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日曜日の食堂

職場から近く、ときどき昼食をとる店に初めて日曜日に出掛けた。
そこは、家族経営で20席ぐらいの昭和風情の食堂。
客たちは、隅の高い所の棚に置かれたテレビを見上げるように観て食べる。
タイル床、週刊誌やスポーツ紙が積まれたラック、入口横のショーケースに並ぶうっすら埃の付いたオムライスやラーメンなどのイミテーション。
今どきこんな幅広いメニューを出す店があるだろうかと思う。定食もの、丼もの、ラーメン、サンドイッチ、オムライス…。
フードコートにはないオリジナル感のある味付けは、どのメニューもシンプルでどこか懐かしい。

日曜日の13時過ぎだったけど、家族連れが多いのに驚いた。そしてほぼ満席。
いつも注文を取ってくれる女性の替わりは、たぶん彼女の母親だろうか腰を折って忙しく動く70年配のお母さん。配膳台からのぞく厨房にはいつもの父子が見える。
カツ丼を頼んだら、しばらくして戻ってきたお母さんが「ごめんなさい、カツ丼のお肉が無くなっちゃって。ヒレカツで良ければ同じお値段でいいですが?」
と屈むようにして言った、
ダメな訳はない。
「ヒレカツでお願いします」

200円高いはずのヒレカツ丼を食べながら、50年近く昔の「中華そば わかまつ」を思い出した。
コンビニもファミレスも無かったあの頃、家から歩いて3分ぐらいの「わかまつ」に行くのは嬉しかった。母親の頼むタンメン、祖母の頼む堅焼きソバは覚えているけど、僕が何を頼んだのか思い出せない。
年の離れた弟と妹が、プラスチックの小さな椀でラーメンを食べていた光景が浮かぶ。

平日は黙々と食す勤め人たちの空間に、子供達の声で賑やかに響く。
米粒を残さないように、丼ぶりを綺麗にしなきゃ、って思った。

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