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12月10日 辺境地域化するテレビ

 とある動画番組で、2021年以降のテレビについての話題をしていた。2021年以降、テレビはどうなっていくのか。
 現状を言うと、テレビはいわゆるYouTubeに投稿された番組を寄せ集めて、芸人がワイプで大騒ぎするだけの番組。あとは通販番組とアオリ番組しかないような状態になってしまった。
 アオリ番組というのは、最近の話で言うとコロナウイルス関連。コロナウイルスは人類が新たに直面した病気というのはわかるが、今のテレビでやっていることははっきり大袈裟。ひたすらにイタズラに恐怖をあおり続けるだけ。
 まあテレビのアオリ癖というのは、遡ると戦時中からずっとやってきたことだから、今さらその性質についてアレコレ言ってもしようがない。テレビだもの。

 YouTube動画の寄せ集めの番組しか作れなくなった、ということはそれだけオリジナルコンテンツを作れなくなった、ということ。最近は『鬼滅の刃』ブームでいかにもフジテレビの功績みたいに扱われるが、別にフジテレビが『鬼滅の刃』を作ったわけではない。単に放送権を買っただけ。制作に一切関わっていない。すでにできあがっていたものを放送しただけ。
(『鬼滅の刃』劇場版封切り前にテレビででっかく宣伝ができて、良いことではあったけれども)

 独力でコンテンツを作れなくなったテレビが打開策として売っているのが、YouTuberのテレビ出演。
 どうしてここでYouTuberが珍重されてしまうのかというと、もはやテレビ自体が独力で仕掛けて、スターを作れなくなってしまった、ということ。すでにYouTubeで有名になった人をお呼びして、ひな壇に加える……くらいなことしかできなくなってしまった。そのYouTuberに付いているファンが視聴者になってくれることを期待している。
 でもYouTuberの側からいうと、テレビ出演は別においしいものでもない。面白いことを言っても編集でカットされるし、場合によっては違う意味合いに変えられてしまうこともある。テレビのせいで、変なステレオタイプを押しつけられることもある。しかも拘束時間が長く、習慣となっている時間に動画を公開できない。さらにネタにしづらい。YouTuber側かしてみればテレビはプラスではなくマイナス面が多い。
 「有名YouTuber出演!」はまだしばらくは宣伝文句として使えるかも知れないけど、そろそろテレビ出演に旨味がない、ということが知れ渡り、テレビがオファーしても断るようになってくるでしょう。彼らはこういう情報共有は非常に早い。

 テレビがこうも失敗し続ける原因は、シンプルにいって独力でコンテンツを作る力がないこと。コンテンツを作れる人材集め・育成を怠り続けた。コンテンツを作る能力のないバカ、作る意欲のないバカを集め続けた結果、今みたいになった。そういう人材の見極めをやってこなかった企業の末路だね。
(ゲーム業界で言うと、コナミみたいな感じだね。コナミは子会社に作品を作らせて、自分は権利の運営ばっかりやってるんだもの)
 予算がどうとか、規制がどうとかいう話ばかりするが、それだって深夜アニメだって同じだ。深夜アニメなんてプライムタイム番組の何分の一しか予算は出てないし、規制についてもうるさく言われている。でも圧倒的に面白いものを作っている。予算と規制を理由に面白いものが作れない、というのは単に言い訳でしかない。
 テレビは「物作りの国・日本」をいかにも誇らしげに語るが、一番物作りができる人材を大事にしなかったのはテレビ。

 ついでにテレビ発のスターも不在。未だに北野武や明石家さんまみたいな大御所がテレビの中心にいる、という現象がこれを証明してしまっている。テレビ自身がスターを発掘し、育てることができない。だからYouTuberに頼るしかなくなっている。そのYouTuberのテレビ離れも次第に加速していく。
 テレビはスターもいなければ、コンテンツもない。すでに不毛の場所になっている。

 独力でスターを生み出さず、YouTuberに頼って問題を解決しよう……というところにテレビ業界の末期なところが見えてくる。

 テレビドラマもクオリティ低いもんね。Netflixドラマはがっつりセットを作り込んで、映画みたいに作っている。でもテレビ発のドラマはセットもカメラもいかにも安っぽい。ああいう作りは、最近のトレンドから完全に外れてるよ。

