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躁状態の父と、今後についての話をしてきました②


父が怒って暴れる可能性も考慮して、もしもの為にと看護士さんと一緒に相談室に入ってきて貰い父の隣に座ってもらう。

顔を合わせた父の表情は少し落ち着いているようにも見えた。

以前本人も言っていたが、もうすぐ退院できるからと喜びの気持ちがあるのかもしれない。

もちろんそれは父の勝手な思い込みなのだけど。

「お父さんから頼まれてた、缶コーヒーとおやつ持ってきたよ」と父に声を掛けると「ありがとう」と返ってきた。

そして、「これを佳弘にあげるわ、沖さんの写真が載ってるよ。」と父が手に持っていた小冊子を渡してきた。

沖さんは僕が尊敬している猫写真家で、猫の写真を撮る事が好きな僕が喜ぶだろうと父なりの優しさでどこからか手に入れたのだろう。

本来は家族想いで優しい父。

僕が猫を好きになったキッカケも、20年以上前に父が知り合いから猫を預かってきたからだった。

双極性障害にならなければ、父とはまた違った関係でいられたのかもしれない。

挨拶程度に軽く話した後、担当医が本題に入る。

出来るだけ刺激しないように、言葉を選びながら丁寧な言い方で父に話しかけた。

「服部さん、正直にお伝えしますがご家族は今の状態では服部さんの面倒を見る事は難しいと言われています。もし退院したとしても、一緒に住む事は出来ないと…。」

始めは担当医の顔を見ていたが、すぐさま父は視線を外して腕を組み目を瞑って顔をやや上に背けた。

僕の目には、その姿が強い怒りの感情を抑えているようにも見えた。

「入院当初よりも意識的に落ち着こうとされていて、その努力は素晴らしいと思います。ただ、ご家族からは電話で話している感じだとやはり気分は上がっていると。つい先日も、死ねなどの強い言葉を使われたそうですね?そういったように、すぐ怒ってしまう状態であるとご家族と一緒に生活されるのも難しいのではと思います。」

父は途中から腕組みを解き、話が聞こえてないような素振りで何度も自分の手元を見たりそっけない様子だった。

「一応僕からは以上です、ご家族からの意見も教えていただけたらと思います。ご家族の方はどう言った理由で一緒に住む事が難しいと感じられますか?」と、担当医から話を振られる。

「そうじゃな、それは先生良い質問じゃな。それはワシも聞きたいわ。」と僕の方を睨みながら父が言った。

僕は躁状態で気分が上がり過ぎて家族の声に耳を貸さない事や、攻撃的ですぐに怒り狂うところ。

今回入院した日の早朝にも激昂した父の声で起こされた事も。

その時は3〜4時間ほど父が身体の痒みを訴えながら狂ったように「〇〇(担当医)殺してやる」と叫んでいた。
その間、ずっと父をなだめながら痒いと訴える部分に保湿クリームを塗った。


そういった話も含めて、精神的な負担が大き過ぎる事などを伝えた。

気分が上がり落ち着かなくなってきたのか、話の途中何度も父が口を挟んできたがどれも自分を正当化する内容だった。

「躁の時の方が体も動くし調子が良いから今のままで良い。」「身体が痒かったのは、先生の薬の調合がヘタだからじゃ。」「お前は同じ痒みを経験してないからそんな事が言えるんじゃ。」

自分は悪くないし、躁なのも問題ないと言うのが一貫した父の考えで。

「躁状態だと、家族が大変だけどそれは構わないの?」と聞くと「それならお前が代わりに入院してみろ。入院したらワシの気持ちがよく分かるわ。」と、とにかく話をすり替えながら自分を正当化しようとする。


【ここまで読んでいただいてありがとうございます。また、次回にさせていただきます】

                服部 佳弘

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