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【withコロナの1,000日間を考える】ハイブリッドな働き方の理想形とは?

10代で求められた「言語化」の大切さ

組織に属していると、通常業務でも1on1でも採用でも人事考課でも全てのシチュエーションで「仕事や役割の言語化」を当たり前に求められる。

  • 私たちは何者なのか

  • なぜやるのか

  • なぜあなたなのか

  • その先に何があるのか

といった具合に。
経営に近い立場にいるからこそ、言語化の難しさは悩みの1つでもあるが、思い返すと10年以上前からこの感覚を“知っていた”。

私は学生時代に多くのアルバイトを経験したが、某古本屋チェーンでは、後から入ったスタッフに対し「自分の仕事をいかに簡単に説明するか」を求められ、繰り返し言われたのが「過去に起こした自分のミスを、同じミスを起こさせることなく予防させる」ことであった。その教えは徹底されていて、スタッフの仕事の習熟度によって私たちの時給の上がり幅に差があった。

バイトリーダーになったタイミングで本社マニュアルを見せてもらったが、従業員にまず仕事を叩き込み、エバンジェリストとして育て、社員の手を使わずともバイト間の教育で現場が回ることを目指す、という教育方針であったと記憶している。

当時は求められる責務と時給が見合わないな、とも思った。
ただ10代のうちにこれが当たり前の環境を経験しているので、社会に出た後も、組織を前進させるために明確な指針が必要なのは今さら言うまでもないし、それをメッセージとして浸透させないと各自の行動に落ちてこないことも理解していた。
昨今よく聞く「パーパス?何のために?」とは全く思わないということだ。

withコロナでのコミュニケーション

2019年12月に未曾有の危機が発生してから、もうすぐ1,000日(2年8ヵ月)となる。テレワークに移行した組織は多いが、隣り合わせで業務を行うことが常識だった頃の成功体験からなかなか脱却できないと聞く。

当社は、コロナ前からテレワークを試験的に行っていたため緊急事態宣言に慌てることはなかったが、最初の1~2年はコミュニケーションに苦しんだ。
自分たちはいつでも・どこでも働ける組織だと信じて疑わなかったが、毎日在宅で過ごしてみると、意外と非同期コミュニケーションが確立されていないことを痛感した。

人と人の交流が多い上に、社内勉強会やチーム定例は高頻度で行われていたし1on1も積極的だ。ただ、そのアウトプットがドキュメントとして蓄積していたわけでもなかったし、良い取り組みをしていたチームがあったとしても、横に広がることなく、その部署だけに留まっていた現状があった。

また、社内チャットツールで即レスしてくれる人、Web会議で顔を出してくれる人。それも人によって・チームによってまちまちだと感じることもあった。さらに、在宅で体調を崩す人が増えた時期もあった。
テレワーク環境への移行は早かったが、テレワークに「適応」していたとは言えない状況だったと思う。

そこで、冒頭の言語化の話に戻る。
人によって・チームによってコミュニケーションの質に偏りが生まれないよう、「姿が見えない中での協働」をいかに理想に近づけるかを最重視するようになった。
そのためにまず最初に取り組んだのは、社員がいつでも必要な情報にアクセスできるための環境づくりだ。同時に、それを推進するためのチームも立ち上げた。

ナレッジマネジメントの成功事例は多くあるが、ゆめみ社のオープン・ハンドブックを僭越ながら目標にしている。ナレッジを集約するツールとしてNotionを活用することは決めていたが、会社の哲学から意思決定のプロセス、教育システムに至るまで全てのコンテンツが私のバイブルとなっている。

Notionで実現したいこと

  1. 会社の方針や文化を正しく・誤解なく・透明性高く伝える場所に

  2. 「社員に求めること」の明文化

  3. 社員が等しく教育を受けられる制度・オンボーディングの確立

  4. マネージャー間の横の繋がりを深める場所に

  5. 管理者不在のナレッジポータルを一本化し、アクセシビリティを高める

順に説明したい。

1.会社の方針や文化を誤解なく・正しく・透明性高く伝える場所に

当社の経営方針を明記し、何のために・誰のために事業をしているかを明確にしたかった。また、たくさんある社内制度も、社員の声をもとにして生まれたものも多い。実現に至るまでの経緯や、背景にある考え方もできる限りオープンに記していくつもりだ。
詳細は伏せるが、過去の平均昇給率や賞与実績も載せている。当然その時の業績によって・個人の働きによって評価は異なるものだが、事実で示せるものはできる限り載せたいと考えている。

