私信　閉じたままのあなたの部屋で

「虚勢」を「思想」と呼ばれたい
あなたは
言葉を探し
止まらない時間に網を張る

故人が遺した言葉に
有象無象の賛美を贈る人の群れを見つけた
あなたは
「世界で唯一」と讃えられる日本たちに
あなたを重ね
賛美に飛びつき
「やはり」で始めて
「でしたね」と納得し
繰り返す「変節」の塊たちを
「覚悟」と呼び換え

言論の中心で讃えられる思想でなくてはならない
あなたは
ゆっくりと寝返る虚勢を視界に入れず
「意志を以て選ぶはず」
「覚悟を以て備えよ」と
再び語り始める

あなたは
変節する「覚悟」を水先案内に
尽きない「賛美」を燃料に
有象無象の言論たちを従えて
陽光きらめく海原に
出航する

閉じたままの
あなたの部屋のこたつの上で