見出し画像

day10 失敗をしないことのこわさ

「犯罪以外の全て」。

20代前半の頃、19歳の友人に「20歳までに経験した方がいいことって、何だと思う?」と聞かれて、そう答えた私は、今考えてもなかなかかっこいい。
例えそれで人を裏切ることや傷つけることになっても、自分が試してみたいと思ったことは何でも経験した方がいいと思っていた。
真面目に生きてきた人が歳を取ってから人生を棒に振るような行動を取るのは、私にとって一番情けなかった。
(そういう人が実際近くにいたわけではないので、あくまでイメージの話)

今、思春期に1本指を突っ込んだ息子を、改めてどう育てていくか考えたときに、その時の言葉は間違っていないという気になる。
若い時にたくさん試して、たくさん失敗して、たくさん後悔してほしい。
大人になってからよりずっと、若いということは免罪符になる。
そして、今だからこそ分かるが、若い時にした様々な経験が人を作り、人生を豊かにする。

何度か書いているが、私は障がい者支援を仕事にしている。
関わる人は発達障害の人が多い。
彼らの中には、過去を振り返ってみると、極端に人との関わりが少ない人がいる。
不登校であったり、引きこもっていた時期があったり、友達があまりいなかったり。
それは特性上、仕方のないことだとは分かっている。
ただ、それは環境次第では防げたことだ。

人に興味がないのは仕方ない。
人との関わりで失敗してしまうのも仕方ない。
でも、その失敗体験が、ただの嫌なこととして定着してしまうと、どんどん人との関わりを避けるようになる。
その悪循環は、人生に長い間影響する気がする。

早いうちに特性を理解して、療育や対処の仕方を身につけたり、合っている環境を用意するのは、本当に大切で、長期的に見てメリットが大きいと思う。

とはいえ、失敗をこわがるのも、特性のうちだ。
そういう不安が強い子には、少しだけサポートする必要もあると思う。

息子は、人に自分の意見や要望を伝えるのが少し苦手だ。
当然大丈夫だと思うことでも、断られるかもしれないと思うと、言い出せないのだ。
私自身も子どもの頃はそういう部分は少しあったが、息子は私よりもずっと気が弱い。
そこで、私はその部分のサポートをしている。

息子が先生に言えないことがあれば、先生に電話して言う事もあるし、連絡帳に書くこともある。
もしくは、先生に言うことを一緒に考える。
それは、息子の不安を取り除くために必要だと思ってやっている。

その際には、「心配なら、頼まれればサポートする」ということと、「とはいえ、絶対に大丈夫だから心配要らないこと」、そして「大丈夫だったという経験をしてきて」「もしだめなら、お母さんが先生に聞くから」などと伝えている。
これを繰り返すうちに、最近自分のことを伝えられる機会も増えてきたように思う。
息子も「言えるようになった」と報告してきた。

親としては、息子には常に笑っていてほしいし、心配ごとなんて全部取り除いてあげたいし、道の上の石は取り除いてあげたい。
息子の悩む姿や苦しむ姿は、本当は一切見たくない。
けれど、それでは息子は大人になったときに少しの石につまずいて、大怪我をしてしまう。

今のうちから色んな石にたくさんつまずき、たまに大きい石の時は人に手伝ってもらいながら乗り越えることで、大人になってからはロッククライミングもできる。
子育てとは、いつまでも忍耐だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?