2.「社員に求めること」の明文化

オフィスに一同が集まる機会が減った今、各自がどのように働き、どのように周囲とコミュニケーションしているかは見えづらいため、当社のカルチャーコードをもとに、在宅でも大事にしてほしい考え方を示すことにした。目指すのは、社員の誰もが言われなくても当たり前にカルチャーに沿った行動ができる状態だ。

3.社員が等しく教育を受けられる制度・オンボーディングの確立

社員に求めるばかりでもいけない。毎月のように仲間が増えている中、理想論だけを掲げても一体感は生まれない。そこで大事になるのが業務上の不安を払拭するための教育制度である。

当社は15コマ程度の入社後研修を用意しているが、座学かつ入門編が多いため、その後の実践はどうしてもOJTに頼らざるを得なかった。また、入社後ヒアリングの結果を見ても、OJTはメンターによって忙しさの程度も異なるため、同じ研修期間でもチームによって・人によって教わる量や内容の濃さに差が出ていたことが分かっている。

いきなり実践で鍛えられることも時には有効であるが、現場に出た後も繰り返し使えるようなスキル研修を作れないかということで、各部門の教育担当を選抜し、部門別のトレーニングメニューとオンボーディング施策を加速させている。過去の経験による暗黙知をドキュメントなどの形式知として残すことで、基礎研修やOJTでカバーできない部分を事前にインプットすることが可能になる。(図1)

図1:Notion「営業部門 スキル研修」の例
4.マネージャー間の横の繋がりを深める場所に

言うまでもなく、チームマネジメントは難易度が高い。2~3人でさえ大変なのに、それが20人や30人になればいよいよやり方を転換しないと上手くいかない。経験がモノを言うものでもない。常に新しい悩みの繰り返しだ。
市販の書籍やセミナーで得られるハウツーは勉強にはなるが、今まさに抱えている悩みを解消されるものでないことが多い。たいていが、自身の立場に置き換えた時に抽象度が高く、再現性が低いことばかりだ。

探しても正解は見つからない、でもやるしかない。それが世間一般での「マネージャーあるある」とも言える。前例がないことばかり起こるので、マニュアルもなければ正解を教えてくれる人もいない。

同じマネジメントレイヤーで悩みを共有し合って、困った際は一緒に対策を練り合うような、そういう仕組みがあれば救われるマネージャーがいるかもしれない。その協力関係から生まれた取り組みを蓄積し、「管理職ナレッジ」として、Notionにまとめることにした。(図2)

図2:Notion「管理職ナレッジ」

内容はまだまだ不十分なので、マネージャーの意見を聞きながらより役立つものにしていくつもりだ。数人からもらったフィードバックを参考にすると、まだまだ正解を提供するレベルには至っていないものの、「横のつながりによる知恵の共有」は方向性として間違っていないと考えている。

5.管理者不在のナレッジポータルを一本化し、アクセシビリティを高める

今までナレッジマネジメントに何度か取り組んでいるが、情報の置き場所が乱立し、なかなか浸透まで至らなかった。管理者も曖昧で更新ルールも定まっていなかったため、私ともう1名を管理責任者とし、点在していた情報をNotionに集約させることを決めた。(図3)

図3:すべてのナレッジをNotionに集約

この先の展望

ゆめみ社のように社外まで公開範囲を広げるかは今後の議論になるが、ナレッジポータルが充実すれば非同期コミュニケーションの質は高まると考えている。

今回言語化を進めたことで気づいたのだが、その過程で今まで曖昧となっていた「不文律」が姿を現すようになり、やればやるほど組織全体の断捨離が行われ、合理的なマネジメントへと進化していくという手応えがあった。

当面はテレワークを基本にしつつも、秋には新しいオフィスへの移転が決定している。ナレッジマネジメントの推進で非同期での関わり方は改善の見込みが立つが、それでも100%在宅では物足りなく、オフィスに来てリアルに人と触れ合いたいと思う社員も多い。

在宅でも快適。オフィスに出社しても快適。
日によって・気分によって働き方を自由に選べる、どちらを選んでも満足できる。そういった理想の職場になるまで、まだまだ頑張らないといけないなと。

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