職場の人に攻撃されて心が折れた日、5歳が33歳に伝えたアドバイスとは?
金曜日。午後3時半。
お気に入りのカフェで、このnoteを書き始めている。
今日は朝から4時半まで仕事の予定だったのに、どうしてカフェにいるのかというと。
私はリラクゼーションサロンで働いているのだけれど、3時以降の予約が入らず「帰ってください」と言われてしまった。
業務委託なのに出来高制じゃなくて時給をもらえるサロンはめずらしいし、指名料などは全額もらえる。施術をしていないのに時給が発生している状態は、お店にとって赤字になるので、予約が入らないときに帰らされることに文句はない。そこは、自分が指名をもらえるようにがんばればいいのだ。
でも今日は「帰らされ方」が嫌だった。
施術をしていないときは、お店の掃除をしたり、タオルや浴衣を洗濯したり、お店のブログを書いたりして過ごす。
私がお店のパソコンでブログを書いていると、"あのお方"がお客さんの施術を中断してまで、ツカツカツカと私の方にやってきた。
「その音、うるさすぎるから。やることないなら帰って。」
そう言い放って、お客さんのもとへ帰っていった。
"その音"というのは、キーボードを打つ音のことだろうか。キーボードを打っているということは、ブログを書いているということがわかるだろうに。今私はブログを書いていたんだけどな。そんなに荒っぽくキーボードを叩いてたわけじゃないから、みんなお互い様なのにな。それにしても、なんてトゲのある言い方なんだろう。どうしても気になるなら、もう少し柔らかい言い方で言ってくれてもいいのにな。
またか。
そう思いながら、帰る準備をはじめた。
私は"あのお方"に、嫌われているようなのだ。でも嫌われている理由は全く思いつかない。そもそも、そこまでがっつりと話したことがない。
私が何をしても気に入らないようで、事あるごとにキツイ言葉と表情を向けられる。
幸い私は早番で、あのお方は遅番が多いので、シフトがかぶるのは3時間半だけだ。あのお方はお店で1番長く働いているので、指名などもたくさん入る。予約がつまっているときは、全く顔を合わせない日もある。なので、当たり障りなく接することができればいいかと思っていたし、どんなに嫌な感じでも3時間半の我慢だ!と自分を納得させていたのだけれど。
地味にジワジワとストレスがかかってきている。今日急に心がポキッと折れる音が聞こえてきて、このまま家に帰ってしまったらドンヨリしてしまいそうだった。だから大好きなカフェに逃げ込んで、折れた心にギブスをハメるために今noteを書いているのかもしれない。
誰かに嫌われてるなと感じたとき、人の心はどう動くものなんだろう。
私の場合は、まずはじめに「私はあの人に何か嫌なことをしたかな?」と考える。
ほとんどの場合、思い当たらない。
だから「なんとなく見ていてイラッとする人」とか「なんとなく相性の悪い人」とか、そういう人に自分が認定されたんだろうな、と考える。
私にもそういう人がもちろんいるので、それは仕方のないことなんだと、心を落ち着けようとする。
そしてもしそういう人がいたとしても、職場では顔に出してはいけないと思っている。必要最低限のコミュニケーションはとって、できるだけ深く関わらないようにして、当たり障りなく接するのが「大人の対応」だと思っているので、私はそうしている。
「大人の対応」を"しようとしない"、もしくは"できない"のは相手の都合で、私の問題ではないので、そこは切り離して考えるようにする。
私にできることは、その攻撃を攻撃で返さないことだけだ。だからできるだけ心を波立てないようにして、「ありがとうございます。」とか「わかりました。」とか「今度から気をつけますね。」とか、意識的に柔らかい言葉と表情で受け答えをすることだけを心がけてきた。
それは間違ってないよね?と自分で自分に確認する。
でもやっぱり、あそこまで露骨にツンツン尖った言葉や表情を向けられると、体と心がギュッと縮こまってしまうものだ。
他のお店のメンバーはあのお方のことをどう思っているのかはわからない。