 「テレビ王国の失墜」は色んな所に構造変化をもたらすだろうなー。
 その一つが、映画。
 日本の映画興行収入ランキングを見てみよう。

1 千と千尋の神隠し  308億円
2 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編  302億円※
3 タイタニック  262億円
4 アナと雪の女王  255億円
5 君の名は。  250.3億円
6 ハリーポッターと賢者の石  203億円
7 ハウルの動く城  196億円
8 もののけ姫  193億円
9 踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!  173.5億円
10 ハリーポッターと秘密の部屋  173億円
※12月13日時点

 ちょっと違う書き方をしてみよう。

1 アニメ(日本)
2 アニメ(日本)
3 実写(海外)
4 アニメ(海外)
5 アニメ(日本)
6 実写(海外)
7 アニメ(日本)
8 アニメ(日本)
9 実写(日本)
10 実写(海外)

 気がつくと思うが、日本の実写映画は1本しかない。実写作品以上にアニメ作品が多く、海外アニメも1本だけ。国産アニメが非常に強いことがわかる。
 世間的な認識では、ずっと逆だったんだ。今でもおそらくは逆だと思っている人の方が多いかも知れない。実写作品の方が格上、実写作品に出ている俳優のほうが格上。アニメは作っているやつも見ているやつもなんとなくキモい。
 でも薄々気付く人も現れるんじゃないかな……実写作品は思っているほどじゃないぞ、と。

 これがどういうことに繋がるかというと、テレビに多く出演しているタレントや俳優の商品価値が落ちる……ということ。だって、データが「実写作品は売れない」という証拠になってしまっているもの。
 もう20年以上起きている現象だけど、劇場アニメに声優経験のない素人タレントを起用する……という傾向。どうしてそういうクオリティを犠牲にするようなことをし続けてきたのかというと、アニメ声優だけで組んでも、観に来るのはもともとアニメ好きのユーザーだけでしかなく、そうするときちんとした黒字、つまり収入が見込めないから。アニメがいくら人気といっても、ユーザーのトータル数は決して多くないと見込まれてきた。そこで、テレビ界隈で有名な人を連れてきて、人寄せパンダにする。アニメ声優だけではなく、テレビタレントも使っているから広告的には箔が付く……みたいな感じに取られていた。(要するに、アニメ声優はなめられている)
 でもテレビタレント、ドラマ俳優の価値が落ちると、こういう傾向も少なくなってくるかな……と。
 今なら声優でも名前も売れてる人もかなりいるので、本業声優だけで組んでもいけるんじゃないかな。
(え? みんなもう気付いてる? いやいや、ごく普通に暮らしている人々はこういう状態になっている、ってまだ気付いてないよ。多分)

 映画の宣伝にタレントや芸人を起用するやりかたって、どうなんだろうな……という気は前からしてたんだ。
 たとえば映画のプロモーションにまったく関わりのない女優さんが「宣伝部長」的なポジションに選ばれる、ということはよくある。出勤前に、朝の番組でそういうのを見かけるが、見ていると映画のあらすじすら紹介せず、「あの熱愛報道について教えてください」みたいなアホな質問ばかり。あれ、宣伝になってるのか? それ、視聴者が興味あると思ってるのか? 興味あるのは映画の内容そのものだろうに。
 芸人が起用されちゃうと、映画の映像出さず、一発ネタ披露で終わっちゃうこともあるし。
 ああいうのも宣伝効果がぜんぜんないね……ってバレるところまで来てるかも知れない。タレント事務所のエゴしかない。

 『それが声優』というアニメに、落合福嗣という声優が出演している。野球選手、落合博満の息子だ。高名な野球選手の息子が初めてのアニメ出演、ということで『それが声優』にはありとあらゆるスポーツ新聞が取材に詰めかけた、という。そのおかげで関係者は「宣伝費浮いたわ~」とホクホク(実際、ラジオでそう語っているのを聞いた。誰がとかは言わないが)。
 ところが落合福嗣の役どころというのは「イベントスタッフ、ファン」であって、別に役名のあるキャラクターですらなかった。『それが声優』スタッフも、別に「落合選手の息子だから」という理由で起用したわけですらなかった。アニメファンや声優ファンも、別に「落合選手の息子が出てるぞ!」で見たりもしない。
 正直なところ、マスコミのやっていることはピントがぼやけてるな……と。マスコミ的に注目ポイントかも知れないけど、別にアニメ好きやその周辺の人たちはそこには興味がない。そもそもモブキャラですし。「お前らだけだよ」みたいな感じ。

