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Vol.8 フィンランドの先生と「メディアについて考えたこと」

このnoteでは、2024年3月25日から28日までの4日間でフィンランドのプレスクールから小中高/職業専門学校を訪れる中で、フィンランド教育の根底にある価値観のようなものを探る過程で発見したことをシェアしていきます。

▼ 学びの記録「フィンランドで見つけた…」
vol.1「信頼の文化とは」(リンク
vol.2「良い学習環境とは」(リンク
vol.3「多様性の考え方とは」(リンク
vol.4「Simpleな教員の生き方と子どもの学び方とは」(リンク
vol.5「良い困り感とは」(リンク
vol.6「異年齢での学ぶとは」(リンク
Vol.7「良い職員室文化とは」(リンク
vol.8「メディアについて考えたこと」

今回のキーワードは「メディア」「主権者教育」です。

フィンランドで学校の先生をしている家庭でホームステイをしている時の出来事です。「あなたは政治についてどのように考えている?」正直私自身、海外の政治がどのように国際社会(日本を含む)に影響をするのかや日本の政治についてしっかり考えてきていなかったので、この質問について答えられませんでした。それと同時に、自分自身が政治についてしっかりと考えることができていないのは、個人の問題であると同時に日本における教育やマスメディアの影響もあるのではないかと考えるきっかけになりました。

今回のnoteでは、メディアを切り口にメディアが与える影響について幾つかの観点でまとめていけたらと思います。「教育現場でのメディアの活用」「メディアが子どもにもたらしている影響」についてまとめていけたらと思います。

まずは、メディアリテラシー教育の文脈で考えていきたいと思います。以下のデータは、Open Society Instituteが公表している「メディアリテラシー指標」になります。

The expanded Media Literacy Index 2023(参考リンク

上位には北欧諸国が来ており、その中でもトップに来ているのがフィンランドになります。では、この指標はどのように測られているのかについても簡単に解説をしていきます。

The expanded Media Literacy Index 2023(参考リンク)

①メディアの⾃由の指標【40%】
・フリーダム•ハウスによる「報道の⾃由」スコア(20%)
・国境なき記者団による報道の⾃由指数(20%)
②教育指標【35%】
・読解⼒のPISAスコア(OECD)(20%)
・科学的リテラシーの PISAスコア (OECD)(5%)
・数学的リテラシー のPISAスコア(OECD)(5%)
・⾼等教育就学率 (%) (世界銀⾏)(5%)
③信頼指標【10%】
・他者への信頼 (世界価値観調査)
④新しい参加形態指標【5%】
・電⼦参加指数 (UN)(5%)

メディアリテラシーの指標の中で、メディアの自由の指標と教育指標の中では、読解力の指標が高いことが分かります。まずは、フィンランドの教育が過去に世界一になった1つの要因である読解力の向上に繋がる事例を紹介します。その背景の1つとして、フィンランドでは、1994年にはオリペッカ・ヘイノネン氏によって教育改革が行われ、1990年代には抜本的な教育改革(詳細リンク)が推進されました。そこでは、様々な教育改革が行われたのですが、その政策の1つに全国の学校にコンピューターを潤沢に取り入れる政策が行われました。
「なぜ、フィンランドでは、すべての学校にコンピューターをいち早く取り入れたのか?」
主な理由の1つとしては、コンピューターを取り入れることで国内のどこに住んでいても同じ水準の教育を全ての子どもに届けることでした。そしてもう1つの理由が今回のテーマとも大きく繋がってきます。

情報を読み解く力(=読解力)を向上させる。
変化が激しく情報が溢れる時代には、必要な情報を自分で選び出し、自ら解決していく力が欠かせない。

参考「教育で一番大切なのは機会の平等リンク

日本でGIGAスクール構想が始まったのが2019年なので、日本と比較するとフィンランドではその20年以上も前から学校現場にコンピューターを潤沢に取り入れ、さらにコンピューターのスキルを向上させることが主目的ではなく、様々な教科でPCを用いて様々な情報に触れることで、子どもたちが情報を読み解く力を向上させるために授業の中で取り入れ始めていたことが、メディアリテラシー教育の指標を時間をかけて教育の分野から向上させていった1つの事例になると思います。

