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安易な「在庫最適化」にだまされないで

私のコンサルスタイルは、比較的「なんでも屋」な所があって、その理由は、中小企業に対する支援が中心である事や、

ほとんどのことは、部署を飛び越えて連動しているので、ついつい口と手を出したくなることが要因です。

ただ基軸としては、マーチャンダイジング(MD)軸で、ざっくり言うと商品戦略や商品計画に関連する所、といった表現でしょうか。

最近では、小売業界以外の支援も増えてきてはいるのですが、それがメーカーサイドでも小売サイドでも、何か商品や製品を売るためには、在庫を持つ必要があります。

そこで今回のテーマは、最近では珍しくコンサルタントらしい記事で「在庫最適化」についてです。

(最近めっきり本業のノウハウ系の記事を書いていない…)

ここから少し、人によっては釈迦に説法でしか無い話となりますが、一応話の繋がり的には必要なので、記述させていただきます。


「在庫」に関する話って、永遠のテーマみたいな所がある

私の支援先が、商品・製品を売る業種が中心である限り、在庫の問題は避けては通れません。

あまり細かくここで書くと、私がしんどいので概論的になりますが、

お金を使って、モノを作るなり仕入するなりした結果「在庫」となり、それを販売することで「売上」が生まれ、使ったお金との差分が「粗利」となります。

そうなると、当然出てくる欲というのは、とてもシンプルで、

  • 売れる分だけの在庫しか持ちたくない

  • 在庫が無いことで、売れるチャンスを逃したくない

この2軸が、綱引きの様に引っ張り合い、いわゆるトレードオフ。在庫に関するジレンマになります。

「売れる分の在庫だけしか持ちたくない」

当たり前ですが、在庫を持つためには何かしらの費用を払う必要がありますし、

在庫がいつまでも売上に変わらなければ、現金が回収できないですし、もし倉庫に保管するような場合ですと、保管料・賃料が必要になります。

また賞味期限であったり、流行の問題であったり、そもそも商品も劣化することがあるので、在庫はできる限り早く売上に変えたいというのは自然な考えです。


「在庫が無いことで、売れるチャンスを逃したくない」

かといって、在庫を持っていないことで、せっかくの売れるチャンスを逃すこともあり得ます。

お店でも、とある商品がほしいお客様が来た場合に、その商品がなければ、大抵の場合、何も買わずに帰ってしまうかもしれませんし、

「何だか、品揃えの悪い店だ」と、次は来てくれないかもしれません。

また世の中に類似したものがある場合は、諦めてそちらを買ってしまうかもしれません。

ともかく、在庫がない=欠品状態だと、色々なチャンスを失う可能性があるということになります。


(ここからが、一応私なりの話です)

つまりは、ラフな表現でいうと「ちょうど良いだけの在庫を持ちたい」つまり「在庫最適化」を目指したい、というのは自然な流れだと思っています。

そのために、世の中には「AI」を用いた需要予測のシステムであったり、「発注支援システム」であったり、色々なものがあります。

ただ、これらの導入は、それなりの高額な費用がかかることが多いですし、その業界独自な部分や、その会社の独自な部分、商品特性などを考えると、そのままそのシステムを使えるならばよいですが、

大なり小なりカスタマイズが必要になるケースも多いと感じ、これまた追加で費用がかかる可能性があります。

冒頭に申し上げた、私の支援する中小企業では、大企業とは違い、なかなかそのためのシステム導入というのは、費用の面においてもそうなのですが、ある程度のカスタマイズ性を求める場合にはハードルが高いようです。


一応「在庫最適化支援もやったりしています」

別に、コレが本業…いや、そもそも良くなるためなら何でもやるスタンスなので、どれが本業でどれがそうでない、とかはあまり考えていないのですが、

エクセルをベースにした、需要予測システムから、推奨発注(製造)数を自動で算出する仕組みを構築する仕事も時々やっています。

正直、そのエクセルでのシステムは、私が自分で作りあげるので、簡単な仕事ではないのですが、それなりに奥が深く、やり応えだけでいうとTOP3に入る仕事だと思っています。

一応両手の指で収まる数くらいしか導入の経験はありませんが、大抵の場合に、苦労しつつも整理されてくると面白いな、と感じるのは「需要予測の考え方の整理」です。


おそらく、よくある需要予測の仕組みって

私も、この支援ばかりをやっている訳ではないので、この分野を徹底的に研究されている方からすると、どう見えるかわかりませんが、

私が考えるに、需要予測の仕方のベースは、

  • 直近の実績からの予測

  • カレンダー(暦)、天候、気温を加味した予測

  • 類似したモノを参考にした予測

このあたりが多いのではないのでしょうか。


もしくは「発注点」「安全在庫」などを用いたものが挙げられます。

もう一捻りすると、

  • 世の中のトレンドや、情勢などの外的要因

  • 定性情報(お客様や店舗の声)

