2020年6月23日

Appleのプライバシーの件、２割くらい予想が的中したような気がします。
プライバシーに関する僕の記事は以下。

今年のWWDCは久しぶりに面白かったですね。すべてのOSやソフトウェアが、より洗練され、より統合され、そして今回は開放することによって、よりApple製品を魅力的に感じさせる内容でした。

その象徴が、Home画面のWidget対応、デフォルトアプリの変更、HomePodの外部サービス対応でしょう。GoogleやAmazonが差別化できていた領域が、よりリッチになって遂にAppleに採用されました。そしてこの流れを生み出した要因の一つとして考えられるのが、やはりプライバシーとセキュリティでしょう。この２つがリッチになったことにより、Appleとして、殻を破ることができたのかもしれません。

プライバシーのセクションは、いろんなニュースメディアを見ても「おまけ」程度にしか取り上げられてませんが、僕は、このニュースに一番興奮しました。

WWDCで取り上げられたプライバシーのアップデートは主に以下でした。

・第三者がアクセスできるデータを最小限に
・サーバ側の処理を減らし、代わりにデバイス上で行うことで、データの外部流出を最小限に
・ユーザが目的を理解したうえで、データを提供できる環境提供

この「ユーザが目的を理解したうえで、データを提供できる環境提供」がより詳細に次のような機能を紹介されていました。

・長ったらしいプライバシーポリシーを、視覚的にわかりやすい形式で表示（今北産業レベル。まるで食品の成分表を見るように）
・表示されるポリシーは２つ。どのデータがアカウントに紐づくのかと、どのデータがトラックされて他社に提供されるのか
・この情報は、Apple製品すべての環境で提供される

Appleがプライバシーポリシーを要約してくれる訳ではありませんが、デベロッパーがアプリを申請するときにポリシーを提示するのだと思います。これまでは、プライバシーポリシーのWebリンクを貼るだけだったので、本当に守られているのか、そもそもこのアプリに関わる話なのかさえ不明でした。今回はアプリ＝使用中のデバイスから取得されるデータに主語を置き、それに準じているかAppleがレビューをされる（だろう）ことから、よりユーザーがプライバシーに対して意識を持てるようになったと思います。

新型コロナウイルス接触確認アプリ（COCOA) の一件で、プライバシーポリシーに対する注目とアレルギーが生じている今だからこそ、このような取り組みは、使われるべきアプリを使っていただけるという、ユーザーとデベロッパー、サービスプロバイダの全員に取って良いものになると期待しています。

また、これまでデータの取り扱いについては、知らず識らずのうちに取得されることを防ぐために「取得頻度」に対して、ユーザーの意向を反映することができました。しかし、それがどれほど正確な情報なのか、どこまで使われてしまうのかが不明だったため、だいたいオフにされてしまったかと思います。使われ方は簡易ポリシーで理解することができ、更に位置情報に関しては、精度について「大まか」という選択肢ができたため、よりユーザーの意向を反映できるようになったと思うと、これも大きな変化です。

また、アカウント管理のSign In with Appleもアップデートされるようです。詳細はまだわかりませんが、各サービス上で作成されている既存のアカウント（例えばTwitterやFacebook）をこのSign In with Appleに統合できるようです。そうなるとどうなるか。単純にアカウント管理が簡単になる、ではないと思います。必要以上に取得されている情報を見つけ、Appleのセキュリティポリシーに準じて、提供される情報を必要最低限とすることができるのではと予想しています。

ここまでAppleのポリシーによって管理されると、それはそれでディストピアな悪寒が走る方もいるでしょうが、プライバシーを健全に守るためには、テクノロジーによって対抗するしかありません。セキュリティ対策だって常にそうですよね。セキュリティ対策が、個人アカウントレベルでできる世界が、今少しずつ実現されているということだと思います。

この先１年で、Appleが、スマートフォン、パソコン、ホームデバイス、ウェアラブルデバイスらにおいて、プライバシーの基準というものをよりシンプルに、理解されるものに変え、守られるものが守られるようにできれば、次はいよいよ、僕の予想している「個人に帰属するプライバシーポリシー」の時代が開け始めるような予感がします。

いちいち、アプリ毎に自身のプライバシーデータをどう提供するかを考えるのではなく、自身で定めたポリシーに準じてアプリがプライバシーデータを使っていく。個別に設定するのはオフにすることではなく、オンにしていくこと。

Appleは、このプライバシーのセクション冒頭に大事なことを述べていました。

「Appleはプライバシーを基本的人権と捉え、デザイン段階から製品に組み込みます」

我々のプライバシーは、金目的に自由に扱われるものではありません。なぜなら、プライバシーデータは、我々の身体の一部だからです。個人のデータがアップロードされている今、もうデジタルツインの時代は始まっているのです。デジタルツインの自分を、企業の奴隷にさせないために、正しいプライバシーのあり方を皆で考えていける時代の訪れを願います。

Apple、今は、あなただけが頼りです。