躁状態の父と、今後についての話をしてきました③
父が自分を正当化しようとするのは、自分を保つため、ストレスから心を守るための防衛手段でもあるのかもしれない。
誰にも自分の苦しさを理解して貰えないという気持ちからきてるような。
僕には、そういうふうに見えた。
「Kさんも、ワシの事は入院しなくて大丈夫だろうと言っていた。」
Kさんとは、父がブドウ作りの手伝いに行かせて貰っている人で父は彼の事を慕っている。
面倒見のいい人で、たまに作業終わりにご飯などにも連れて行って貰っていた。
うちの家は元々農家で、昔ブドウ作りをしていた事もあり父もお手伝いに行かせてもらう事が楽しみでもあった。
「でも、Kさんはお父さんの怒った姿も見た事ないし一緒に住んで無いから見えてない部分も多いし参考にはならないでしょ?」
父は躁状態であっても基本的に家族や近しい人以外には、感情を出したり怒ったりせず愛想を良くして気を遣うので、正直周りの人には表面的な部分しか見えていないと思い指摘した。
「いや、Kさんは〇〇銀行で働いてたし色んな事を知っとるから正しいわ。あんたら家族や先生よりも第三者の言う事が正しいに決まっとるわ。」
とにかく自分に都合の良い言葉を並べられ、段々と反論する気力も無くなってくる。
「そうか分かった、お父さんにとっては第三者の意見の方が正しいんだな」と、淡々と言葉を返した。
少し間が空いたあと、「奥さんはどう思われていますか?」と担当医が母へ問いかけた。
「私はカズさん(父の名前)が、双極性障害になってから20年お世話をして付き添ってきたけどもう限界です。本当に今まで色々あったし。私自身、歳もとって無理も効かなくなってきたしもうこれ以上は耐えられない。」
「カッとなって、蹴られたり叩かれたりしたことあるし今もスグ怒るので今後も同じような事があるかと思うと怖いです。」
そう言うと父はすぐさま反論した。
「大変なのはお互い様じゃ。お前は本当にワシの事を悪くばっかり言いやがって!それに、怒らせたのはいつもお前が火をつけてくるからじゃ。お前のせいじゃ!昔、ワシを入院させた時もなんで入院なんかせんといけんかったんか?」
「それは、カズさんが双極性障害で上がったり下がったりで面倒見れないと思ったから。どれだけ今まで大変だったか…あんたが暴れたから警察に連れられて入院する事にもなったがな!」
過去に躁状態の時にサイフを落として、行った先の交番で警察官の方と揉めて応援を呼ばれ、そのまま精神病院に連れて行かれて強制入院になったことがあった。
「ワシは暴れてないし手を挙げて大人しくしっとたわ!」
「本当に大人しくてたら応援なんか呼ばれないし、私は目の前で見とったわ!」
母が反論しても父は納得しなかった。
「お前の勘違いじゃ、今までも入院なんかする必要もなかったわ!」
父の言葉にさすがに母も腹を立てたようで、「言わないようにしようかと思ってたけど…最近、Mさん(前の入院先のソーシャルワーカーさん)に電話したんよな?」と父に聞いた。
Mさんは父が慕っていた女性のソーシャルワーカーさんで、気さくで話しやすく母もよくお世話になっていた方だった。父は今の病院に代わってからも気分が上がると電話をかけていた。
「おう、したけどそれがなんなら?」
「最近、そのMさんから連絡があってカズさんから電話があったよと教えてくれたんだけど。Mさんも、『服部さんの調子が上がって気分が高くなっていますね。あの感じだとご家族も大変だと思います。』と言っていたよ。」
【また、次回にさせていただきます。ここまで読んでいただいてありがとうございました】
服部 佳弘
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