  • メディア露出、プロモーション、販促等の効果

のような、商品・製品軸から少しはみ出た形になると思っています。

ただ、私自身上記のような要素を踏まえたロジックを組んでシステムを作るものの、

自分では及第点は目指せるものの、完全なる「在庫最適化」は、システムではそう簡単にはできない、と考えています。

また別のタイミングで記事にしたいなあとは思っていますが、私の師匠格のお一人に、

「コジマ君。すべてのことは、0と1で表現できるんだよ」

とおっしゃった方がいらっしゃいましたが、まだまだ私はその領域には達しておりません。


ここからは少々ブッチャケ気味で、もしかしたらそういったシステムを作られている方からすると、大きなお怒りを買うリスクがあるのですが、

私が思っている正直な所を書いていきたいと思います。


70点の発注と在庫保持はシステムで出来るけど、100点満点は無理

私が、発注管理システムや在庫最適化の仕組みを導入する場合は、現状が70点には至っておらず、50点以下だったり、まったく手つかずだったり、

具体的には、在庫が山のようにあったり、売るチャンスを明らかに逃しているような場合には、悩むことなく導入提案や、ご依頼があったら構築支援をお受けしています。

それは、仕組みを運用をする事で成果が出ると確信しているからです。

例えば、管理すべき全商品の売上と在庫のバランスを一目瞭然で見ることが出来ていなかったり、今の売れ方だといつ在庫が無くなるとか、発注済の商品がいつ入荷して、いつから在庫が潤沢になるのか、など、

状況が「見える化」されていない場合が多く、まず一覧表で、それらを見て、漏れなくミス無く発注や製造をするだけで、在庫最適化に近づくからです。

また、その数値を見て「必要だと思う在庫数」の考え方が、属人的、それぞれのばらつきがあるような場合もあり、

そういった場合は、売上と在庫のデータ、予測から「発注推奨数」を出すようにしておけば、平準化されます。

でも、私が本当にお伝えしたい事は、最後の見出しで記述します。


未来に絶対はない

これに尽きるんです。

いくらロジックを積み上げて、売上予測・需要予測をしても、絶対に全部が全部は上手くいかないと思っています。

「このシステムを導入すれば、絶対に在庫が最適になります」だなんて、嘘です。

いくら【雨の日は●●の売上が伸びる】とか【気温が●●℃になったら、長袖が売れる】とか【こういうキャンペーンをしたら、売上が150%伸びる】とか、

それはそれで、正しいのかもしれないのですが、未来には予測不可能なことが多すぎます。

なので「最適化に近づきます」なら、正しいと思います。
私も「在庫最適化を 目指す ためのシステム」
として導入しています。


具体的に箇条書きで書きますと、その在庫最適化システムは、

  • 今の世界的なゴタゴタを予測できていましたか?

  • 突然テレビやYoutubeで取り上げられる事を予測できますか?

  • SNSで急にバズる可能性をロジック化していますか?

  • 競合他社の類似品開発状況はデータに入っていますか?

  • 地震や台風などの災害予測はデータに入っていますか?

こんなことをシステムの中に盛り込めるならば、もっと違う形でその技術を使った方が、多分儲かりますし、世の中の役に立ちます。


あと、小売業限定に近くなってしまいますが、

  • 店舗はそれを売り続けるモチベーションを保てますか?

  • その商品を売るための、販促物は充分にありますか?

  • 新商品が入ってきたら、そちらに目移りしませんか?

こんなことを、データベースに出来るとは「今の所は」思えません。

【勘 と 度胸 と どんぶり勘定】【だけ】からは、早めに脱却する方が良いと思いますが、

時には、【勘 と 度胸 と どんぶり勘定】を軸に、覚悟を決めて、全社・ブランド一丸となって売り切る努力の方が大事な場合もあると思います。


色々と言いましたが、とにかく、バランスだと思います。

ロジックで試算することと、覚悟を決めて発注や製造をして、在庫を売り切ることを一生懸命やる。この両方を上手くやれるように、と、私はお伝えしています。

そして一番大事なのは、上手く行かなかった時に「ちゃんと検証して、次はどうやったら上手くなるのか」を、考え続けることだと思います。

それを繰り返していけば、その会社やブランドの在庫最適化能力は、やるたびに上手くなるので、

そこで、どんな世の中のシステムにも負けない、その会社独自の「在庫最適化」が生まれる。そう信じています。


(この記事、あまりにマニアックすぎて読まれる気がしない…)

コジマサトシ/トナリコネクト

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