実際に、フィンランドで高校時代までを過ごし、高校卒業後は日本の大学・大学院に進学したフィンランドの友人に教育の目的についてディスカッションしたことを思い出しました。

◎ 教育の目的・役割:考える力を育むこと
❶ 教育の役割はクリティカルシンキングを育むこと
❷ 興味を持って、自発的に考えていく力を育むこと
❸ 世の中のいろいろなことへの理解を深めること
❹ いろいろな社会階級の人とともに人間関係の構築を学んでいくこと

印象的だったのは、一番最初に「考える力を育むこと」そして「クリティカルシンキングを育むこと」という言葉が最初に出てきたことでした。

その具体例として、話は政治の話に発展しました。フィンランドの高校では、様々な政党の人が高校にきて、それぞれの政党の考え方や方針について生徒に話をして、ディスカッションをする授業があるみたいでした。実際に、フィンランドの友人からフィンランドにある政党について、それぞれの政党の考え方について説明をしてもらい、自分たちが日本の政党についてここまで説明できないことに気付かされる時間でした。さらに、全ての政党の特徴について説明をした後は、自分自身がどの政党を支持しているのかを理由もセットで話をしてくれました。ここまで政治について話ができるのも、実際に本物の政治家が学校に来て政治についてディスカッションをすることがきっかけで、メディアで今の政治がどのように動いているのかをみるようになったと話をしています。

「日本では、なぜ学校に政治家を呼ぶことが難しいのか?」

第8条 (政治教育)
1. 良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。
2. 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。
◎ 本条の趣旨
・ 第1項は、民主主義を実現するためには、国民の政治的教養と政治道徳の向上が必要であることを踏まえ、政治教育において最も尊重されるべき事項を規定するもの。
・ 第2項は、学校教育における政治教育の限界を示し、特定の党派的政治教育を禁止することにより、教育の政治的中立を確保しようとするもの。

参考:文部科学省(リンク

日本だと、学校現場に政治家が来て政治の話をすることは政治的中立を担保するために難しい現状があると思います。その一方で、若者の政治離れは現状としてあり、民主主義を実現するための主権者教育の重要性も課題に上がってきているように思います。

さて、ここからはフィンランドの小学校の先生の日常の中でどのようにしてメディアに触れる機会を現場でつくっているのかについてもまとめていきます。私が話をした先生は、教室の中で「メディア(新聞含む)の記事を取り上げ、それについて教室でディスカッションをする時間を日常の中で取り入れている。」と話をしていました。これによって、子どもたちが社会で起きていることを知り、起きている出来事について自分自身がどのように考えるのかを言語化し、そして一緒に学んでいる友達はどのように考えるのかをディスカッションする機会をつくっていると話していました。

さらに、フィンランドの高校現場では現代社会の授業で「今起きている政治的な方針が自分たちにどのような影響を与えているのか?」について考えさせる授業を行なっていました。具体例として、高等学校の予算が減ることの影響についてとあるメディアの記事を取り上げて考える授業の導入でした。この授業に参加していた私たち日本人も「今日本の社会で重要な課題は何だと思いますか?」と社会の先生に尋ねられ、誰一人とその質問にパッと自分の考えを表明できなかった出来事が今でも残っています。

このように発達段階に応じて、社会に溢れている多くの情報から、自分に必要な情報を集め、情報を読み解き、自分で意思決定していく力が育まれる仕組みが教育現場にあるのを感じました。

今回このnoteの記事を書こうと思ったのは「あなたは政治についてどのように考えている?」「今の日本の社会で重要な課題は何だと思いますか?」と現地の先生に尋ねられたこの2つの正解のないQuestionsに対して、自分なりの考えを根拠をもとに話せる人はどれだけいるでしょうか?これだけ、日本でも情報が溢れているのにも関わらずなかなかこの問いにジブンゴトとして答えられないのはもしかすると教育やメディアの課題なのかもしれないと思いました。

メディアから、主権者教育につながる内容にもなってきたので、今働いている国際バカロレアの認定校で行った主権者教育とつながる教育実践についてこちらのリンクでまとめているので、是非読んで頂けたら嬉しいです。

書いていると元々書こうと思ったテーマから少し離れてしまいますが、これからも自由にフィンランドで学んだことを発信していけたらと思います。

いつも読んでいただきありがとうございます。

moimoi!!!




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