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【予期せぬ結末】 統失2級男が書いた超ショート小説 

中崎海斗は今年で17歳になる。学校は16歳の時に辞めていて今は建築現場で働いていた。その建築会社の5歳年上の先輩鈴木紀之に借金の取り立てに付き合ってくれと頼まれたのは1週間前の事だった。借金の額は5万円で成功報酬は2万円だと紀之は言っていた。海斗は元々胆力の優れた男だったし、紀之には日頃から可愛がって貰っていたので二つ返事でその仕事を引き受けた。取り立ての日である日曜日に海斗は紀之のアパートを訪ねてみたのだが、数回インターフォンを鳴らしても中からの応答はなかった。試しにドアノブを回してみるが鍵は掛かってない。紀之の部屋には過去に何度も上がっていたので海斗は躊躇する事なくドアを開け玄関まで足を踏み入れ、そこから紀之を呼んでみた。しかしそこでも応答はなかった。腕時計に目をやると約束の時間の11分前の午前9時49分になっていた。仕方なく紀之の携帯に電話を掛けてみるが、どうやら電源が切れているらしく繋がらない。結局それから30分間玄関の段差に腰掛けて紀之の帰宅を待ったが、紀之は帰って来なかった。仕方ない帰ろう。海斗は胆力の優れている男ではあったが、元来短期な男ではない。海斗は腹を立てる事もなく紀之のアパートを後にした。紀之さんはセフレの部屋にでも上がり込んで酔い潰れて寝ているのかも知れない、携帯の方は恐らくバッテリー切れだろう。海斗はそんな事を考えながら帰路についた。しかし翌日の現場にも翌々日の現場にも紀之は現れなかった。刑事が海斗の家にやって来たのは海斗が紀之のアパートを訪ねた日から3日後の水曜日の事だった。母親と妹と海斗の3人で居間で朝食を取っていたら、いきなりインターフォンが鳴ったのだ。4人組の刑事は海斗に逮捕状を見せ海斗の両手に手錠を掛けた。逮捕容疑は鈴木紀之殺害容疑だった。連絡の取れなくなった紀之を心配し昨日、紀之のアパートを訪ねた恋人が変わり果てた紀之の遺体を発見した事。日曜日に紀之の部屋から出て来る海斗の姿を職場の別の先輩が目撃していた事。死亡推定時刻は日曜日の8時から18時の間で海斗が紀之の部屋を訪ねた時刻に合致する事などを海斗は警察署の取調室で立て続けに聞かされた。更に紀之の左胸に突き刺さっていた包丁から海斗の指紋が検出された事も。海斗は過去に傷害で逮捕された事がありその時に指紋を採取されていた。そして海斗は包丁に付着していた指紋について「以前紀之さんの部屋を訪ねた時にテレビゲームに負けた罰として、カレーを作った」との弁明をした。しかし警察は真剣には取り合ってくれなかった。それから10年後海斗は処刑されました。弁護士は最後まで海斗を疑っていて真面目に仕事をしませんでした。この事件は完全な冤罪であり、海斗は死刑制度の最大の被害者です。可哀想な海斗。海斗の無念を晴らす為にも日本は死刑制度を廃止にしなくてはなりません。第2の海斗を生み出してはいけないのです。合掌。

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