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詩作集・天網恢恢

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この世界はみんなで見ている夢にすぎない。そこを出発点として。
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#詩

[208 湧出詩] 鵺の鳴くころ、秘密めいた泉で

それはぼくだって、幸せになりたいさ。結局はそれだけのことだろ。

遠い星から送られてくる思考の連鎖に、即興の形を与えてやることができれば、心は少しばかり落ち着いて、闇の中、静かに踊り始める。

それでぼくは、今日もこうして無為の時を過ごし、それが徒食であれ自然であれ、とにかくそいつを絶対的に肯定してしまうことで、目の端ににじむ涙を成仏させる、大海原へと向かうガンガーの流れへと合流させる。

放り出

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終わらない夏休みの唄

終わらない夏休みの唄

何かが生まれてこようとしています。

この世界の片隅で。
あなたの心の奥底で。
全宇宙のど真ん中で。

涸れることのない泉がそこにはいつもあるのです。

この世界が存在する限り。
あなたが生きている限り。
全宇宙の寿命が尽きるまで。

だからあなたは。

何もしなくていいのです。
何にもならなくていいのです。
何かのために生きるのではないのです。

あなたは生まれてきたのです。
あなたは育ってきた

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3.11+3.11i

3.11+3.11i

今日しか書けないことがある
だから今日書く

今ここで感じていることを
今ここで書く

生きる苦しみも喜びも
すぺて書く

あの日の絶望を忘れずに
あすへの希望を書く

今日は書けないことがある
だから今日は書かない

今ここで感じていることなど
言葉にできるわけがない

生きる苦しみも喜びも
味わうしかない

あの日の絶望を手放して
あすへの希望を忘れて

実在に虚在を足し合わせたとき
真実が現

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[全文無料・小さな詩]天人午睡

[全文無料・小さな詩]天人午睡

とことん
眠りにうつつを抜かすのだ
午後の白い光の中

安宿の
くたびれた寝台の上で
寝返りを打つきみは

悪夢未満の
寝心地の悪さが身に沁みて
脳の芯まで浸して

切りのない
寄せては返す自己否定の
波また波の珊瑚の浜を

いつか見た
砂漠の駱駝に重ね見て
奈落の底を仰ぎ見て

そうだ
まばゆい地獄へと昇ろう今こそ
微熱に包まれた背中には

かげろうの羽
光きらめかせ軽く風に乗って
重力のくびき

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[詩][全文無料]ぼくのわびさびタイム

[詩][全文無料]ぼくのわびさびタイム

もうすぐ夜が明けます
バスのクラクションがときどき聞こえます
インドはラジャスタン州
梵天さんの聖地プシュカルにいます

レノンとディランのわびさびが
ぼくの心を打ったのです
それでぼくはこうして
あふれ出てくる言葉を綴るのです

ねえあなたは愛とか平和とか
世間の人たちが笑いものにする言葉を
笑ったりしないでしょ

手紙でそう訊かれたことがあります
はたちの頃の話です
その女の子のことが少しばか

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そこにある何かをみんなが

そこにある何かをみんなが

そこにある何かをみんなが
つかもうとしている 
じぶんのものにしようとしている

いつか聴いたドラムのビート
心揺さぶる真実の言葉
異国の空の荒涼とした輝き

そこにあるのに掴めない何かを
じぶんのものにしようと
あがいてじだばたとしてぼくらは

調子の狂うドラムのキック
だれにも届かないよじれた寝言
ピントのぼけた無数の写真

そこにあるものを掴まなくていいのだと
いつか気づいたときこそが
きみ

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[詩]ふらふらと、ひとりよがりの

[詩]ふらふらと、ひとりよがりの

きのうの朝にはマレーシアのペナン島で
南インド料理のドーサイなど食べていたのですが
今はタイのハートヤイという街で宵の口
ビア・チャンという象印のビールを飲んでます

とうに半世紀をこの世で過ごしてしまい
この先いつまでこんないい加減な暮らしが続くのか
そこのところはまったく分かりはしないのですが

とにかく今この瞬間に
こうしていられることの僥倖を
神に感謝して噛みしめて
一人よがりの「修行」の

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すこしおもたいのがきたので

[全文無料です]

すこしおもたいのがきたので
おちついてことばにしてみる

いきるということには
なんのいみもないんだ
まわりからいわれたことをとりいれて
じぶんでこれがいきるいみだと
きめたいじょうのことは

いきるべきりゆうというものが
そんなようなものなので
いきるということにきちんとつながっていない
ぼくのようなそんざいは
ふとしたはずみでかんたんに
へこたれる
うんざりする
どうでもい

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[詩]暑さにうだりながら

[詩]暑さにうだりながら

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どこまでも遠くに行きたいと思った
どこにも行かなくていいと思った
ぼくの心はいつもふらふら
きみを想っていつもゆらゆら

きみとならどこまでも行けると
あのとき確かに思った
なのにここらが限界とあきらめて
いつもきみから逃げ出そうとしている

スピティ渓谷の奥深くまで踏み入って
ヒマラヤの雪を眺めながらチベット僧の勤行に
この身を震わせたい

道も通らぬアマゾンの森で狩猟採集の

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言葉なんてほんとは

言葉なんてほんとは

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言葉が出てこない。
そんな日もある。

眠れないし何も手につかない。
そんな夜もある。

タイの安宿は暑くて蚊も多くて、
よく眠れない日が続く。

そんな中、売れるかわからない翻訳を
どうにか続けているだけがぼくの存在証明で。

言葉なんてほんとは
いらないんだ。

頭の中の言葉なんか止めちまえば、
世界はいつでも微笑みかけてくる。

逆に魔物が束になってやってくることも
ある

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むかしむかし少年がいた。

むかしむかし少年がいた。
少年は友だちの彼女を好きになった。

友だちから彼女を奪おうと思ったわけではなかったが、
少年は彼女を映画に誘った。

それを知って友だちは不愉快そうだった。

やがてその友だちと彼女は別れた。

少年は仲間たちとねずみの国に行った。
彼女も一緒だった。

少年は彼女とふたりお化け屋敷の乗り物に乗った。
彼女の手が少年のももにおかれた。
奥手だった少年は何も反応できなかっ

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