなぁ。貧しくて仕事を求めてやってくる人を本当は助けたいのに追い払わなくてはいけないなんて」  そんな思いを抱えながら、兵

          とかげと兵隊さん

          海辺の美容室

           その美容室は急な坂の途中にありました。  お客がドアベルを鳴らして店に入ると、少し太めで花柄のエプロンをしたおかみさんが 「いらっしゃい。お疲れでしょう」 とニコニコしながらむかえてくれます。  そして他にお客がいないときはよい香りがするハーブティーを出してくれます。  お客は登山かと思うような坂道をよっこらしょよっこらしょと登って来たものですから、出されたハーブティーがそれはおいしく感じられるのでした。  「どうしてこんな坂の上に店を作ったのです?」 と、ときどきおかみさ

          海辺の美容室

          ミュウがいた日々

           目覚めたとき「いい夢だったな」と私は思った。  こんな夢を見たのは何年ぶりだろう。  幸せな気分を忘れないように何度も同じ夢を反芻する私。  それは中学の同級会。  私のまわりには2,3人の男子がいる。 「聞いたんだけど、おまえの行っている大学、いいとこなんだって」 「へー、そうなんだ」  べつの男子が言う。  私はそんなことなにのにな、勉強しても三流の大学しか入れなかったのに。どこからそんなデマが流れたんだろう。と思いつつ 「そんなことないよ」 と答える。 謙遜ともと誤解

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          ミュウがいた日々

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          フィルムが止まった

           午後8時。久々に服でも眺めるかな。  巨大なターミナル駅からファッションビルに繋がる通路を僕は歩いていた。  ロータリーに置かれたキャラクターのオブジェから放つ鮮やかな光や木々に点けられた青い電球や付近のビルの窓からの白い光。そしてごった返す人並でテーマパークか何かにいるような気分だ。  遠くから生の歌声が聞こえた。  歩いていくうちに次第に大きくなる若い女性の歌声。  かなりうまい。  のびやかで何か神がかりのようなものを感じさせる。こういうのを癒されるというんだろう

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          フィルムが止まった

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          海に浮かぶ月

          踏切の向こうに青い海が見える。  そして水平線から伸びる入道雲。  夏の暑さと共鳴しているかのように、カンカンカンとかん高い警報機が鳴り響いている。  僕は遮断機ごしに海を見ながら電車を待っていた。  太陽なほぼ真上から照りつけている。  暑っ!  僕は思わず口に出した。 夏はここ2,3日「最後のあがき」のように35度以上の高温を叩き出していた。    バイトの帰りだった。  春から始めた駅前のカフェでのバイトにもようやく慣れ、バイトの先輩から怒られることもなくなり最近よくや

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          海に浮かぶ月

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