他のお店のメンバーはみんな穏やかで、話しやすくて、だれかがだれかの悪口を言っているのも聞いたことがない。女性の職場にありがちなドロドロした感じはなく、いい感じだな、と思っている。あのお方がいない日は、すごく居心地がいい。
でも時折「うちさ、あのお方に嫌われてるみたい。みんなはあのお方のことどう思ってる?」なんて聞いてみたくなる。でも私がそれをだれかに聞いた瞬間、私が自らお店の雰囲気を悪くしてしまうような気がして、グッとその言葉を飲み込んでいる。
私だけじゃなくて、他のメンバーさんも同じようなことを感じていたら、少し気持ちが楽になるだろう。一緒にあのお方の悪口を言えたなら、どんなにスッキリするだろう。
でも職場の人間関係のグチは、家族とか職場以外の友達とか"職場と全く関わりのない人"にしかしてはいけないと私は思っている。もしくは、本人に直接伝えるのはいいと思う。
いくら自分が攻撃されて嫌だからって、裏から攻撃し返すようなことをしてしまったら、私はきっと自分のことが嫌になってしまうだろう。
けっきょく「もう少し様子をみよう。」と思う。こういうことは時間が解決してくれることが多いし、ひょんなことから仲良くなれることだってある。まだ働き始めて数カ月なんだから、そんなに焦らなくていいよ。
そう自分に言い聞かせる。
あのお方から離れた安全な場所で、そんなふうに心の整理をすると、スピードの早くなっていた心臓の音はだんだんと元に戻っていく。
心にガチッとギブスがハマる。
これでまたがんばれる。
それでも、あのお方と次にシフトがかぶっている日のことを思うとやっぱり憂鬱で、気分がすっきり晴れることはなかった。
ここまでが、金曜日にカフェで書いたnoteだ。ゆっくり自分の気持ちを落ち着けながら書いていると、いつのまにか5時になっていて、急いで息子を迎えにいったのだ。
ここからはその2日後に書いていて、私は今すごく気持ちがスッキリしている。
それは息子のおかげだった。
あのあと息子を迎えにいって王将に行った。この間noteに書いたけれど、父ちゃんが飲み会の日はまた2人で王将へ行こうと約束していた。その日はまた父ちゃんが飲み会だったので、約束通り第2回目の王将へ行ったのだ。
「今日は幼稚園楽しかったわ。」
息子がラーメンをすすりながらそう言った。息子が幼稚園楽しかったと言うのはめずらしい。
「幼稚園楽しくてよかったなぁ。母ちゃんはさ、今日嫌なことあってん。」
なぜかそんなことをポロッと口に出してしまった。温かい場所で、温かいごはんを、絶対に自分のことを嫌っていない大好きな人と食べていると、一気に気がゆるんだのかもしれない。
「えー!?そうなのー!?母ちゃん、かわいそうに・・・」
5歳の息子が、私の頭をなでた。ラーメンの汁の中にポチャンと沈んでしまったフォークが目に入る。私をなでるために、フォークから手を離してしまったから仕方がない。
「どんな嫌なことがあったの?」
「職場の人に、嫌なこと言われてん。」
「えー!?母ちゃん、警察呼べばよかったのに!!」
息子が大真面目な顔でそう言った。あまりに大真面目な顔だったので、私も大真面目に答えないといけないような気がした。笑いをこらえながら、クソ真面目な顔で答えた。
「ほんまやなぁ!警察呼べばよかったわ!」
「そうそう!次からそうしなよ。その人になんて言われたの?」
「"その音、うるさすぎるから!やることないなら帰って!"って言われた。」
私は顔をひん曲げて、できる限りの憎たらしい感じを込めて、そのセリフを言った。
「うわ〜!めっちゃ意地悪やん。母ちゃん、意地悪言われただけ?叩かれたりはしてない?」
「うん、叩かれてはないよ。」
「それならさ、耳をふさいで聞こえないようにしたらよかったんちゃう?」
息子がまたまた大真面目な顔でそう言った。あまりに大真面目な顔だったので、私もまたまた大真面目に答えないといけないような気がした。笑いをこらえながら、クソ真面目な顔で答えた。
「せやな!今度意地悪言われそうになったら耳ふさいでみるわ!」
「うん!警察呼んで、耳ふさぐんだよ。わかった?」
「うん!そうする!」
5歳の息子が、5歳なりにアドバイスをくれた。