(こう書くと落合福嗣という声優にネガティブなイメージを与えることになってしまうのか。そういう意図はございませんよ。落合福嗣は『それが声優』で声優デビューし、今は順調なキャリアを積んだ、立派な声優です。ここで採り上げた意図はマスコミが滑ってますよ、という話)

 テレビ、新聞界隈はずっとメディア・文化の中心と崇める立場にいたのだけど、もうその地位から転落している。テレビ的に注目されることとか、テレビ的な「問題」とか――テレビ的な「問題」といえば最近では「モリカケ問題」なんかがそれ(もはや最近ですらない)。
 テレビが繰り返し採り上げ、テレビで採り上げられ続けているから野党も「世間的に注目される」と思いこんで繰り返し質問しているが、はっきりいって、「モリカケ問題」に興味があるという視聴者はどれだけいるのやら……。野党もたいして話題として広がっていないってことに気付いて、もうちょっとマトモなことに目を向ければいいのだけど、野党も同じくらいアホばかりだから、誰も感心を持ってもらえていないということに気付いていない。
 いや、それ誰も興味持ってないから。お前らだけだから……。モリカケ問題も、サクラを見る会とかも、どーでもいい。テレビだけがピントのぼやけたところで大騒ぎし続けている。
 テレビは「辺境地域化」していっている。
(逆にマスコミがもう少しマトモなことを……例えば「減税だ!」とキャンペーンを打てば、野党もそれに釣られて動くんじゃないか……という気がする。野党は自分自身に政治的な信条などがなく、単に政権を引っかき回したいだけの人たちだから、お題目の意味とかそういうのを自分たちで考えて判断する頭がない。だったらマスコミが報道の方向を変えれば野党も釣られて……とか考えるけど、それはないか)

 少し前に管総理の就任スピーチがあったのだけど、新聞に載った記事は「言い間違いが○個ありました」という報告。新聞記者はアホか。なぜ新聞記者が政治家の言い間違いや読み違いを採り上げるかというと、それでかつて政権交代まで追い込めたことがある……という実績があるから。今でも通用すると思っているんだよね。要するに、国民もその程度のレベルだ、と新聞記者が思ってああいう記事を出している。
 言い間違いや書き間違いを追求する……というやり方は、やらないほうが良い。なぜなら一番ブーメランになりやすいところだから。「じゃあお前は人生で一度も言い間違いや書き間違いをしたことがないのか?」と問われると、何も言い返せなくなる。私だって、こういうブログでも3度はチェックしてから出すけど、後日読むとまた誤字を発見したりする。他人の誤字や言い間違いに対して、あーだこーだ言える立場じゃない。

 でもテレビは自身の辺境地域化に気付いていない。テレビはいまだにかつてのように、「自分たちが大騒ぎすれば、国民全員が大騒ぎするはずだ!」と思い込んで、ニュースを作っている。でもそのカラクリに気付いている人が、今や多数派。
 最近はコロナウイルス関連でテレビはひたすら大騒ぎだけど、あれはただのアオリ番組でしかない。テレビのニュースって大半がアオリなんだ。情報だけで見ればどれも3分か5分くらいで充分なものを、針小棒大に拡大して、見る側に「さあこの件についてみんなで怒りましょう」「この人をみんなで叩きましょう」「新しいウイルスに怯えましょう」……とこういうサインを出しているだけに過ぎない。
(イジメの問題がどうこう……と言いながら、そのイジメを扇動しているのはマスコミそのもの)
 ニュースショーの、“ショー”の部分というのは“情報”ではなく、“エンターテインメント”のほう。“情報”ではなく“感情”に訴えかけているんだよね。ズバリ言っちゃうと、ニュースポルノみたいなもん。
 日本人は何かと深刻な顔して問題だ問題だ、というのが好きな国民性だから、そういうお題をテレビという箱を通して天から与えられると、みんな同じ方向を見て同じ話題をしてしまう傾向がある。
 工場で働いているとわかるけど、おじさんたちって、みんなみんなニュースでお題をもらって、「問題だ問題だ」って。あれは「問題だ」と言うこと自体が趣味なんでしょうな。

