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家が一日本屋になる。

由比ヶ浜のアトリエで『書肆 海と夕焼 鎌倉支店』というイベントを定期的に開催しています。

普段は自宅の一室をアトリエとして使っていて、スタジオとして写真を撮ったり読書会や8mmフィルムのワークショップなどのちいさなイベントやニューボーン研修などを行ったりしていて、年に4回春夏秋冬に谷保の本屋さんの書肆 海と夕焼の店主の柳沼雄太さんに来ていただき一日本屋さん「海と夕焼 鎌倉支店」になります。

何回か開催していく中で吉祥寺のBOOKMANSIONや西荻窪のBREWBOOKSなどで小さな棚を借りて本を売る「棚貸し本屋さん」の方々とも繋がりができて、一緒に本を並べてもらうことで様々なジャンルの本が並ぶようになりました。

靴を脱いで上がっていただく本屋さんなので、棚の目線が全体的に低くなるよういつも配置を考えてもらったところ、ぎゅっと詰まった棚の前でもみなさん足を崩してじっくりと本を吟味してもらえる気がしていて。

並んだ本を眺めるだけでなくみんなでレコードを聴いたり、来た人たちで海にお散歩に行ったり、突然ライブが始まったり。

開催するたびにいろんなことが起こる不思議な本屋さんなのもいつもわくわくしていて、一日本屋をきっかけに、本だけでなく人やモノといろんな繋がりが生まれることも楽しんでもらいたいと思っています。

毎回違うテーマに沿って並べられた本たちは「選ばれた理由」をちゃんと持っていて、ちょっと誇らしげにお客さんの手に取られるのを待っているように見えて。ゆったりした気持ちで向き合いお気に入りの一冊に出会える場所になればいいなといつも準備をしています。

「なんでお家に本屋さん…?」とよく聞かれるのですが、理由は東京から鎌倉へ引っ越してとても悲しかったこと、いつも通っていた大好きな本屋さんが遠くなってしまったこと、そこで出会った人たちと気軽に会えなくなってしまったことが寂しかったこと。

わたしはフォトグラファーであり本に携わる仕事をしているわけでもなければ、文章も上手に書けるわけではありません。

それでも「本が好き」ということがきっかけで出会った人たちと、過ごした時間がわたしにとってはとても大切で素敵なご縁だと思っていて。

引っ越した先の暮らしの中にもこんな空間をつくれたらいいのに…!と、柳沼さんに相談したところ「じゃあ本屋が家に来ちゃえばいいじゃないか…!」と、快く引き受けてくださり本屋さんが来てくれることになりました。

いつかの一日本屋さんのあとに柳沼さんとお話ししたときに「本に対する情熱や想いの受け皿を作りたいんです。」という言葉がなんだかすごく腑に落ちて。本屋さんが受け皿ならば、アトリエは受け皿を届けるべく人に届けるための素敵なトレーになれたらいいなと思っています。

たった一日というささやかな時間の中で、素敵な本が出会うべき人の手に渡りますように。「自宅が本屋さんになる」というのは、どんな大きな家に住むことよりも私にとっては贅沢であり嬉しいことで、もしかしたらいつでも自分が一番楽しんでいるかもしれません。

旅の予定を決めるように「次はどんな本屋にしようか…?」と考えながら、次回の本屋の計画を今日も考えています。



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