双極性障害の父、入院する①
双極性障害の父が入院になった。
昨年の11月に退院したばかりだったが、わずか2ヶ月で再入院。
12月の末頃から躁モードになり、そこからは一気にテンションが上がっていった。
退院後のデイサービスへの通所や、睡眠不足によるストレスなのか。
躁へのギアが入った原因はハッキリとは分からないが、とてもじゃないけど一緒に生活出来る状態ではなかった。
一般的な躁の症状である、落ち着きのなさ、注意力散漫、攻撃的になる、どんどんお金を使いたくなる、我慢や自己抑制ができなくなる。
家族の「それをされると困るからやめて欲しい。」が通らなくなり、さらには注意すると反発して怒鳴り声をあげる。
瞬間湯沸かし器状態になる。
今日は早朝に父の怒鳴り声で目が覚めた。
慌てて父の声がする台所に向かうと、出勤前の母に何か訴えるように怒り狂っていた。
「身体中が痒い、〇〇先生(精神科の担当医)は薬の調整が下手なんじゃ、殺してやる。」
身体を震わせながら、何度も同じような事を叫び続けていた。
母は出勤前で時間がなく、対応出来る状態ではなかったので自分が母に代わり父を落ち着かせる。
退院後から身体の痒みを訴えていたので、姉が父の為にと買ってくれていた保湿クリームを身体中に塗る。
あそこが痒い、ここが痒いと急ぎ足で言われた箇所へ塗っていく。
担当医へ向けての罵声を聞き流しながらひたすら言われた通りに。
熱しやすく冷めやすいので、怒りの感情が時間の経過とともに収まるのは経験上分かっている。
それでも怒り狂う父の側にいるのはたまらないが、今日入院出来るはずだからもう少しの辛抱だと自分に言い聞かせて、父の指示通りの箇所にクリームを塗る。
痒みの原因は、冬季の乾燥によるものかもしれないし精神的なものか、または薬の影響なのか。
最近、精神科の担当医から痒みを抑えるアレルギーの薬を処方してもらった事もあり、怒りの矛先が担当医に向かったのかもしれない。
何かに怒りや感情をぶつけなければ、自分の気持ちが収まらなかったのかもしれないし。
結局1時間以上かけて、話をしながら父の怒りのボルテージと痒みが落ち着くのを待った。
「先生に自分の思った事を言うてやらぁ」
「わかった、お父さんの気が済むなら言えばいいがな。その代わり入院になってもいいんじゃな?」
「かまわん」
「ほんなら自分の言葉に責任を持って言いなさいよ。入院する心の準備だけしておきなさい。」
このやりとりを家を出発するまで、何度も繰り返した。
前回は父に入院の話を隠して連れて行った反省があったので、流れの中で入院の話が出来て少し安堵した。
嘘を付いて連れて行くのは、父に対する罪悪感も出るし信頼関係も崩れてしまう恐れがある。
だが病院に着く前から入院するという話をすると、怒って行かなくなる可能性があるのでとても難しい。
「殺してやるとか言ってるが、本当に殺すなよ?」と聞くと「当たり前じゃ、分かっとるわ」と静かに答えていた。
父は根が優しく人に暴力を振るうような性格ではない事は知ってるので、物騒な事はせずに言葉だけで済ませると分かっていたし落ち着いて冗談ぽく話した。
その後、母が仕事から帰ってきたので3人で病院へ。
途中コンビニに寄り、父が買い物してる間に担当医に電話を入れて朝の出来事や入院させたい意思を伝える。
「すみません、父が先生に暴言を吐くかもしれませんが…」
「はい、大丈夫ですよ。」
担当医も父が激昂した姿を前回入院した時に目撃したり、直接罵声を浴びせられているのでそこは気にしていない様子。
病院に着いて受付を済まし、その後担当医のいる部屋へ。
だが、いざ本人を目の前にした父は明らかに遠慮していた。
朝の勢いがウソのように、言葉を選びながら話していた。
怒りなど微塵も感じさせない態度だった。
驚いて、母と目を合わせた。
躁になろうとも元来の真面目で優しく、控えめな性格のため家族など遠慮しなくていい相手以外には本音で喋ったり感情を露わにする事が苦手な父。
担当医も僕からの話とは違ったのでおかしいと思い、「息子さんからは、朝とても激昂して抑えが効かなかったと言う話を聞いてますが?」と話を振られたが、それでも「えぇ、そうですね…」と気まずそうに話すだけだった。
結局、自分の思った事が言えないまま睡眠不足を改善するためという名目で一ヶ月間の入院となった。
その後、入院の説明などあるからと一度部屋から出て待合室へ。
僕がトイレに行って席を離れ、また戻ってくると父が母に怒ったような口調で何か話していた。
どうやら、担当医の悪口を言っていたらしく。
母が「そんなにムカつくのなら、思った事を言えばええがな。」と話しかけると「わかった、言うわ、言うたるわ。」と怒りながら言っていた。
僕も「悔いが残らないように、自分の思うたように言うた方がいいよ。」と声をかけ説明を受けるために再度、担当医のところへ。
【長くなりそうなので、今回はここまでにします】
服部 佳弘
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