 恐ろしいことに、ごく最近までこういうのに乗せられ、飲まれる人が非常に多かった。テレビで「今からこういうタイプの人をみんなで叩きましょう」とアオればみんなで叩き始める。理由は必要ない。「テレビで言っていたからそうなんだ」だけで騒げば良かった。
 私はその被害者のほうだった。だからテレビが徹底的に嫌い。嫌う理由があるし、テレビは嫌われる理由がある。私だけではなく、色んな人が嫌う理由を日々作っている。そのことに無頓着なのが、テレビに勤めている人たちのほう。
 でもそれでもテレビはアオリ番組をやめられない。それ以外に人々の注目を集める方法を知らないから。問題を針小棒大に拡大して大騒ぎして、大騒ぎすればたいしたことでなくても「問題」になるし、問題として話題になれば視聴率も取れるし新聞も売れる。その手法をずっと変えられなかったし、これからも変えられないから、辺境地域化していくだろう。

 ちょっと前に、何かのニュースで「声優・花江夏樹が天狗になっている!」というタイトルの記事を読んだことがある。
 こういうネタ、前にも見たことがある。マスコミは自分の意のままにならない相手がいると、突然に人格攻撃を始めて貶めようとすることがある。
 前に見たのは「エドはるみ」という芸人さん。エドはるみは礼儀正しい振る舞いで知られていたのに、突然マスコミから「エドはるみが天狗になっている!」と報道で叩かれるようになり、間もなく姿を消した。
 テレビに出ていない裏では態度が悪い……とか言っても、そんなの検証しようがない。証拠がないからいくらでも書けてしまう。手がかりは誰なのかわからない「関係者の証言」だけだが、それを信じてしまう人が多い。
 芸能界はこういう報道をやられると意外にダメージで、わりとあっさりと抹殺ができてしまう。
 エドはるみだけではなく、こういう感じに急にマスコミから人格攻撃されて、それで姿を消した人は一杯いる。私はそもそもニュースを見ないから知らないけど、一杯いるんだと思うよ(みんなの方が知っているはず)。
 今回の「花江夏樹が天狗になっている」報道は、一応コメント欄も見てみたが、多くの人が「マスコミ側こそが傲慢だ」と気付いていたようで、安心した。マスコミの裏のカラクリに気付いている人の方が多かったようだ。
 芸能マスコミのロジックは声優にはまったく通用せず、ダメージにならなかった(ざまぁ)。
 マスコミだけが気付かず裸の王様化している。

 世の中はアニメについて“サブカル”と称されることが多い。私はアニメをサブ・カルチャーとは基本的に書かないことにしている。だって、日本の興行収入10位中6本も入る文化のどこがサブ(傍流)文化なのかと。サブ・カルチャーじゃないじゃん。せめてポップ・カルチャーでしょう。
(“ジャパニメーション”という呼び方は論外中の論外。そんな呼称をしているのは日本のマスコミだけ。まず言って、ジャパニメーションって蔑称だからな)
 まあ、世間的にはアニメは“サブカル”と言われ続けるんだろうけどさ。アニメを“サブカル”と言われ続けることが、この構造変化について無頓着にしていくんだろうね。要するに、そう言っている間は構造変化に気付かれない。気付かれないで、「あれ? 今までの手法をいくらやっても売れないぞ? きっとあの女優が悪いに違いない!」みたいな滑った回答を出し続けるのだろう。気付いた人から、自分なりのやり方、自分なりの新しい方法論を見つけだしていくのでしょう。

 じゃあ今の日本において“メイン・カルチャー”って?
 以前ならアートだったり音楽だったりしたんだと思うけど、今はなんだろうね。世代を超えたヒット曲とかも、今の時代もうないし。メイン(中心)が不在。文化も情報も、中心がない。みんなで辺境地域化して、それぞれで自分たちの地域活性の手法を模索していく。そういう考え方ができず、ずっと「古き良き時代」を引きずって、「テレビの力」を借りようとする人たちは失敗するでしょう。


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