「母ちゃん!母ちゃんをいじめた人の名前はなんていうの?」
「Aさんだよ。」
「ぼくAさん嫌ーい!母ちゃんのこといじめるなんてサイアク〜!」
息子のその言葉を聞いたとき、胸にモヤモヤと気持ち悪く残っていた黒いものたちが、スーッと溶けていくのを感じた。
息子が私の1番言いたかったけれど言えなかったことを言ってくれたような気がした。
「母ちゃんもAさんのこと、大大大大大っ嫌い!」
いつもよりちょっとだけ大きな声で、「大大大大大っ嫌い」の部分にグッと感情を込めてそう言うと、さらにスッキリした。
「ぼくなんてAさんのこと、大大大大大大大大大大っ嫌いやで!」
息子は私よりもさらに「大」を増やして、Aさんのことを「大嫌い」と言った。そのあと私も、もっともっとたくさん「大」を増やして、Aさんのことを「大嫌い」と言った。
それを繰り返して、もう「大」を増やしすぎてワケがわからなくなる頃には、脳裏に焼きついていたAさんの憎たらしい顔なんてすっかり忘れていた。「"大"を増やすゲーム」をしてニヤニヤしている息子の可愛い顔で、頭が満たされていった。
息子のおかげで、今私が1番言わなければならなかったことを、存分に言えたような気がした。
誰かに嫌われているなって思うとき、私はいつも「自分に問題はないか」ということを1番に考えていたけれど。
攻撃される自分に問題があるかもしれないなんて、1番はじめに考えちゃいけなかったのかもしれない。
そんなことを考える前に、まずは嫌なことを言われて悲しい気持ちになっている自分の気持ちを、ちゃんと抱きしめてあげないといけなかった。自分にそんな嫌なことを言う人なんて大嫌いだと、サイアクなんだと、自分で自分に味方してあげないといけなかった。
自分に攻撃してくる人を好きになれる人なんて絶対にいない。そんな人のことを好きになろうとしなくてよかったんだ。そんな人のために自分を改めようとしなくてよかったんだ。そんな人のことなんて、大嫌いだと認めてよかったんだ。
私にも問題があるのかもしれないなんて1ミリも思わずに、全力で私の味方をしてくれた息子の言葉で、そんなことに気づくことができた。
自分の味方をしてくれる人が2人いるだけで、なんだかもうどうでもよくなってきた。父ちゃんもきっと味方してくれるだろうから3人だ。私自身と息子と父ちゃんが、無条件に私の味方をしてくれる。もう無敵なような気がした。
Aさんにもそういう人がいるのだろうか。いればいいな、と思った。Aさんだって、何か私に攻撃しなければいけない理由があるんだと思うのだ。心の底から幸せを感じられている人は、人に攻撃なんてしない。
「あ!ぼくも今日嫌なことあったわ!せっかく紙飛行機作ったのに、グチャグチャにされてん。」
しばらくしてから、息子が言った。息子がそうしてくれたように、私も全力で息子の味方をしようと意気込んだ。
「そうなん!?それはイヤやなぁ!サイアクやな!りんりんも警察呼んだらよかったやん!」
せっかく意気込んでそう言ったのに、息子は笑いながら答えた。
「いやいや〜僕は警察呼ぶほどではなかったよ〜。」
その言葉を聞いた瞬間、今までこらえていたものがパチンと弾けて、お腹の底からフツフツと温かいものがこみ上げてきて。私はついに笑いが止まらなくなってしまった。
ケタケタと笑い続ける私を横目に、息子は「どうしてそんなに笑っているの?」というポカンとした顔で、残りのラーメンを真面目な顔ですすっていた。
息子よ、オチも最高じゃないか!
心の中で「さすが大阪人!」とわが子に拍手を送る。
折れた心はギブスの内側で、すっかりツルンと元に戻った。そして外側から無理やりハメた心のギブスが、パカーンと外れたような気がした。
さてさて。
私とAさんの関係は、これからどうなることやら。
そんなふうに、まるで他人事のように、まるで先の読めない物語を楽しむように、気楽に考える気持ちが戻ってきた。
もちろん、私にとってもAさんにとっても、どうかハッピーエンドに向かいますようにと、切に願ってはいるけれど。
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